◗547: 1  安楽行道転経願生浄土法事讃 巻下
  沙門善導集記

◗547: 5 【43】高座入文。

◗547: 6  かくのごとくわれ聞きたてまつりき。一時、仏、舎衛国の祇樹給孤独園にましまして、大比丘の衆、千二百五十人とともなりき。

◗547: 7 みなこれ大阿羅漢なり。衆に知識せらる。

◗547: 8 長老舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・阿難陀・羅睺羅・憍梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、かくのごとき等のもろもろの大弟子、

◗547:11 ならびにもろもろの菩薩摩訶薩、文殊師利法王子・阿逸多菩薩・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、かくのごとき等のもろもろの大菩薩、

◗547:12 および釈提桓因等の無量の諸天大衆とともなりきと。

◗547:14 【44】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗547:15  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗547:15 諸仏の大悲心無二なり。方便の化門等しくして殊なることなし。かの荘厳無勝の土を捨てて、八相示現して閻浮に出でたまふ。あるいは真形を現じて物を利し、あるいは雑類に同じて凡愚を化す。身を六道に分ちて停息することなし。変現よろしきに随ひて有流を度す。

◗548: 4 有流の見解心一にあらず。ゆゑに八万四千の門あり。門々不同にしてまた別にあらず。別々の門還りてこれ同なり。同なるゆゑはすなはちこれ如来の致なり。別なるゆゑはまたこれ慈悲の心なり。悲心をもつて念々に三界を縁ずるに、人天・四趣罪根深し。

◗548: 7 過・現の諸仏みな来りて化すれども、無明・業障をもつてあひ逢はず。慚愧す、釈迦の弘誓重くして娑婆十悪の叢を捨てたまはざることを。希に道場に遇ひて浄土を聞く。神を騰げて永く逝きて煩籠を出でん。衆等、傷心しともに悲嘆して、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗548:12  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗548:13 【45】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗548:14  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗548:14 釈迦如来正覚を成じてより、四十九載衆生を度したまふ。五天竺国にみな化を行ずるに、邪魔・外道ことごとく帰宗す。天上天下に仏に過ぎたるはなし。慈悲をもつて苦を救ひたまふ。実に逢ひがたし。あるいは神光を放ちて六道に遍す。光触を蒙るものは慈心を起す。

◗549: 3 あるいは住し、あるいは来るに、みなことごとく益す。三塗永く絶えて追尋を断ず。あるいは大地・山・河・海を震ふ。萌冥の信いまだ深からざるを覚せしめんがためなり。あるいはみづから法を説きて教へてあひ勧め、展転してあひ将て法林に入らしむ。法林はすなはちこれ弥陀国なり。逍遙快楽してあひ侵さず。衆等、心を傾けてみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗549: 9  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗549:10 【46】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗549:11  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗549:11 如来の教法は元無二なり。まさしく衆生の機不同なるがために、一音をもつて演説したまふに、縁に随ひて悟る。残結を留めずして生空を証す。あるいは神通を現じ、あるいは法を説く。あるいは外道を服して魔蹤を滅す。みづから一身を利して縛を免るといへども、悲心のあまねく益すること絶えて功なし。

◗549:15 灰身滅智の無余の証なれども、二万劫尽きてまた心を生ず。生心覚動して身また現ずれば、諸仏先づ教へて大乗を発さしむ。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗550: 4  下、高に接ぎて讃じていへ。

◗550: 5 【47】高、下に接ぎて讃じていへ。

◗550: 6  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗550: 6 菩薩大衆無央数なり。文殊師利もつとも尊たり。大慈悲を発して苦行を行じ、弘願に違せずして衆生を度す。あるいは上好荘厳の相を現じ、あるいは上好荘厳の身を現ず。含霊覩見してみな喜びを生ず。ために妙法を説きて真門に入らしむ。

◗550: 9 十方仏国に身みな到り、仏の神光を助けて法輪を転ず。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗550:12  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗550:13 【48】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗550:14  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗550:14 仏と声聞・菩薩衆、同じく舎衛に遊び祇園に住し、三塗を閉ぢ六道を絶たんと願じて、無生浄土の門を開顕したまふ。人天大衆みな来集して、尊顔を瞻仰して未聞を聴く。仏を見たてまつり経を聞きて同じく悟を得、畢命に心を傾けて宝蓮に入る。

◗551: 2 誓ひて弥陀の安養界に到り、穢国に還来して人天を度せん。願はくはわが慈悲際限なくして、長時長劫に慈恩を報ぜん。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗551: 6  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗551: 7 【49】高座入文。

◗551: 8  その時に仏、長老舎利弗に告げたまはく、これより西方に十万億の仏土を過ぎて世界あり、名づけて極楽といふ。その土に仏まします、阿弥陀と号す。いま現にましまして法を説きたまふ。

◗551:10 舎利弗、かの土をなんがゆゑぞ名づけて極楽となす。その国の衆生、もろもろの苦あることなく、ただもろもろの楽を受く。ゆゑに極楽と名づくと。

◗551:13 【50】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗551:14  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗551:14 人天大衆みな囲繞して、心を傾けて合掌して経を聞かんと願ず。仏、凡聖の機と時と悟とを知りたまひて、すなはち舎利に告げて用心して聴かしめたまふ。一切の仏土みな厳浄なれども、凡夫の乱想おそらくは生じがたければ、如来別して西方の国を指したまふ。これより十万億を超過せり。

◗552: 3 七宝の荘厳もつとも勝たり。聖衆人天の寿命長し。仏を弥陀と号す。つねに法を説きたまふ。極楽の衆生障おのづから亡ずと。衆等、心を回してかしこに生ぜんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗552: 7  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗552: 8 【51】高座入文。

◗552: 9  また舎利弗、極楽国土には七重の欄楯・七重の羅網・七重の行樹あり。みなこれ四宝をもつて周帀し囲繞せり。

◗552:10 このゆゑにかの国を名づけて極楽といふと。

◗552:12 【52】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗552:13  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗552:13 三界の衆生は智慧なし。惛々として六道のうちに身を安く。諸仏慈心をもつてために法を説きたまへども、聾盲觝突の伴は聞かず。たちまちに無常の苦来り逼むれば、精神錯乱してはじめて驚忙す。万事の家生みな捨離し、専心に発願して西方に向かへ。

◗553: 1 弥陀の名号相続して念ずれば、化仏・菩薩眼前に行なりたまふ。あるいは華台を与へ、あるいは手を授け、須臾に命尽きぬれば、仏迎へ将たまふ。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗553: 5  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗553: 6 【53】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗553: 7  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗553: 7 歴劫よりこのかたいまだ聞見せず。西方浄土の宝荘厳、地上・虚空にみな遍満して、珠羅宝網百千重なり。一々の網羅珍宝を結び、玲瓏たる雑色ことごとく光を暉かす。宝樹の枝条異相間はり、行々整直にして巧みにあひ当れり。

◗553:10 これはこれ弥陀の悲願力なり。無衰無変にして湛然として常なり。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗553:13  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗553:14 【54】高座入文。

◗553:15  また舎利弗、極楽国土には七宝の池あり。八功徳水そのなかに充満せり。池の底にはもつぱら金沙をもつて地に布けり。

◗554: 1 四辺の階道は金・銀・瑠璃・玻瓈をもつて合成せり。上に楼閣あり。また金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯をもつて、これを厳飾す。

◗554: 3 池のなかの蓮華、大きさ車輪のごとし。青色には青光、黄色には黄光、赤色には赤光、白色には白光あり。微妙香潔なり。

◗554: 4 舎利弗、極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せりと。

◗554: 6 【55】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗554: 7  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗554: 7 極楽世界は広くして清浄なり。地上の荘厳量るべきこと難し。八功の香池流れて遍満す。底に布ける金沙、照らすに異光あり。四辺の階道一色にあらず。岸上の重楼百万行なり。真珠・碼碯あひ映飾し、四種の蓮華開けてすなはち香ばし。

◗554:10 十方の人天生ずることを得るものは、おのおの一箇に坐して真常を聴く。このゆゑにかの国を極楽と名づく。衆等、華を持して来りて供養したてまつれ。

◗554:13  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗554:14 【56】高座入文。

◗554:15  また舎利弗、かの仏国土にはつねに天の楽をなす。

◗554:15 黄金をもつて地となし、昼夜六時に天の曼陀羅華を雨らす。

◗555: 1 その国の衆生、つねに清旦をもつて、おのおの衣裓をもつてもろもろの妙華を盛れて、他方十万億の仏を供養したてまつる。すなはち食時をもつて本国に還り到りて、飯食し経行す。

◗555: 3 舎利弗、極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せりと。

◗555: 5 【57】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗555: 6  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗555: 6 弥陀仏国はもつとも勝たり。広大寛平にして実にこれ精なり。天楽音声つねに遍満す。黄金をもつて地となして奇珍を間へたり。昼夜六時に華おのづから散ず。法音つねに説きて自然に聞く。かの国の衆生はさらに事なし。衣裓に華を盛れて十方に詣す。

◗555: 9 一々に親承して供養を修するに、塵労垢習永く消亡す。種々に心に随ひみな意に称ひて、利益せざるはなし。これ真常なり。たちまちに飛騰して本国に還り、飯食して七宝の台に経行す。衆等、心を傾けてみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗555:14  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗555:15 【58】高座入文。

◗556: 1  また次に舎利弗、かの国にはつねに種々奇妙なる雑色の鳥あり。白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命の鳥なり。このもろもろの衆鳥、昼夜六時に和雅の音を出す。その音五根・五力・七菩提分・八聖道分、かくのごとき等の法を演暢す。

◗556: 4 その土の衆生この音を聞きをはりて、みなことごとく仏を念じ法を念じ僧を念ず。舎利弗、なんぢこの鳥は実にこれ罪報の所生なりと謂ふことなかれ。所以はいかん。かの仏国土には三悪趣なければなり。

◗556: 6 舎利弗、その仏国土にはなほ三悪道の名すらなし、いかにいはんや実あらんや。このもろもろの衆鳥は、みなこれ阿弥陀仏、法音を宣流せしめんと欲して、変化してなしたまふところなり。

◗556: 9 舎利弗、かの仏国土には微風吹きて、もろもろの宝行樹および宝羅網を動かすに、微妙の音を出す。たとへば百千種の楽を同時にともになすがごとし。

◗556:11 この音を聞くもの、みな自然に仏を念じ法を念じ僧を念ずる心を生ず。

◗556:12 舎利弗、その仏国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せりと。

◗556:13 【59】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗556:14  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗556:14 道場清浄にして希にして見がたし。弥陀の浄土はなはだ聞きがたし。聞きがたく見がたくしていま会ふことを得たり。如説に修行して意をもつぱらにしてもつぱらにせん。願はくは仏の慈悲はるかに摂受して、臨終に宝座その前に現じたまへ。すでに華台を見て心踊躍し、仏に従ひて逍遙して自然に帰す。

◗557: 3 自然はすなはちこれ弥陀国なり。無漏無生にしてまたすなはち真なり。行来進止、つねに仏に随ひて無為法性の身を証得す。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗557: 7  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗557: 8 【60】 下、高に接ぎて讃じていへ。

◗557: 9  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗557: 9 極楽の荘厳は雑宝を間へたり。実にこれ希奇にして未聞を聞く。宝鳥、空に臨みて仏会を讃ず。文々句々、理あひ同じ。昼夜に声を連ねて息むことあることなし。哀婉雅亮にして人心を発す。

◗557:12 あるいは五根・七覚分を説き、あるいは八聖慈悲門を説き、あるいは他方の悪道を離るることを説き、あるいは地獄の人天を封ずることを説き、あるいは長時に苦行を修することを説き、あるいは無上菩提の因を説き、あるいは散善の波羅蜜を説き、あるいは定慧をもつて深禅に入ることを説く。

◗557:15 菩薩・声聞この法を聞きて、処々に分身して法輪を転ず。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗558: 3  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗558: 4 【61】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗558: 5  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗558: 5 極楽の荘厳は三界を出で、人・天・雑類等しくして無為なり。法蔵は因の広弘願を行じ、もしわれ仏を得ば希奇を現ぜんと。

◗558: 7 あるいは鳥身を現じてよく法を説き、あるいは無請に現じてよく機に応じ、あるいは微波をして妙響を出さしめ、あるいは林樹をして慈悲を讃ぜしめ、あるいは風光をしてあひ応じて動ぜしめ、あるいは羅網をして音辞を説かしめん。一切の荘厳の声遍満し、恒沙の天楽おのづから時による。

◗558:10 他方の凡聖の類を引かんがために、ことさらに仏この不思議を現じたまふ。われらこれを聞きて身の毛竪つ。骨を砕きて阿弥師に慚謝す。一たび受けて専精にして命を惜しまざれば、須臾にすなはち到る。あに遅しとせんや。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗558:15  下、高に接ぎて讃じていへ。

◗559: 1 【62】高、下に接ぎて讃じていへ。

◗559: 2  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗559: 2 弥陀の仏国はまことに厳浄なり。三悪・六道永く名すらなし。事々の荘厳識るべきこと難し。種々妙微にしてはなはだ精たり。地はるかに寛平にして衆宝間はり、一々に同じく耀きて五百の光あり。一々の光宝台座となる。一々の座上に百千の堂あり。

◗559: 5 千堂の化仏、塵沙の会あり。衆生入るものともにあひ量る。無数の音声空に遊びて転じ、化天童子華香を散ず。昼夜六時に間息することなし。地上・虚空量るべきこと難し。八徳の香池に意に随ひて入る。潅注すること人によりて浅深なし。

◗559: 8 あるいは出で、あるいは没す。三禅の楽なり。徐々としてあひ喚ばひて檀林に入る。檀林には宝座行々として別れたり。聖衆はなほ日月に超ゆるがごとし。日月はすなはちこれ長時劫なり。あるいは坐し、あるいは立し、あるいは遊方するに、到る処にはただ無上の法のみを聞きて、永く凡夫生死の殃を絶つ。

◗559:12 このゆゑにかの国を安楽と名づく。衆等、心を回して往生を願ぜよ。かの国に往生しぬれば余の事なし。手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗559:15  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗560: 1 【63】高座入文。

◗560: 2  舎利弗、なんぢが意においていかん、かの仏をなんがゆゑぞ阿弥陀と号する。

◗560: 3 舎利弗、かの仏の光明無量にして十方の国を照らすに、障礙するところなし。このゆゑに号して阿弥陀となす。

◗560: 4 また舎利弗、かの仏の寿命およびその人民も無量無辺阿僧祇劫なり。ゆゑに阿弥陀と名づく。

◗560: 5 舎利弗、阿弥陀仏は、成仏よりこのかたいまに十劫なり。

◗560: 6 また舎利弗、かの仏に無量無辺の声聞の弟子あり、みな阿羅漢なり。これ算数のよく知るところにあらず。もろもろの菩薩衆もまたかくのごとし。

◗560: 8 舎利弗、かの仏の国土には、かくのごとき功徳荘厳を成就せりと。

◗560:10 【64】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗560:11  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗560:11 果、涅槃を得てつねに世に住す。寿命延長にして量るべきこと難し。千劫・万劫・恒沙劫・兆載永劫にしてまた無央なり。一たび坐して移ることなくまた不動なり。後際を徹窮して身光を放つ。霊儀の相好真金色なり。巍々として独り坐して衆生を度す。

◗560:15 十方の凡聖専心に向かへば、身を分ち化を遣はして往きてあひ迎へしめたまふ。一念に空に乗じて仏会に入れば、身色・寿命ことごとくみな平し。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗561: 4  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗561: 5 【65】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗561: 6  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗561: 6 かの仏は因より苦行を行じ、勇猛専精にして退する時なし。一たび坐して百劫・長時劫、なしがたきをよくなして疲れを生ぜず。自利利他同じく悪を断ず。怨憎を捨てざるは大悲による。有識含霊みなあまねく化す。同因同行菩提に至る。

◗561: 9 誓願して清浄の土を荘厳す。見聞歓喜して無為を証す。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗561:12 【66】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗561:13  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗561:13 弥陀の化主心に当りて坐す。華台独りはるかにもつとも精たり。百億の摩尼、雑宝を間へたり。葉々の荘厳相おのづからなる。正坐よりこのかた十劫を経たり。心は法界を縁じて慈光を照らす。光触を蒙るものは塵労滅し、臨終に仏を見たてまつりて西方に往く。

◗562: 1 かしこに到りて華開けて大会に入る。無明煩悩自然に亡じ、三明自然なるは仏願に乗ずればなり。須臾に合掌して神通を得。かの仏の声聞・菩薩衆は、塵沙のごとくして算数また窮めがたし。願はくはわれ今生につとめて意を発して、畢命にかの聖人の叢に往かん。衆等、心を傾け往生を願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗562: 7  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗562: 8 【67】高座入文。

◗562: 9  また舎利弗、極楽国土には衆生生ずるもの、みなこれ阿鞞跋致なり。

◗562: 9 そのなかに多く一生補処あり。その数はなはだ多し。これ算数のよくこれを知るところにあらず。ただ無量無辺阿僧祇劫をもつて説くべし。

◗562:11 舎利弗、衆生聞くものは、まさに発願してかの国に生ぜんと願ずべし。所以はいかん。かくのごときもろもろの上善人と倶に一処に会することを得ればなり。

◗562:13 舎利弗、少善根福徳の因縁をもつてかの国に生ずることを得べからずと。

◗562:15 【68】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗563: 1  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗563: 1 釈迦如来、身子に告げたまふは、すなはちこれあまねく苦の衆生に告げたまふなり。娑婆六道は安き処にあらず。冥々たる長夜の闇のなかに行く。聖化同居すれどもあひ識らず。ややもすれば瞋毒を生じて無明を闘はしむ。この無明のために六道に繋がれ、愛憎高下していづれの時にか平らかならん。

◗563: 5 すでに善業の生死を排ふなし。貪によりて罪を造りていまだ心驚かず。この人皮に裹める驢骨に狂かされて、三塗にみづから入ること争ふべからず。われらこれを聞きて心髄痛む。誓願してたちまちに世間の栄を捨てん。あまねく願はくは心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗563:10  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗563:11 【69】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗563:12  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗563:12 娑婆はきはめて苦にして生処にあらず。極楽は無為にして実にこれ精なり。九品ともに回して不退を得よ。阿鞞跋致はすなはち無生なり。ただ初生の限極なきのみにあらず。十地以下も劫にも窮めがたし。かくのごときもの大海塵恒沙なり。有縁到ればそのなかに入る。

◗564: 1 四種の威儀につねに仏を見たてまつり、行来進止、神通に駕す。六識縦横にして自然に悟り、いまだ思量一念の功によらず。あまねく同生の善知識に勧む。専心専注して西方に往け。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗564: 5  下、高に接ぎて讃じていへ。

◗564: 6 【70】高座入文。

◗564: 7  舎利弗、もし善男子・善女人ありて、阿弥陀仏を説くを聞きて、名号を執持すること、もしは一日、もしは二日、もしは三日、もしは四日、もしは五日、もしは六日、もしは七日、一心にして乱れざれば、

◗564: 9 その人、命終の時に臨みて、阿弥陀仏、もろもろの聖衆と現じてその前にまします。この人終る時、心顛倒せずして、すなはち阿弥陀仏の極楽国土に往生することを得

◗564:11 。舎利弗、われこの利を見るがゆゑに、この言を説く。もし衆生ありてこの説を聞かんものは、まさに発願してかの国土に生ずべしと。

◗564:14 【71】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗564:15  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗564:15 極楽は無為涅槃の界なり。随縁の雑善おそらくは生じがたし。ゆゑに如来要法を選びて、教へて弥陀を念ぜしむることもつぱらにしてまたもつぱらならしむ。七日七夜、心無間に、長時の起行もますますみなしかなり。臨終に聖衆、華を持して現ず。身心踊躍して金蓮に坐す。

◗565: 4 坐する時すなはち無生忍を得。一念に迎へ将て仏前に至る。法侶衣をもつて競ひ来りて着しむ。不退を証得して三賢に入る。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗565: 7  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗565: 8 【72】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗565: 9  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗565: 9 弥陀の侍者二菩薩を号して無辺・観世音といふ。一切の時中に仏化を助けて、六道に分身して慈心を起し、念々に機に随ひて、ために法を説きたまふ。惛々として悟りがたきは罪根の深ければなり。百計千万数世に出でたまふも、万がなかに一も煩籠を出づるものなし。

◗565:13 なんぢ衆生の長劫の苦を念ふに、諸仏対面すれどもあひ逢はず。人天の少善なほ弁じがたし、いかにいはんや無為にして六通を証せんをや。希有の法を見聞することを得たりといへども、粗心、懈怠にしてますます功なし。たとひ連年にほしいままに脚走して趁め得んとするも、貪瞋内胸に満てり。

◗566: 1 貪瞋はすなはちこれ身の三業なり。なんぞ浄土のうちの真空を開かん。語を同生の善知識に寄す。仏の慈悲を念じて聖の叢に入れ。衆等、心を傾けてみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗566: 5  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗566: 6 【73】高座入文。

◗566: 7  舎利弗、われいま阿弥陀仏の不可思議の功徳を讃歎するがごとく、東方にまた阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗566:12 【74】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗566:13  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗566:13 釈迦如来つねに東方恒沙の等覚尊を讃嘆したまふ。大悲同じく化して心無二なり。一仏功を施せば、多もまたしかなり。凡夫疑見の執を断ぜんがために、みな舌相を舒べて三千に覆ひて、ともに七日名号を称することを証し、また釈迦の言説の真なることを表す。

◗567: 1 終時正意にして弥陀を念ずれば、仏の慈光来りて身を照らすを見る。この弥陀の本願力に乗じて、一念のあひだに宝堂に入る。宝堂の荘厳限極なし。化仏・聖衆、坐して思量す。心性は百千の日よりもあきらかなり。悲智双行法爾として常なり。

◗567: 5 われいますでに無為の処に到る。あまねく含霊のこの方に帰することを願ず。衆等、心を傾けてみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗567: 8  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗567: 9 【75】高座入文。

◗567:10  舎利弗、南方の世界に、日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗567:15 【76】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗568: 1  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗568: 1 南方の諸仏恒沙のごとし。また舌相を舒べて三千に覆ひて、その本国の凡聖の衆のために、釈迦変現の身を讃嘆したまふ。娑婆五濁のうちに出現したまふは、心を標して罪根の人を化せんがためなり。我見・邪貪・増上慢、教へて世を出さしめんとしたまふに、かへりて瞋りを生ず。

◗568: 5 なんぢ衆生の流浪の久しきことを念ふに、諸仏の誠言真ならずと謂へばなりと。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗568: 8  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗568: 9 【77】高座入文。

◗568:10  舎利弗、西方の世界に、無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗568:15 【78】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗569: 1  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗569: 1 西方の諸仏恒沙のごとし。おのおの本国において如来を讃ず。百億閻浮のうちに分身して、八相大希奇を示現す。五濁の凡夫まさに実なりと謂へり。六年苦行して無為を証し、降魔成道して妙法を説きたまふ。種々の方便不思議なり。

◗569: 4 あまねく衆生を勧めて浄土に帰せしめたまふに、前みて思ひ却きて慮りてさらに疑を生ず。われいま舌を舒べてもつて証をなす。西方極楽かならずすべからくよるべしと。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗569: 8  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗569: 9 【79】高座入文。

◗569:10  舎利弗、北方の世界に、焔肩仏・最勝音仏・難俎仏・日生仏・網明仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗569:14 【80】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗569:15  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗569:15 北方の諸仏恒沙のごとし。みな舌相を舒べて牟尼を証す。われ凡夫のために来りて世に出で、縁に随ひて法を説き時機に応ず。時機あひ感ずれば聞きてすなはち悟る。説のごとく修行して疑を致さざれ。七日名を称して間雑することなく、身心踊躍して喜びまた悲しむ。

◗570: 4 慶ばしきかな、希に自家国を聞くことを得たり。諸仏還帰することを得と証判したまふ。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗570: 7  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗570: 8 【81】高座入文。

◗570: 9  舎利弗、下方の世界に、師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗570:14 【82】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗570:15  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗570:15 下方の諸仏恒沙のごとし。おのおの本国において衆生を度し、釈迦の五濁に出でてよく難事をなして群萌を化することを証讃したまふ。善巧よろしきに随ひて悪を断たしめ、偏心に指授して西に向かひて行かしむ。一切の福業みな回向すれば、終時に化仏みづから来迎したまふ。

◗571: 4 利根の智者は聞きて歓喜し、たちまちに三塗を憶して心すなはち驚く。心を驚かせば、毛竪ちてつとめて懴悔す。おそらくは罪滅せずして深坑に堕することを。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗571: 8  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗571: 9 【83】高座入文。

◗571:10  舎利弗、上方の世界に、梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、おのおのその国において広長の舌相を出して、あまねく三千大千世界に覆ひて、誠実の言を説きたまはく、なんぢら衆生、まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしと。

◗571:15 【84】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗572: 1  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗572: 1 上方の諸仏恒沙のごとし。また舌相を舒べたまふことは娑婆のためにす。十悪・五逆、多く疑謗し、邪を信じ鬼に事へ神魔を餧ふ。妄想をもつて恩を求め、福あらんと謂へり。災障禍横うたたいよいよ多し。連年、病みて床枕に臥す。聾盲、脚折れ、手攣撅す。

◗572: 4 神明に承事してこの報を得。いかんぞ捨てて弥陀を念ぜざる。弥陀の願力はみな平等なり。ただ心を回して華みづから捧げ、一念に快楽の国に逍遙すれば、畢竟常安にして退動することなし。衆等、心を回してかしこに生ぜんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗572: 9  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗572:10 【85】高座入文。

◗572:11  舎利弗、なんぢが意においていかん。なんがゆゑぞ名づけて一切諸仏所護念経となす。

◗572:12 舎利弗、もし善男子・善女人ありて、この諸仏の所説の名および経の名を聞くもの、このもろもろの善男子・善女人、みな一切諸仏のためにともに護念せられて、みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得ん。

◗572:14 このゆゑに舎利弗、なんぢらみなまさにわが語および諸仏の所説を信受すべし。

◗572:15 舎利弗、もし人ありて、すでに発願し、いま発願し、まさに発願して、阿弥陀仏国に生ぜんと欲するものは、このもろもろの人等みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得て、かの国土において、もしはすでに生じ、もしはいま生じ、もしはまさに生ずべし。

◗573: 4 このゆゑに舎利弗、もろもろの善男子・善女人、もし信あるものは、まさに発願してかの国土に生ずべしと。

◗573: 6 【86】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗573: 7  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗573: 7 釈迦如来の大慈悲、娑婆に応現して有縁を度したまふ。有縁三千界に遍満せり。機に随ひて示悟して貪痴を断ぜしめ、総じて勧めてこの人天の楽を厭はしめたまふ。無常・八苦の火、人を焼けども、念仏・誦経すれば罪障を除き、諸仏はるかに加して身を護念したまふ。

◗573:11 昼夜六時につとめて発願して、心を持ちて散ぜざれば業また成ず。業成ずれば、仏華台主を見たてまつる。須臾に変じて紫金台となり、仏に従ひて逍遙して宝国に入り、畢竟じて永く愁憂の声を絶つ。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗573:15  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗574: 1 【87】高座入文。

◗574: 2  舎利弗、われいま諸仏の不可思議の功徳を称讃するがごとく、

◗574: 2 かの諸仏等もまた、わが不可思議の功徳を称説して、この言をなしたまはく、釈迦牟尼仏、よく甚難希有の事をなし、よく娑婆国土の五濁悪世の劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁のなかにおいて、阿耨多羅三藐三菩提を得て、もろもろの衆生のために、この一切世間難信の法を説きたまふと。

◗574: 6 舎利弗、まさに知るべし、われ五濁悪世において、この難事を行じて阿耨多羅三藐三菩提を得て、一切世間のためにこの難信の法を説く。これを甚難となす。

◗574: 8 仏この経を説きをはりたまふに、舎利弗およびもろもろの比丘、一切世間の天・人・阿修羅等、仏の所説を聞きて、歓喜し信受して、礼をなして去りぬと。

◗574:11 【88】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗574:12  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗574:12 世尊慇懃に身子に告げて、諸仏の大悲の同じきことを表知せしめたまふ。たがひに徳を讃じて心異なることなく、巧みに時機に応じておのおの功あり。六方の如来みな讃嘆したまふ。釈迦の出現はなはだ逢ひがたしと。まさしく五濁の時の興盛なるを治す。無明頑硬にして高峰に似たり。

◗575: 1 劫濁の時移りて身やうやく小なり。衆生濁悪にして蛇竜に等し。悩濁遍満して塵数に過ぎ、愛憎違順して岳山のごとし。見濁の叢林棘刺のごとし。命濁中夭刹那のあひだなり。依正二報同時に滅し、正に背き邪に帰して横に怨を起す。

◗575: 4 九十五種みな世を汚す。ただ仏の一道のみ独り清閑なり。出でて菩提に到らば心尽くることなく、火宅に還来して人天を度す。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗575: 8  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗575: 9 【89】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗575:10  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗575:10 如来五濁に出現して、よろしきに随ひて方便して群萌を化したまふ。あるいは多聞にして得度すと説き、あるいは少解をもつて三明を証すと説く。あるいは福慧ならべて障を除くと教へ、あるいは禅念して坐して思量せよと教ふ。種々の法門みな解脱すれども、念仏して西方に往くに過ぎたるはなし。

◗575:14 上一形を尽し十念に至り、三念・五念まで仏来迎したまふ。ただに弥陀の弘誓重きがために、凡夫をして念ずればすなはち生ぜしむることを致す。衆等、心を回してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗576: 3  下、高に接ぎて讃じていへ。

◗576: 4 【90】高、下に接ぎて讃じていへ。

◗576: 5  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗576: 5 世尊法を説きたまふこと、時まさに了りなんとして、慇懃に弥陀の名を付属したまふ。五濁増の時は多く疑謗し、道俗あひ嫌ひて聞くことを用ゐず。修行することあるを見ては瞋毒を起し、方便破壊して競ひて怨を生ず。かくのごとき生盲闡提の輩は、頓教を毀滅して永く沈淪す。

◗576: 9 大地微塵劫を超過すとも、いまだ三塗の身を離るることを得べからず。大衆同心にみな、あらゆる破法罪の因縁を懴悔せよ。衆等、心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗576:12  高、下に接ぎて讃じていへ。下、高に接ぎて讃じていへ。

◗576:13 【91】高座、下座の声の尽くるを待ちて、すなはち大衆のために総じて懴悔していへ。

◗576:15  弟子道場の衆等、そこばくの人、おのおのに心を標して愧謝す。

◗576:15 諸仏、冥空に幽顕したまへる得道の聖人、三十三天等の一切の天神・地神、虚空・山林・河海神等、天曹・地府・閻羅・伺命・五道・太山・三十六王・地獄典領・一切の霊祇等、およびこの道場の尊経・舎利・形像・霊儀等、ただ願はくは大悲光威神をもつて、今日道場の主某甲およびそこばくの人、心を披き懴悔するを加備し護念し摂受し証明したまへ。

◗577: 5 弟子某甲等、無身有身・無識有識よりこのかた、すなはち今日に至り今時に至るまで、その中間において、所作の身口意業の十悪の罪無量無辺なり。

◗577: 7 あるいは身業をほしいままにして、一切の地獄・畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を殺害し劫奪せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を殺害し劫奪せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を殺害し劫奪せること数を知るべからず。

◗577:11 あるいは故殺・誤殺・戯笑殺・自殺・教他殺・随喜殺・相続殺・無間殺・愛憎違順殺・放逸殺・貪味為財殺、かくのごとき等の殺の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗577:14 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗578: 1  下、高に接ぎて和していへ。

◗578: 2  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗578: 3 【92】高、下に接ぎて懴していへ。

◗578: 4  弟子衆等、次にまさに偸盗の罪を懴悔すべし。

◗578: 4 あるいは身業をほしいままにして、一切の地獄・畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を偸盗し劫奪せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を偸盗し劫奪せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を偸盗し劫奪せること数を知るべからず。

◗578: 9 あるいは故盗・誤盗・戯笑盗・自盗・教他盗・随喜盗・放逸盗・無間盗・愛憎盗・違順盗・貪味為財盗、かくのごとき等の偸盗の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗578:11 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗578:13  下、高に接ぎて和していへ。

◗578:14  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗578:15 【93】高、下に接ぎて懴していへ。

◗579: 1  弟子衆等、次にまさに邪婬顛倒の罪を懴悔すべし。

◗579: 1 あるいは身業をほしいままにして邪婬を起し、あるいは一切の畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を逼掠せること数を知るべからず。あるいは婬を起して一切の鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を逼掠せること数を知るべからず。あるいは婬心を起して一切の師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を逼掠せること数を知るべからず。

◗579: 6 あるいは放逸作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・無慚愧作・相続作・無間作・邪貪悪貪作、かくのごとき等の邪婬の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗579: 8 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗579:10  下、高に接ぎて和していへ。

◗579:11  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗579:12 【94】高、下に接ぎて懴していへ。

◗579:13  弟子衆等、次にまさに口業虚誑の罪を懴悔すべし。

◗579:13 あるいは口業をほしいままにして、一切の地獄・畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を欺誑せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を欺誑せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を欺誑せること数を知るべからず。

◗580: 2 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、かくのごとき等の欺誑の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗580: 5 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗580: 7  下、高に接ぎて和していへ。

◗580: 8  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗580: 9 【95】高、下に接ぎて懴していへ。

◗580:10  弟子衆等、次にまさに調戯の罪を懴悔すべし。

◗580:10 あるいは口業をほしいままにして、一切の地獄・畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を調戯軽弄せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を調弄せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を調弄せること数を知るべからず。

◗580:14 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作、かくのごとき等の調弄の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗581: 2 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗581: 3  下、高に接ぎて和していへ。

◗581: 4  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗581: 5 【96】高、下に接ぎて懴していへ。

◗581: 6  弟子衆等、次にまさに悪口の罪を懴悔すべし。

◗581: 6 あるいは口業をほしいままにして、一切の地獄・畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を罵辱し誹謗し毀呰せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を罵辱し誹謗し毀呰せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を罵辱し誹謗し毀呰せること数を知るべからず。

◗581:11 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、かくのごとき等の悪口の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗581:13 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗581:15  下、高に接ぎて和していへ。

◗582: 1  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗582: 2 【97】高、下に接ぎて懴していへ。

◗582: 3  弟子衆等、次にまさに両舌の罪を懴悔すべし。

◗582: 3 あるいは口業をほしいままにして、両舌をもつて一切の畜生の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を闘乱破壊せること数を知るべからず。あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、水・陸・虚空の蠕動の類を闘乱破壊せること数を知るべからず。あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を闘乱破壊せること数を知るべからず。

◗582: 8 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、かくのごとき等の両舌の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗582:10 懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗582:12  下、高に接ぎて和していへ。

◗582:13  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗582:14 【98】高、下に接ぎて懴していへ。

◗582:15  弟子衆等、次にまさに意業の罪を懴悔すべし。

◗582:15 あるいは邪貪・悪貪を起し身口意業を動ぜること数を知るべからず。あるいは邪瞋を起し身口意業を動ぜること数を知るべからず。あるいは邪痴顛倒・悪見顛倒を起し身口意業を動ぜること数を知るべからず。あるいは意業によりて身業の十悪の罪を造作して、凡聖、六道の衆生、親疎人畜等の衆生を簡ばざること数を知るべからず。

◗583: 4 あるいは故作・誤作・常作・無間作・自作・教他作・随喜作、かくのごとき等の意業の罪無量無辺なり。いま道場の凡聖に対して発露懴悔す。永く尽して余なからん。

◗583: 7 総じて十悪の罪を懴しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗583: 8  下、高に接ぎて和していへ。

◗583: 9  懴悔しをはりて、心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。

◗583:10  この十悪はすなはち一切の悪を摂し尽す。いま十悪の罪を懴悔すれば、すなはち一切の罪を懴し尽すなり、知るべし。

◗583:12 【99】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗583:13  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗583:13 三界は安きことなし。火宅のごとし。六道周慞たり。競ひて門を出でよ。門々不同にして八万四なり。おのおのみな心眼の前に当れり。棄々して出でんと欲すれどもまた回り去く。この無明のために誤りて人を殺し、財を貪り色を愛でて厭足することなし。虚華幻惑詐りてあひ親しむ。

◗584: 2 財尽き色落ちぬればあひ嫌ひて恨む。須臾に義断えて屠怨のごとし。屠怨、娑婆のうちに遍満す。有識含情みなまたしかなり。これがために如来ひとへに指授して、勧めてもつぱら浄土の因を修せしむ。浄土の因、成じぬれば自然に到る。終る時に合掌して香煙をたてまつる。

◗584: 5 香煙ただちに弥陀仏に注ぐ。聖衆華を持してわが身を迎ふ。すなはち華台に坐するに紫金色なり。かの無漏に到りぬれば、真にしてまた真なり。衆等、悲流してみな往かんと願じて、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗584: 9  高、下に接ぎて讃じていへ。

◗584:10 【100】下、高に接ぎて讃じていへ。

◗584:11  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗584:11 劫尽きんと欲する時五濁盛りなり。衆生邪見にしてはなはだ信じがたし。もつぱらにしてもつぱらなれと指授して西路に帰せしむれども、他のために破壊せられてまた故のごとし。曠劫よりこのかたつねにかくのごとし。これ今生にはじめてみづから悟るにあらず。まさしく好き強縁に遇はざるによりて、輪廻して得度しがたからしむることを致す。

◗585: 1 今日今時要法を聞き、畢命を期となして、誓ひて堅固なれ。堅固に心を持ちて身を惜しまずして、釈迦・諸仏の恩を慚愧すべし。心を標してために西方の楽を説きて、斉しく帰して正門に入らしめんと欲す。正門はすなはちこれ弥陀界なり。究竟解脱して根源を断ず。

◗585: 4 去来、他郷には停まるべからず。仏の帰家に従ひて本国に還りぬれば、一切の行願自然に成ず。衆等おのおの浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。

◗585: 8 【101】高、下に接ぎて讃じていへ。

◗585: 9  願はくは往生せん、願はくは往生せん。

◗585: 9 大衆人々みな合掌して、身を砕きて釈迦の恩を慚謝せよ。よく慈悲巧方便を得て西方快楽の門を指授したまふ。道場散ぜんと欲して人まさに別れんとす。ゆめあひ勧めて貪瞋を断ぜよ。貪瞋の因縁聖土を障ふ。みづから悟ることを得ずして永く沈淪す。

◗585:12 同行あひ親しみてあひ策励し、畢命を期となして仏前に到らん。願はくはこの法輪相続して転じ、道場の施主ますます長年ならん。大衆ことごとく同じく安楽を受け、見聞随喜もまたみなしかならん。あまねく願はくは心を回して浄土に生ぜんとして、手に香華を執りてつねに供養したてまつらん。

◗586: 1  下、高に接ぎて讃じていへ。高、下に接ぎて讃じていへ。

◗586: 2 【102】また経を誦し讃を唱ふることをはりて、高座すなはち一人をして行香せしめ、大衆と行華せよ。次にまさに讃人等行道の処に向かひて立すべし。また小者をして礼供養および如法行道を唱へしめよ。唱へをはりてその散華の法、もつてもつぱら上のごとくせよ。あるいは三帀しあるいは七帀しをはりて、すなはち仏前に当りて立ちて次に後讃を唱へよ。

◗586: 7 【103】高座唱讃し、下座和していへ。

◗586: 8 般舟三昧楽 願往生
大衆人々みな合掌せよ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
道場の聖衆帰還せんと欲す 無量楽

◗586:12 衆等心を傷めともに傷歎して 願往生
ただ釈迦の恩を慚謝することを知れ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
悲喜交流して深くみづから慶ぶ 無量楽

◗587: 1 釈迦仏の開悟によらずは 願往生
弥陀の名願いづれの時にか聞かん 無量楽
般舟三昧楽 願往生
仏の慈恩を荷ひて実に報じがたし 無量楽

◗587: 5 四十八願慇懃に喚ばふ 願往生
仏の願力に乗じて西方に往かん 無量楽
般舟三昧楽 願往生
娑婆永く別れなばさらになにをか憂へん 無量楽

◗587: 9 罪と福と時との多少を問ふことなく 願往生
心々に念仏して疑を生ずることなかれ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
六方の如来不虚を証したまふ 無量楽

◗587:13 三業専心にして雑乱なければ 願往生
百宝の蓮華時に応じて見る 無量楽
般舟三昧楽 願往生
臨終に聖衆みづから来迎したまふ 無量楽

◗588: 2 行者仏を見たてまつりて心歓喜す 願往生
弥陀手を接りて華台に坐せしむ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
坐しをはれば身同じく紫金色なり 無量楽

◗588: 6 仏に従ひて須臾に宝国に至り 願往生
ただちに弥陀大会のなかに入る 無量楽
般舟三昧楽 願往生
仏の荘厳の無数億なるを見る 無量楽

◗588:10 三明六通みな具足して 願往生
わが閻浮の同行人を憶ふ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
同行あひ親しみて願はくは退することなかれ 無量楽

◗588:14 七周行道し散華しをはりて 願往生
冥空の諸仏会を供養したてまつる 無量楽
般舟三昧楽 願往生
大会頂礼して弥陀に別れたてまつる 無量楽

◗589: 3 【104】行道散華七周しをはりて、次に仏前に向かひて立ちて讃を唱へていへ。

◗589: 5 弥陀ともろもろの聖衆とに慚愧す 願往生
われと施主と衆生との請を受けたまへ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
慈悲平等にして衆生を度し 無量楽

◗589: 9 功徳を証明し罪障を除きたまへ 願往生
存亡の利益思議しがたし 無量楽
般舟三昧楽 願往生
形枯命断に仏前を期す 無量楽

◗589:13 供養荘厳如法ならざれども 願往生
衆生に歓喜の心を布施したまへ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
見聞するもの涙を流して同じく懴悔せよ 無量楽

◗590: 2 散華行道訖りぬ 願往生
諸仏縁に随ひて本国に還りたまふ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
あまねく香華を散じて心に仏を送りたてまつる 無量楽

◗590: 6 般舟三昧楽 願往生
願はくは仏の慈心はるかに護念したまへ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
同生あひ勧むことごとくすべからく来るべし 無量楽

◗590:10 【105】次に磬子を打ちて、敬礼常住三宝を唱へよ。

◗590:11  次に歎仏の呪願を唱へよ。

◗590:12  歎仏しをはりて、すなはち法によりて七礼敬を唱へ、随意を唱へよ。

◗590:13 【106】ひそかにおもんみれば、弥陀の妙果を号して無上涅槃といふ。

◗590:13 国土はすなはち広大にして荘厳遍満す。自然の衆宝なり。

◗590:14 観音大士左に侍して霊儀し、勢至慈尊すなはち右辺に供養す。三華独りはるかにして宝縵躯に臨む。珠は内に光を輝かし、天の声は外に繞れり。

◗591: 1 声聞・菩薩数塵沙に越え、化鳥・天同じく会に遍せざるはなし。他方の聖衆起りて雲の奔るがごとく、凡惑同じく生ずること盛りなる雨に過踰せり。十方より来るものみな仏辺に到りて、鼓楽いよいよ歌ひ、香華をもつて繞り讃ず。供養あまねく訖りて、処に随ひて遍歴親承す。

◗591: 5 あるいは百宝の池渠の会に入り、あるいは宝楼・宮殿の会に入り、あるいは宝林・宝樹の会に入り、あるいは虚空の会に上り、あるいは大衆無生法食の会に入る。かくのごとき清浄荘厳大会の聖衆等、同じく行じ、同じく坐し、同じく去り、同じく来る。一切の時中に証悟せざるはなし。

◗591: 8 西方極楽の種種の荘厳歎ずとも、よく尽すことなし。

◗591:10 【107】しかるにいま清信の弟子某甲等、そこばくの人、身はかりに四大を合してともに成ぜりと知り、命は浮危なること、たとへば厳霜の日に対へるに似たりと識る。十方の六道同じくこれ輪廻して無際なり。循々として愛波に沈みて苦海に沈む。

◗591:13 仏道人身得がたくしていますでに得たり。浄土聞きがたくしていますでに聞けり。信心発しがたくして、いますでに発せり。

◗591:14 仰ぎておもんみれば、今時の同生知識等、そこばくの人、おそらくは命は石火に同じ、久しく照らすこと期しがたし。識性は無常なり、逝くこと風燭に踰えたり。

◗592: 1 ゆゑに人々同じく願じてともに往生の業を結ぶ。おのおの弥陀経を誦することそこばく万遍、弥陀の名を念ずることそこばく万遍、

◗592: 3 また某の功徳等を造りてあまねくみな周備す。

◗592: 4 ゆゑに某の月日に院宇を荘厳し、道場を瑩飾し、僧尼を奉請して、宿宵行道す。また廚皇の百味・種々の甘香をもつて仏および僧徒にたてまつりて、同心に慶喜す。

◗592: 6 また願はくは持戒・誦経・念仏・行道し、およびもろもろの功徳等を造らん。

◗592: 7 当今の施主および同行の諸人、法界の衆生、

◗592: 8 いまより以去、天神影衛して万善扶持し、福命休強にしてもろもろの憂悩を離れ、六方の諸仏信心を護念し、浄土の弥陀慈心をもつて摂受したまへ。

◗592: 9 また願はくは観音聖衆駱駅として往来して、念々に遺るることなくはるかに加しあまねく備へて、春秋冬夏四大つねに安く、罪滅し福成じて、回して浄土に生ぜん。

◗592:12 また願はくは臨終に病なく正念堅強にして、聖衆来迎したまひ、華台あまねく集まり、弥陀光照し、菩薩身を扶け、化仏心を斉しくして、同声に等しく讃じ、台に乗じて一念すなはち西方に至り、仏の尊顔を見たてまつりて無生忍を悟らん。

◗592:15 仰ぎ願はくは往生の同行人等、かくのごとき善を得ん。

◗592:15 また願はくはこの功徳、
 大唐の皇帝を資益したてまつり、福基永く固く、聖化窮まることなからん。

◗593: 3 また願はくは、
 皇后慈心平等にして六宮を哀愍したまはん。

◗593: 4 また願はくは、
 皇太子、恩を承くること地よりも厚く、山岳の移ることなきに同じく、福命唐々として滄波に類して尽きたまふことなからん。

◗593: 6 また願はくは天曹・地府・閻羅・伺命、罪障を滅除して善名を注記せん。

◗593: 7 また願はくは修羅戦諍を息め、餓鬼飢虚を除き、地獄と畜生と倶時に解脱を得ん。

◗593: 8 竪には三界に通じ横には九居を括りて、等しく娑婆を出でて同じく浄土に帰せざるはなからん。

◗593:10 【108】下座七礼を唱へよ。

◗593:11  本師釈迦牟尼仏等の一切の三宝に南無したてまつる。われいま稽首して礼し、回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。

◗593:13  十方三世の尽虚空遍法界の微塵刹土のなかの一切の三宝に南無したてまつる。われいま稽首して礼し、回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。

◗593:15  西方極楽世界の阿弥陀仏に南無したてまつる。願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。

◗594: 2  西方極楽世界の観世音菩薩摩訶薩に南無したてまつる。願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。

◗594: 4  西方極楽世界の大勢至菩薩摩訶薩に南無したてまつる。願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。

◗594: 6  西方極楽世界のもろもろの菩薩摩訶薩、清浄大海衆に南無したてまつる。願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。

◗594: 8  あまねく四恩・三友・帝王・人王・師僧・父母・善知識・法界の衆生、三障を断除して、同じく阿弥陀仏国に往生することを得んがために、一切の賢聖を和上し、回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。

◗594:11 【109】唱へをはりてすなはち随意をいへ。

◗594:12  行者等にまうす。一切の時につねにこの法によりて、もつて恒の式となせ、知るべし。経を送りていづれの処にか致す。送りて摩尼宝殿のなかに至らしめん。経を送りていづれの処にか致す。送りて竜宮大蔵のなかに至らしめん。経を送りていづれの処にか致す。送りて西方石窟宝函のなかに至らしめん。

◗595:15 安楽行道転経願生浄土法事讃 巻下