◗121: 1 仏説阿弥陀経
姚秦三蔵法師鳩摩羅什奉詔訳
◗121: 5 【1】かくのごとく、われ聞きたてまつりき。ひと時、仏、舎衛国の祇樹給孤独園にましまして、
◗121: 6 大比丘の衆、千二百五十人と倶なりき。
◗121: 6 みなこれ大阿羅漢なり。衆に知識せらる。
◗121: 7 長老舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・阿難陀・羅睺羅・憍梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、かくのごときらのもろもろの大弟子、
◗121:10 ならびにもろもろの菩薩摩訶薩、
◗121:10 文殊師利法王子・阿逸多菩薩・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、かくのごときらのもろもろの大菩薩、
◗121:11 および釈提桓因等の無量の諸天・大衆と倶なりき。
◗121:13 【2】その時、仏、長老舎利弗に告げたまはく、
◗121:13 これより西方に、十万億の仏土を過ぎて世界あり、名づけて極楽といふ。
◗121:14 その土に仏まします、阿弥陀と号す。いま現にましまして法を説きたまふ。
◗122: 1 【3】舎利弗、かの土をなんがゆゑぞ名づけて極楽とする。その国の衆生、もろもろの苦あることなく、ただもろもろの楽を受く。ゆゑに極楽と名づく。
◗122: 3 また舎利弗、極楽国土には七重の欄楯・七重の羅網・七重の行樹あり。みなこれ四宝周帀し囲繞せり。
◗122: 4 このゆゑにかの国を名づけて極楽といふ。
◗122: 5 また舎利弗、極楽国土には七宝の池あり。八功徳水そのなかに充満せり。池の底にはもつぱら金の沙をもつて地に布けり。
◗122: 6 四辺の階道は、金・銀・瑠璃・玻瓈合成せり。上に楼閣あり。また金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯をもつて、これを厳飾す。
◗122: 8 池のなかの蓮華は、大きさ車輪のごとし。青色には青光、黄色には黄光、赤色には赤光、白色には白光ありて、微妙香潔なり。
◗122:10 舎利弗、極楽国土には、かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
◗122:10 また舎利弗、かの仏国土には、つねに天の楽をなす。
◗122:11 黄金を地とし、
◗122:11 昼夜六時に天の曼陀羅華を雨らす。
◗122:12 その国の衆生、つねに清旦をもつて、おのおの衣裓をもつて、もろもろの妙華を盛れて、他方の十万億の仏を供養したてまつる。すなはち食時をもつて本国に還り到りて、飯食し経行す。
◗122:14 舎利弗、極楽国土には、かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
◗123: 1 また次に舎利弗、かの国にはつねに種々奇妙なる雑色の鳥あり。白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命の鳥なり。このもろもろの鳥、昼夜六時に和雅の音を出す。その音、五根・五力・七菩提分・八聖道分、かくのごときらの法を演暢す。
◗123: 4 その土の衆生、この音を聞きをはりて、みなことごとく仏を念じ、法を念じ、僧を念ず。
◗123: 5 舎利弗、なんぢこの鳥は実にこれ罪報の所生なりと謂ふことなかれ。ゆゑはいかん。かの仏国土には三悪趣なければなり。舎利弗、その仏国土にはなほ三悪道の名すらなし。いかにいはんや実あらんや。このもろもろの鳥は、みなこれ阿弥陀仏、法音を宣流せしめんと欲して、変化してなしたまふところなり。
◗123: 9 舎利弗、かの仏国土には、微風吹きて、もろもろの宝行樹および宝羅網を動かすに、微妙の音を出す。たとへば百千種の楽を同時にともになすがごとし。
◗123:11 この音を聞くもの、みな自然に仏を念じ、法を念じ、僧を念ずるの心を生ず。
◗123:12 舎利弗、その仏国土には、かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
◗123:14 【4】舎利弗、なんぢが意においていかん、かの仏をなんのゆゑぞ阿弥陀と号する。
◗123:15 舎利弗、かの仏の光明無量にして、十方の国を照らすに障礙するところなし。このゆゑに号して阿弥陀とす。
◗124: 1 また舎利弗、かの仏の寿命およびその人民も無量無辺阿僧祇劫なり。ゆゑに阿弥陀と名づく。
◗124: 2 舎利弗、阿弥陀仏は、成仏よりこのかたいまに十劫なり。
◗124: 3 また舎利弗、かの仏に無量無辺の声聞の弟子あり、みな阿羅漢なり。これ算数のよく知るところにあらず。
◗124: 5 もろもろの菩薩衆、またまたかくのごとし。
◗124: 5 舎利弗、かの仏国土には、かくのごときの功徳荘厳を成就せり。
◗124: 7 【5】また舎利弗、極楽国土には、衆生生ずるものはみなこれ阿鞞跋致なり。
◗124: 8 そのなかに多く一生補処あり。その数はなはだ多し。これ算数のよくこれを知るところにあらず。ただ無量無辺阿僧祇劫をもつて説くべし。
◗124: 9 舎利弗、衆生聞かんもの、まさに発願してかの国に生ぜんと願ふべし。
◗124:10 ゆゑはいかん。かくのごときの諸上善人とともに一処に会することを得ればなり。
◗124:11 舎利弗、少善根福徳の因縁をもつてかの国に生ずることを得べからず。
◗124:13 舎利弗、もし善男子・善女人ありて、阿弥陀仏を説くを聞きて、名号を執持すること、もしは一日、もしは二日、もしは三日、もしは四日、もしは五日、もしは六日、もしは七日、一心にして乱れざれば、
◗124:15 その人、命終の時に臨みて、阿弥陀仏、もろもろの聖衆と現じてその前にましまさん。この人終らん時、心顛倒せずして、すなはち阿弥陀仏の極楽国土に往生することを得。
◗125: 2 舎利弗、われこの利を見るがゆゑに、この言を説く。もし衆生ありて、この説を聞かんものは、まさに発願してかの国土に生るべし。
◗125: 5 【6】舎利弗、われいま阿弥陀仏の不可思議の功徳を讃歎するがごとく、
◗125: 5 東方にまた、阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗125:11 【7】舎利弗、南方の世界に、日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗126: 1 【8】舎利弗、西方の世界に、無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗126: 6 【9】舎利弗、北方の世界に、焔肩仏・最勝音仏・難沮仏・日生仏・網明仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗126:11 【10】舎利弗、下方の世界に、師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗127: 1 【11】舎利弗、上方の世界に、梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、かくのごときらの恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において、広長の舌相を出し、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの不可思議の功徳を称讃したまふ一切諸仏に護念せらるる経を信ずべしと。
◗127: 7 【12】舎利弗、なんぢが意においていかん。なんのゆゑぞ名づけて一切諸仏に護念せらるる経とするや。
◗127: 8 舎利弗、もし善男子・善女人ありて、この諸仏の所説の名および経の名を聞かんもの、このもろもろの善男子・善女人、みな一切諸仏のためにともに護念せられて、みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得ん。
◗127:11 このゆゑに舎利弗、なんぢらみなまさにわが語および諸仏の所説を信受すべし。
◗127:12 舎利弗、もし人ありて、すでに発願し、いま発願し、まさに発願して、阿弥陀仏国に生ぜんと欲はんものは、このもろもろの人等、みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得て、かの国土において、もしはすでに生れ、もしはいま生れ、もしはまさに生れん。
◗127:15 このゆゑに舎利弗、もろもろの善男子・善女人、もし信あらんものは、まさに発願してかの国土に生るべし。
◗128: 2 【13】舎利弗、われいま諸仏の不可思議の功徳を称讃するがごとく、
◗128: 2 かの諸仏等もまた、わが不可思議の功徳を称説してこの言をなさく、釈迦牟尼仏、よく甚難希有の事をなして、よく娑婆国土の五濁悪世、劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁のなかにおいて、阿耨多羅三藐三菩提を得て、もろもろの衆生のために、この一切世間難信の法を説きたまふと。
◗128: 6 舎利弗まさに知るべし、われ五濁悪世においてこの難事を行じて、阿耨多羅三藐三菩提を得て、一切世間のために、この難信の法を説く。これを甚難とすと。
◗128: 9 【14】仏、この経を説きたまふこと已りて、舎利弗およびもろもろの比丘、一切世間の天・人・阿修羅等、仏の所説を聞きたてまつりて、歓喜し信受して、礼をなして去りにき。
◗128:15 仏説阿弥陀経