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或人のいはく、 参河国さかざきの修理助入道浄光・青野0313八郎左衛門入道真慶両人あり。 此人去ぬる四月下旬比より吉崎の山上にありと 云々。 しかるに善導和尚の日中の ¬礼讃¼ の偈にいはく、 「真 の は す↢法 に る↢光 を の心不↠退」 といふ文あり。 所詮此釈文の中に真慶・浄光の二人の片字あり。 これまことに奇特不思議なりし事ぞかし。 そのゆへは弥陀如来の真身のかたちは、 すなはち光明ともなりて、 一切衆生を平等に摂取したまふちかひなるがゆへなり。 これによりて両人の片字此釈文の中にある事、 まことにもて宿習のいたりか、 又本願力の不思議によりて報土往生をとげんがために、 今度此当山にゑこゑられけるかともおぼへはんべり。 さればやがて次の文に 「蒙光触者心不退」 とあれば、 すなはち信心決定して不退なるべきいはれなりとあらはにしられたり。 あら殊勝、 あら殊勝。

文明第六 六月廿五日書之