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今聴聞するところの他力信心のとをりをよくこゝろえたらん人々は、 あひかまへてあひかまへて、 このおもむきを心底におさめおきて、 他宗・他人に対して沙汰すべからず。 又路次・おほ、 我々の在所なんどにても、 あらはに人をはゞからずこれを讃嘆すべからず。 次には守護・地頭方にむきても、 我は信心をえたりといひて0303粗略の儀なく、 いよいよ公事をまたくすべし。 又諸神・諸菩薩をもおろそかにすべからず。 みなこれ南无阿弥陀仏の六字のうちにこもれるなり。 ことに外には王法をおもてとし、 内心には他力の信心をふかくたくはへて、 世間の仁義を本とすべし。 これすなはち当流にさだむるところのおきてのおもむきなりとこゝろうべきものなり。 あなかしこ、 あなかしこ。

文明六年二月十七日書之