1018: 8  兵部卿三位のもとより、聖人の御房へまいらせらるゝ御文の按。基親はたゞひらに本願を信じ候て、念仏を申候なり。料間も候はざるゆへなり。

1018:10 そのゝち何事候乎。抑念仏の数遍ならびに本願を信ずるやう、基親が愚按かくのごとく候。しかるに難者候て、いわれなくおぼえ候。このおりがみに、御存知のむね、御自筆をもてかきたまはるべく候、難者にやぶらるべからざるゆへなり。

1018:13 別解・別行の人にて候はゞ、みみにもきゝいるべからず候に、御弟子等の説に候へば、不審をなし候也。又念仏者、女犯はゞかるべからずと申あひて候、在家は勿論なり。出家はこはく本願を信ずとて、出家の人の女にちかづき候条、いはれなく候。

1019: 1 善導は目をあげて女人をみるべからずとこそ候めれ。このことあらあらおほせをかぶるべく候。恐々謹言。 基親

1019: 3 聖人御房之御返事の案

1019: 4 おほせのむね、つゝしむでうけたまはり候ぬ。御信心とらしめたまふやう、おりがみつぶさにみ候に、一分も愚意に存じ候ところにたがはず候。ふかく随喜したてまつり候ところなり。

1019: 6 しかるに近来一念のほかの数返無益なりと申義いできたり候よし、ほぼつたへうけたまはり候。勿論不足言の事か、文義をはなれて申人すでに証をえ候か、いかむ。もとも不審に候。

1019: 8 またふかく本願を信ずるもの、破戒もかへりみるべからざるよしの事、これまたとはせたまふにもおよぶべからざる事か。附仏法の外道、ほかにもとむべからず候。

1019:10 おほよそは、ちかごろ念仏の天魔きおいきたりて、かくのごときの狂言いできたり候か。なほなほさらにあたはず候、あたはず候。恐々謹言。

1019:13  八月十七日