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*文明第四 十月四日、 亡母十三廻にあひあたり候。 今日のことに候あひだ、 ひとしをあはれにこそ候へ。 三月ひきあげ仏事をなされ候あひだ、 さだめて亡者も仏果0250菩提にもいたりたまひ候らん。 さりながらかくのごとくおもひつゞけ候。

十三とみとせを をくる月日は いつのまに
今日めぐりあふ 身ぞあはれなる

また愚老なにとなく当年さへこの国に居住せしめ十三廻の仏事にあひ候も、 真実の宿遷とこそおぼえ候へ。 さりながらこの亡者、 安心のかたもいかゞとこゝろもとなく候あひだ、 かくのごときのをもむきをなして、 かやうにつゞけ候なり。

おぼつかな まことのこゝろ よもあらじ
いかなるところの 住家なるらん

さりながら他経によらば、 一子出家七世の父母皆往生とやらん。 また当流のこゝろならば 「還来穢国度人天」 (法事讃巻下) と。 これはいまだしきことにてや候べき。 しかりといへども、 まことに変成男子・転女成男の道理はさらにうたがひあるべからざるものなり。

いまははや 五障の雲も はれぬらん
極楽浄土は ちかきかのきし

かやうにふでにまかせてなにともなきことをまふし候なり。 御違例も今日はよきよしまうすあひだ、 目出度おぼしめし候ところに、 はやこれへ御いで候。 対面まうし候ほどになをなを殊勝に候。 あなかしこ、 あなかしこ。

文明五年 癸巳 八月二十八日於吉崎より出たり