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馬黒月毛二疋のぼせられ候。 返々よろこびいり候。 さりながらわづらゐのいたりに候。 それにつきて人間は老少不定之界にて候間、 世間は一旦の浮生、 後生は永生の楽果なれば、 今生はひさしくあるべき事にもあらず候。 後生といふことは、 ながき世まで地獄にをつる事なれば、 いかにもいそぎ後生の一大事を思ひとりて、 弥陀の本願をたのみ他力の信心を決定すべし。 されば信0515心をとるといふも、 なにのわづらひもなく南无と一心に弥陀をたのめば、 阿弥陀仏のやがて御たすけある事なれば、 又信心をとるといふことも、 この南无阿弥陀仏の六字のこゝろなり。 このゆへに一心一向に弥陀をたのみまひらせて、 行住座臥に念仏を臨終まで退転なく申べきものなり。 あなかしこ、 あなかしこ。

拾月十八日

蓮如

四講中