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▼右みぎこの三さんヶ年ねん之の間あいだ､ この当山とうざんにおいて居きょ住じゅうの根元こんげんは､ さらに名みょう聞もん利り養ようを本ほんとせず､ 栄えい華が栄耀えいようを事ことせず､ ただ願ねがふところは往おう生じょう極楽ごくらくのためばかりなり｡ しかるあひだ当国とうごく・加か州しゅう・越えっ中ちゅうの内うちの土ど民みん百姓ひゃくしょう已下いげらにおいて､ その身み一いち期ごはいたづらに罪業ざいごうをのみ造つくりて､ 一善いちぜんを修しゅすること子し細さいこれなくして､ むなしく三さん途ずに堕だ在ざいすべきあひだ､ あながちに不ふ便びんたるによりて､ 幸さいわいに弥陀みだ如来にょらいの本願ほんがんは､ 誠まことにもつて当とう時じいまの根こん機きにおいて相応そうおうの要法ようぼうたるうへ､ ひとへに念仏ねんぶつ往おう生じょうの安心あんじんを勧すすむるほか他事たじなきところに､ 近比ちかごろ牢人ろうにん出帳しゅっちょうの儀ぎにつきて諸方しょほうより雑説ぞうせつを申もうす条じょう､ 言ごん語ご道断どうだん迷惑めいわくの次し第だい也なり､ 愚ぐ身しんさらに所しょ領りょう所帯しょたいにおいてたゞその望のぞみをなさざるあひだ､ 何なにをもつてかその罪咎つみとがに処しょすべきや､ 不ふ運うんの至いたり悲かなしみてもなほ余あまりあるものか｡ これによりて心こころ静しずかに念仏ねんぶつ修しゅ行ぎょうせしめんその在所ざいしょにおいて､ 別べっしてその要害ようがいなき時ときは､ 一切いっさいの諸しょ魔ま・鬼き神じんその便たよりを得えしむるゆへに深ふかく要害ようがいを構かまふるものなり､ かつはまた盗賊とうぞく用心ようじんのためなり｡ その余よにおいては､ 万一まんいちいまの時じ分ぶん无理むりの子し細さい等とう出しゅつ来らいせしめん時ときのその儀ぎにおいては､ 誠まことにこのたび念仏ねんぶつ申もうして順じゅん次じ往おう生じょうを遂とげ､ また非ひ分ぶんの難なん苦くに逢あひて死し去きょせしむるも､ ともにもつて前業ぜんごうの所感しょかんなり｡ しかるうへは仏法ぶっぽうのために一いち命みょうを惜おしむべからず､ 合戦かっせんすべき由よし､ 兼日けんにちに諸人しょにん一同いちどうに治じ定じょうせしむる衆しゅ儀ぎならくのみ｡

右斯　の三ヶ年之間､ 於↢此当山　に↡居住之根元者､ 更　に不ず↠本　と↢名聞利養　を↡､ 不↠事　と↢栄華栄耀　を↡､ 只所　は↠願為　め↢往生極楽　の↡之計　り也｡ 而間　だ当国・加州・越中之内　の於　て↢土民百姓已下等　に↡､ 其身一期　は徒　に造　て↢罪業↡､　をのみ 修↢ 　ること一善　を↡子細无↠ 　くして之､ 而空　く可　き↣堕↢在　す0274三途　に↡之間､ 強 　ちに依　て↠為↢　るに不便↡､ 幸　に弥陀如来　の之本願者は､ 誠以　て当時於　て↢今　の根機　に↡為↢相応之要法↡上､ 偏　に勧　る↢念仏往生　の安心　を↡外　か无↢他事↡之処　に､ 近比就↢牢人出帳之儀　に↡自↢諸方↡雑説　を申条､ 言語道断迷惑　の之次第也､ 愚身更　に於　て↢所領所帯　に↡但不↠作↢其　の望↡之間､ 以↠何可↠処↢其　の罪咎　に↡哉､ 不運　の至　り悲而ても猶有　る↠余　り者歟｡ 依↠之心静令↢　めん念仏修行　せ↡於　て↢其　の在所　に↡､ 別而　て无↢其　の要害↡時者､ 一切之諸魔・鬼神令　る↠得↢其　の便↡　りを故　に深構↢ かまふる要害　を↡者　の也､ 且　は又為　め↢盗賊用心　の↡也｡ 於　て↢其　の余　に↡者､ 万一今　の時分无理之子細等令↢　めん出来　せ↡時之於↢其儀　に↡者､ 誠 　とに此　の度　び念仏申　て遂　げ↢順次往生　を↡､ 又逢　て↢非分　の難苦　に↡令↢　るも死去↡､ 共　に以　て前業　の所感也｡ 然　る上者為↢　めに仏法　の↡不↠可↠惜↢一命　を↡､ 可べ↢き合戦　す↡由　し､ 兼日　に諸人一同　に令　る↢治定　せ↡之衆儀而已｡

*文明五年十月 日

多屋衆