易行品 一巻。りゅうじゅさつ造、 鳩摩羅くまらじゅう訳。 龍樹菩薩の著 ¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ (十七巻三十五品) の中から別出したものである。 ¬十住毘婆沙論¼ は、 ¬ごんぎょう¼ の 「じゅうぼん」 (もしくは ¬じゅうきょう¼) をはじめとする諸大乗経典から大乗菩薩道についての所説の要点をとりあげ、 それを解説したもので、 「易行品」 は、 その第五巻第九品にあたる。
 「易行品」 の内容を見ると、 まず不退の位に至る道について、 なんぎょうどうと易行道の二種があることを示し、 根機の劣った者に対してしん方便ほうべんぎょうの法を説き与える。 最初にぎょうしんをもって善徳ぜんとく等の十方十仏の名を称えることを易行の法として示し、 ¬宝月ほうがつどう所問しょもんぎょう¼ の文を引用してその明証とする。 つぎに問答を設けて、 阿弥陀等の百七仏、 毘婆尸びばし等の過去七仏、 未来のろくぶつ、 東方八仏、 三世諸仏、 諸大菩薩等を憶念称名することも同じく易行の法であると示して、 一品の説述を終えている。
 本書には、 阿弥陀仏のみならず、 諸仏菩薩についてもその名を称えることが易行として示されている。 しかしながら、 諸仏菩薩に関してはただ称名不退を説くだけであるのに対し、 阿弥陀仏についてはとくにその本願や往生のやくが示され、 あわせて龍樹菩薩の自行化他が述べられている。 このことから浄土真宗では、 一品の主意を阿弥陀仏の易行にあると見て本書を重視し、 所依の聖教の一としている。 しち聖教しょうぎょうの一。