(209)

それ八万の法蔵をしるといふとも、 後生をしらざる人を愚者とす。 たとひ一文不知の尼女なりといふとも、 後生をしるを智者とすといへり。 しかれば当流のこゝろは、 あながちに物をしり、 又聖教をよむ人なりといふとも、 一念の信心のこゝろをしらざる人はいたづら事0482なりとおもふべし。 されば上人のおほせには、 一切の女人たらむ身は、 弥陀の本願にあらずは、 たすかるといふ事かへすがへすあるべからずとおもふべしとのたまへり。 このゆへにいかなる罪業ふかき女人なりといふとも、 もろもろの雑行をすてゝ一念に弥陀如来今度の後生たすけたまへとふかくたのみ申さむ人は、 十人も百人もみなことごとく弥陀の報土に往生すべき事うたがひあるべからざるものなり。 あなかしこ、 あなかしこ。