本書は、 けん五年書写本の奥書によれば、 ¬じょう文類もんるいしゅう¼ (著者不明) なる書をもとにして述作されている。 同書には安心あんじん上の問題点が種々あり、 存覚ぞんかくしょうにんは、 この書の疑義のある点を修正し、 浄土真宗の正統な立場より論を展開し、 一宗の要義を詳論されている。
 本書は本末二巻に分れている。 本巻の冒頭の総論にあたる部分において、 まず一向いっこう専修せんじゅの念仏をけつじょうおうじょうの肝心といい、 その旨趣を善導ぜんどうだい法然ほうねん上人・親鸞しんらんしょうにんの伝統の上に論じられている。 以下巻末にいたるまで十四問答を展開して、 親鸞聖人の浄土真宗の一流は、 平生へいぜいごうじょう来迎らいこう肝要かんようとする旨を主として説示されている。 まず第一問答においては平生業成、 不来迎の宗義について明らかにし、 第二問答において、 その理由として第十八願、 第十八願じょうじゅもんについて論じられている。 末巻に至って、 まず第三問答においてはげんしょう退たいについて論証し、 第四問答では、 ¬かんぎょう¼ 下下げげぼんの一生造悪の者が臨終にぜんしきにあい、 往生をとげるのは、 平生業成の義と矛盾しないことの釈明がなされている。 第五・六問答においては第十八願の十念と成就文の一念について釈し、 平生業成と一念往生について詳論されている。 第七・八・九問答において臨終来迎は念仏のやくか諸行の利益かについて論じ、 第十問答は念仏と諸行の利益の相違について明らかにしている。 第十一・十二・十三問答においては、 たいしょうしょうほう化土けどについて分別し、 最後の第十四問答においては、 善知識について論及されている。