ごぶんしょう 御文章 ¬御文¼ ¬勧章¼ ¬宝章¼ などともいう。 蓮如が門弟の要望に応えてきょうのために書いた手紙のことで、 真宗教義の要を平易に説いたもの。 親鸞御消息に示唆を得たものともいわれ、 どんな人にもりょうされるように心を配り、 文章を飾ることもなく、 俗語や俗諺までも駆使している。
 蓮如が最初に御文章を記したのは寛正2年 (1461) 頃とされる。 この後蓮如は生涯にわたって御文章を述作し、 その数は二百数十通に及ぶ。 年紀が明らかなものでは蓮如が吉崎で教化した文明3年 (1471) から文明7年 (1475) 前後のものがもっとも多く、 その精力的な教化がうかがえる。
 全般の内容をみれば、 当時の浄土異流や宗門内で盛んに行われていた善知識だのみ十劫秘事称名しょういんなどの異安心異義を批判しつつ、 信心正因称名報恩という真宗の正義を明らかにすることに心を砕いている。 とくに5帖目第11通に示される 「なにの分別もなく口にただ称名ばかりをとなへたらば、 極楽に往生すべきやうにおもへり」 という傾向に対して、 他力信心の重要性が説かれている。 また随所に、 他力回向の信心が 「たすけたまへと弥陀をたのむ」 と表現されることは、 上人の教学の特色である。
 本願寺9代実如は御文章を教化の中心におき、 ¬五帖御文章¼ をまとめた。 なお、 本願寺派で御文章と称するのは貞享元年 (1684) の本願寺14代寂如版本奥書にある 「文章」 との呼称が端緒とされる。