本書は、 往相おうそうこう還相げんそうこうについて釈されたものである。 初めに、 ¬じょうろん¼ の回向の文を釈して、 本願力の回向に往相と還相の二種があることを示し、 その往相回向に真実の行・信・証のあることが説かれる。 続いて、 第十七・十八・十一願文が引用されて、 行・信・証のそれぞれがこれらの願にもとづいていることが示された後、 真実しんぎょうによって正定しょうじょうじゅに住する信心正因の意義が明かされる。 続いて ¬如来にょらい¼ の第十一願文が引用され、 とうしょうがくにょろくについて釈される。 次に ¬浄土論¼ の出第五門の文によって、 還相回向を顕し、 第二十二願文を引用して、 還相がこの願にもとづいていることを明かされる。 最後に、 自利利他ともに法蔵ほうぞうさつの誓願にもとづき、 ぎょうじゃのはからいではないと結ばれている。
 浄土真宗の立教開宗の書である ¬教行きょうぎょうしんしょう¼ は、 往相・還相の二回向について広説されたものであるが、 本書は、 その阿弥陀仏の救済の構造を略説されたものである。
 なお、 本書と ¬じょうさんぎょうおうじょう文類もんるい¼ 略本とが統合整理されて、 ¬浄土三経往生文類¼ 広本が成立したとも推察されている。