専修寺蔵本は、 顕智上人が宗祖を訪ねた建長八 (1256) 年から正嘉二 (1258) 年の間に書写されたものと推測されている。 当本は上下二冊で構成されるが、 上下各巻の裏表紙が下巻・上巻の順に入れ替えられて上巻末尾に綴じられるなど、 五箇所にわたる誤簡が報告されている。 また、 各巻の包紙中央に記される題号は、 高田派第十代真慧上人の筆とされる。 当本は、 先行する書写本を転写したものとされ、 その系統は下巻末の 「楊茂」 との刻工名の書写と、 各巻末尾に記される音義とから、 淳和年間 (1240-1252) 補刻の思渓版 ¬大蔵経¼ 系統とされる。 当本には本文への註記が付されているが、 上巻の前半に見られる異本の内容に関する 「イ本」 「本ニハ」 との註記は、 顕智上人の表記方法と相違することから、 先行する書写原本にすでにあったとされる。 また、 顕智上人によって浄土教の要文が集められた ¬聞書¼ に収録される ¬大阿弥陀経¼ の文は、 その註記の内容から当本を転写したものとされる。  体裁は半葉六行、 一行十七字である。