本書は、 別に ¬報恩ほうおん講式こうしき¼ と言い、 単に ¬式文しきもん¼ ともいわれる。 宗祖親鸞しんらんしょうにんの報恩講に拝読する聖教しょうぎょうで、 聖人に対する深い謝意が表明されている。 永仁えいにん二年 (1294)、 聖人の三十三回忌に第三代宗主覚如かくにょしょうにんが撰述された。 内容は、 総礼そうらい三礼さんらい如来にょらいばい表白ひょうびゃくこうよりなり、 表白は、 (1)真宗興行の徳を讃ず、 (2)本願相応の徳を嘆ず、 (3)滅後やくの徳を述す、 の三段に分けられる。
 第一段では、 聖人は、 天台てんだいちんしょうに就き、 顕密けんみつの諸教を学び、 修行に専念されたが、 さとりを得難きことを知って法然ほうねん上人に謁し、 しゅつの要道は浄土の一宗のほかにないことに気づき、 しょうどうなんぎょうを捨てて、 浄土ぎょうの大道に帰し、 しんきょう人信にんしんの生涯を送られた。 真宗は聖人によって開かれたのであるから、 念仏して報恩すべしと述べられている。 第二段では、 念仏修行の人は多いが、 専修せんじゅ専念の人はまれであり、 金剛の信心の人は少ない。 しかるに宗祖はみずから他力回向の信を得て、 易行の要路を人びとに明かされた。 まことに本願相応のごどう、 これにすぎるものはないと述べられている。 第三段では、 遺弟ゆいていたるものは、 聖人の祖廟にひざまずき、 その真影しんねいを仰ぎ、 聖人が撰述された数々の聖教を拝読して、 この教法を弘めていこうとする決意を新たにするが、 それが滅後利益の徳であると讃嘆されている。