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右親鸞聖人の一流の勧化のこゝろは、 おほよそ一念発起平生業成とたてゝもろもろの雑行雑修のこゝろをすてゝ一向に弥陀如来の不思議の願力なりと信じて、 一念に弥陀に帰命の心ふたごゝろなくは、 これすなはち一念発起の安心なり、 やがて平生業成のこゝろなり。 こ0497のうへにはいよいよ弥陀如来の御かたよりわれらが往生はさだめたまふなりとしらるゝものなり。 さては仏恩のふかきこときはまりなきうへは念仏をまふし、 かの仏恩をつねに報じたてまつるべきものなりとしるべし。 このうへに念仏をまふして弥陀の御恩を報じたてまつるは自力なりといひ、 またわがはからひなりとまふさんは、 おほきなるあやまりなり。 よくよくこゝろうべきことなり。 あなかしこ、 あなかしこ。