観経散善義 巻第四
*沙門*善導集記
◎正宗分 ○散善 ●総説
【1】 これより以下は、 次に*三輩*散善一門の義を解す。 この義のなかにつきてすなはちその二あり。
従↠此已下、次解↢三輩散善一門之義↡。就↢此義中↡、即有↢其二↡。
一には*三福を明かしてもつて正因となす。 二には*九品を明かしてもつて正行となす。
一明↢三福↡以為↢正因↡。二明↢九品↡以為↢正行↡。
・三福 ・世福
いま三福といふは、 第一の福はすなはちこれ世俗の*善根なり。 曾よりこのかたいまだ仏法を聞かず、 ただおのづから*孝養・*仁・義・礼・智・信を行ず。 ゆゑに世俗の善と名づく。
孝養 父母に孝行すること。
仁義礼智信 儒教に説く五種の倫理徳目。 五常のこと。
今言↢三福↡者、第一福、即是世俗善根。曾来未↠聞↢仏法↡、但自行↢孝養・仁・義・礼・智・信↡。故名↢世俗善↡也。
・三福 ・戒福
第二の福はこれを戒善と名づく。 この戒のなかにつきてすなはち人・天・声聞・菩薩等の戒あり。 そのなかにあるいは*具受・不具受あり、 あるいは*具持・不具持あり。 ただよく回向すればことごとく往生を得。
具受不具受 五戒のすべてを受けることと、 その一部分を受けること。
具持不具持 戒のすべてをたもつことと、 その一部分をたもつこと。
第二福者、此名↢戒善↡。就↢此戒中↡、即有↢人・天・声聞・菩薩等戒↡。其中或有↢具受・不具受↡、或有↢具持・不具持↡。但能迴向、尽得↢往生↡。
・三福 ・行福
▽第三の福を名づけて行善となす。 これはこれ*大乗心を発せる凡夫、 みづからよく行を行じ、 兼ねて有縁を勧めて悪を捨て心を持たしめて、 *回して浄土に生ず。
大乗心 大乗の菩提心。
第三福者、名為↢行善↡。此是発↢大乗心↡凡夫、自能行↠行、兼勧↢有縁↡、捨↠悪持↠心、迴生↢浄土↡。
またこの三福のなかにつきて、 あるいは一人ひとへに世福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人ひとへに戒福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人ひとへに行福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人上の二福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人下の二福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人つぶさに三福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは人等ありて、 三福ともに行ぜざるものをすなはち*十悪・*邪見・*闡提の人と名づく。
又就↢此三福之中↡、或有↧一人単行↢世福↡迴亦得↞生、或有↧一人単行↢戒福↡迴亦得↞生、或有↧一人単行↢行福↡迴亦得↞生。或有↧一人行↢上二福↡迴亦得↞生、或有↧一人行↢下二福↡迴亦得↞生、或有↧一人具行↢三福↡迴亦得↞生。或有↢人等↡、三福倶不↠行者、即名↢十悪・邪見・闡提人↡也。
九品といふは、 文に至りてまさに弁ずべし、 知るべし。 いま略して三福差別の義意を*料簡しをはりぬ。
言↢九品↡者、至↠文当↠弁。応↠知。今略料↢簡三福差別義意↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 ○文前料簡
【2】 十四に上輩観の行善の文前につきて、 総じて料簡してすなはち十一門となす。
十四就↢上輩観行善文前↡、総料簡即為↢十一門↡。
一には総じて*告命を明かす。
一者総明↢告命↡。
二にはその位を弁定す。
二者弁↢定其位↡。
三には総じて有縁の類を挙ぐ。
三者総挙↢有縁之類↡。
四には*三心を弁定してもつて正因となす。
四者弁↢定三心↡以為↢正因↡。
五にはまさしく*機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
機の堪と不堪とを簡ぶ 行者が行ずるに堪えるか堪えないかを区別するという意。
五者正明↠簡↣機堪与↢不堪↡。
▽六にはまさしく受法の不同を明かす。
六者正明↢受法不同↡。
▽七にはまさしく修業の時節に*延促異なることあることを明かす。
延促 長短。
七者正明↢修業時節延促有↟異。
▽八には所修の行を回して、 弥陀仏国に生ぜんと願ずることを明かす。
八者明↧迴↢所修行↡願↞生↢弥陀仏国↡。
▽九には命終の時に臨みて聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。
九者明↧臨↢命終時↡、聖来迎接不同、去時遅疾↥。
▽十にはかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
十者明↢到↠彼華開遅疾不同↡。
▽十一には華開以後の得益に異なることあることを明かす。
十一者明↢華開已後得益有↟異。
いまこの十一門の義は、 九品の文に約対するに、 一々の品のなかにつきてみなこの十一あり。 すなはち*一百番の義となす。 またこの十一門の義は、 上輩の文前につきて、 総じて料簡するもまた得たり。 あるいは中・下輩の文前につきて、 おのおの料簡するもまた得たり。 また*この義もし文をもつて来し勘ふれば、 すなはち具・不具あり。 *隠顕ありといへども、 もしその道理によらばことごとくみなあるべし。 この因縁のためのゆゑに、 すべからく広開して顕出すべし。 依行するものをして解りやすく識りやすからしめんと欲す。
一百番 九品に各十一門あるので正確には九十九門。 ここでは大数に約して一百番という。
この義… 十一門の義は、 九品それぞれの文についてみると、 すべてそろっているものと、 そろっていないものとがあるということ。
隠顕 文の表に顕れたものと裏に隠れたもの。 善導大師の隠顕は、 ともに真実の説意で、 親鸞聖人が 「化身土文類」 でいわれるような真仮 (真実・方便) を分別する意味ではない。
今此十一門義者、約↢対九品之文↡、就↢一一品中↡、皆有↢此十一↡。即為↢一百番義↡也。又此十一門義、就↢上輩文前↡総料簡亦得。或就↢中下輩文前↡各料簡亦得。又此義若以↠文来勘者、即有↢具・不具↡。雖↠有↢隠顕↡、若拠↢其道理↡、悉皆合↠有。為↢此因縁↡故、須↢広開顕出↡。欲↠令↢依行者易↠解易↟識也。
上来十一門の不同ありといへども、 広く上輩三品の義意を料簡しをはりぬ。
上来雖↠有↢十一門不同↡、広料↢簡上輩三品義意↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈
【3】 次下に▼先づ上品上生の位のなかにつきて、 また*先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその十二あり。
先づ挙げ… まず九品各位の名を挙げ、 次にその相を述べ、 終りに文を結ぶ。善導大師は九品のすべてにこの三科があるとする。
次下先就↢上品上生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其十二↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 1. 告命
▼一に 「▲仏告阿難」 より以下はすなはちならべて二の意を標す。
一従↢「仏告阿難」↡已下即双標↢二意↡。
▲一には告命を明かす。
一明↢告命↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 2. 位
◆二にはその位を弁定することを明かす。 これすなはち大乗を修学する上善の凡夫人なり。
二明↣弁↢定其位↡。此即修↢学大乗上善↡凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 3. 有縁
◆三に 「▲若有衆生」 より下 「即便往生▲」 に至るこのかたは、 まさしく総じて*有生の類を挙ぐることを明かす。 すなはちその四あり。
有生の類 往生を得る機類。
三従↢「若有衆生」↡下至↢「即便往生」↡已来、正明↣総挙↢有生之類↡。即有↢其四↡。
▲一には能信の人を明かす。
一明↢能信之人↡。
▲二には往生を求願することを明かす。
二明↣求↢願往生↡。
▲三には*発心の多少を明かす。
発心 至誠心・深心・回向発願心の三心をおこすこと。
三明↢発心多少↡。
▲四には得生の益を明かす。
四明↢得生之益↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 4. 三心
◆四に 「▲何等為三」 より下 「必生彼国▲」 に至るこのかたは、 まさしく三心を弁定してもつて正因となすことを明かす。 すなはちその二あり。
四従↢「何等為三」↡下至↢「必生彼国」↡已来、正明↧弁↢定三心↡以為↦正因↥。即有↢其二↡。
▼一には世尊、 機に随ひて益を顕したまふこと*意密にして知りがたし、 仏のみづから問ひみづから徴したまふにあらずは、 解を得るに由なきことを明かす。
意密 仏の意が奥深いこと。
一明↧世尊随↠機顕↠益意密難↠知、非↢仏自問自徴↡、無↞由↠得↠解。
▼二には如来 (釈尊) 還りてみづから前の三心の数を答へたまふことを明かす。
二明↣如来還自答↢前三心之数↡。
・至誠心釈
【4】 ▼¬経¼ (観経) にのたまはく、 「▲一には至誠心」 と。
¬経¼云。「一者至誠心」。
▼「至」 とは真なり、 「誠」 とは実なり。 一切衆生の身口意業所修の*解行、 *かならずすべからく真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。
かならず…得ざれ 親鸞聖人は 「かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐんことを明かさんと欲ふ。外に賢善精進の相を現ずることを得ざれ、 内に虚仮を懐いて」 (信文類訓) と読まれた。
「至」者真、「誠」者実。欲↠明↧一切衆生身口意業所修解行、必須↦真実心中作↥。
▼外に賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ。 *貪瞋・邪偽・奸詐百端にして、 悪性侵めがたく、 事*蛇蝎に同じきは、 三業を起すといへども名づけて雑毒の善となし、 また虚仮の行と名づく。 真実の業と名づけず。
貪瞋邪偽奸詐百端 むさぼり、 いかり、 よこしまな心、 いつわりの心が無数にあり、 絶えず起ること。
蛇蝎 へびやさそり。
*不↠得↣外現↢賢善精進之相↡。内懐↢虚仮↡、貪瞋邪偽、姧詐百端、悪性難↠侵、事同↢蛇蝎↡。雖↠起↢三業↡、名為↢雑毒之善↡、亦名↢虚仮之行↡、不↠名↢真実業↡也。
不得…相 返り点まま。 (親鸞聖人の訓みに同じ。)
▼もしかくのごとき安心・起行をなすものは、 たとひ身心を苦励して、 *日夜十二時急に*走り急になすこと、 *頭燃を救ふがごとくするものも、 すべて雑毒の善と名づく。 ▼この雑毒の行を回して、 かの仏の浄土に生ずることを求めんと欲せば、 これかならず不可なり。
日夜十二時 一日中。
走り 親鸞聖人は 「走め」 (信文類訓) と読まれた。
若作↢如↠此安心起行↡者、縦使苦↢励身心↡、日夜十二時、急走急作、如↠灸↢頭燃↡者、衆名↢雑毒之善↡。欲↧迴↢此雑毒之行↡、求↦生彼仏浄土↥者、此必不可也。
▼なにをもつてのゆゑに。 まさしくかの阿弥陀仏*因中に菩薩の行を行じたまひし時、 すなはち一念一刹那に至るまでも、 三業の所修、 みなこれ真実心のうちになしたまひ、 ▼*おほよそ*施為・趣求したまふところ、 またみな↓真実なるによりてなり。
因中 因位の時。 法蔵菩薩であった時。
おほよそ…真実なるに 親鸞聖人は 「おほよそ施したまふところ趣求をなす。 またみな真実なり」 (信文類訓) と読み、 如来の回施された真実をもちい (受領し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意味に転じられた。
施為趣求 衆生に施しを行う利他 (施為) と、 さとりを求める自利 (趣求) のこと。
何以故、正由↧彼阿弥陀仏因中行↢菩薩行↡時、乃至一念一刹那、三業所修皆是真実心中作↥。凡*所↠施為↢趣求↡、亦皆真実。
所施為趣求 返り点まま。 (親鸞聖人の訓みに同じ。)
・至誠心釈 ・二種真実
▼また↑真実に二種あり。 一には↓*自利真実、 二には*利他真実なり。
自利真実・利他真実 真実心をもって自利利他すること。 親鸞聖人は自利を自力、 利他を他力の意に転じられた。
又真実有↢二種↡。一者自利真実、二者利他真実。
▼↑自利真実といふは、 また二種あり。
言↢自利真実↡者、復有↢二種↡。
▼一には真実心のうちに、 自他の諸悪および*穢国等を*制捨して、 行住坐臥に一切の菩薩の諸悪を制捨したまふに同じく、 われもまたかくのごとくならんと想ふなり。
制捨 とどめ捨て去ること。
▼一者真実心中、制↢捨自他諸悪及穢国等↡、行住坐臥、想↧同↣一切菩薩制↢捨諸悪↡、我亦如↞是也。
▼二には真実心のうちに、 自他凡聖等の善を勤修す。
二者真実心中、勤↢修自他凡聖等善↡。▼
▼真実心のうちの口業に、 かの阿弥陀仏および*依正二報を讃歎す。 また真実心のうちの口業に、 *三界・*六道等の自他の依正二報の苦悪の事を*毀厭す。 また一切衆生の三業所為の善を讃歎す。 ▼もし善業にあらずは、 つつしみてこれを遠ざかれ、 また*随喜せざれ。
毀厭 厭いきらうこと。
▼真実心中口業、讃↢歎彼阿弥陀仏及依正二報↡。又真実心中口業、毀↢厭三界・六道等自他依正二報苦悪之事↡、亦讃↢歎一切衆生三業所為善↡。若非↢善業↡者、敬而遠↠之、亦不↢随喜↡也。
▼また真実心のうちの身業に、 合掌し礼敬して、 *四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を供養す。 また真実心のうちの身業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨す。
四事 供養に用いる四種の品。 飲食・衣服・臥具 (寝具)・湯薬のこと。
又真実心中身業、合掌礼敬、四事等供↢養彼阿弥陀仏及依正二報↡。又真実心中身業、軽↢慢厭↣捨此生死三界等自他依正二報↡。
▼また真実心のうちの意業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を思想し観察し憶念して、 目の前に現ずるがごとくす。 また真実心のうちの意業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽賤し厭捨す。
又真実心中意業、思↢想観↣察憶↤念彼阿弥陀仏及依正二報↡、如↠現↢目前↡。又真実心中意業、軽↢賤厭↣捨此生死三界等自他依正二報↡。▼
▼*不善の三業は、 かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 *またもし善の三業を起さば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。 *内外明闇を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく。
不善の…捨つべし 親鸞聖人は 「不善の三業はかならず真実心のうちに捨てたまへるを須ゐよ」 (信文類訓) と読まれた。
またもし善の…名づく 親鸞聖人は 「またもし善の三業を起さば、 かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐて、 内外明闇を簡ばず、 みな真実を須ゐるがゆゑに至誠心と名づく」 (信文類訓) と読まれた。
内外明闇 内心と外相、 智明と愚闇のこと。
不善三業、必須↢真実心中捨↡。又若起↢善三業↡者、必須↢真実心中作↡、不↠簡↢内外明闇↡、皆須↢真実↡故名↢至誠心↡。
・深心釈
【5】 「▲二には深心」 と。
「二者心」。
・深心釈 ・二種深信 (七深信)
「深心」 といふはすなはちこれ深く信ずる心なり。 また二種あり。
言↢「心」↡者、即是信之心也。亦有↢二種↡。
・深心釈 ・第一深心
▼一には決定して深く、 自身は現にこれ*罪悪生死の凡夫、 *曠劫よりこのかたつねに没しつねに流転して、 ▼*出離の縁あることなしと信ず。
罪悪生死の凡夫 常に罪悪を犯し、 生死の迷いの世界に
流転している凡夫。 →
補註3
出離の縁 迷いの世界を離れ出るてがかり。
一者決定信↢自身現是罪悪生死凡夫、曠劫已来、常没常流転、無↟有↢出離之縁↡。
・深心釈 ・第二深心
▼二には決定して深く、 かの阿弥陀仏の、 ▼四十八願は衆生を摂受したまふこと、 疑なく慮りなくかの願力に乗じてさだめて往生を得と信ず。
二者決定信↧彼阿弥陀仏四十八願、摂↢受衆生↡、無↠疑無↠慮、乗↢彼願力↡、定得↦往生↥。
・深心釈 ・第三深心
【6】 ▼また決定して深く、 釈迦仏、 この ¬観経¼ の*三福・*九品・*定散二善を説きて、 かの仏の依正二報を証讃して、 人をして欣慕せしめたまふと信ず。
又決定信↧釈迦仏説↢此¬観経¼三福九品・定散二善↡、証↢讃彼仏依正二報↡、使↦人欣慕↥。
・深心釈 ・第四深心
▼また決定して深く、 ¬弥陀経¼ のなかに、 十方恒沙の諸仏、 一切の凡夫決定して生ずることを得と証勧したまふと信ず。
又決定↧信¬弥陀経¼中、十方恒沙諸仏、証↢勧一切凡夫↡、決定得↞生。
・深心釈 ・第五深心
▼また深信とは、 仰ぎ願はくは、 一切の行者等、 一心にただ仏語を信じて身命を顧みず、 決定して依行し、 ▼仏の捨てしめたまふをばすなはち捨て、 ▼仏の行ぜしめたまふをばすなはち行じ、 ▼仏の去らしめたまふ処をばすなはち去る。 ▼これを仏教に随順し、 ▼仏意に随順すと名づけ、 ▼これを仏願に随順すと名づく。 ▼これを真の仏弟子と名づく。
又信者、仰願一切行者等、一心唯信↢仏語↡不↠顧↢身命↡、決定依↠行、仏遣↠捨者即捨、仏遣↠行者即行、仏遣↠去処即去。是名↧随↢順仏教↡、随↦順仏意↥、是名↣随↢順仏願↡、是名↢真仏弟子↡。
・深心釈 ・第六深心
▼また一切の行者ただよくこの ¬経¼ (観経) によりて深く信じて行ずるものは、 かならず衆生を誤たず。 なにをもつてのゆゑに。 仏はこれ大悲を満足したまへる人なるがゆゑなり、 *実語したまふがゆゑなり。 ▼仏を除きて以還は、 *智行いまだ満たず。 その*学地にありて、 *正習の二障ありていまだ除こらざるによりて、 *果願いまだ円かならず。 これらの*凡聖はたとひ諸仏の教意を*測量すれども、 いまだ決了することあたはず。 *平章することありといへども、 かならずすべからく仏証を請じて定となすべし。
実語 真実の言葉で説くこと。
智行 智慧と修行。
学地 まだ学ぶべきことの残っている修行中の地位。 これに対して、 煩悩を断じて学ぶべきもののない位を無学地という。
果願 仏果を求める願。
平章 道理を正しく明らかにすること。
又一切行者、但能依↢此経↡*↢信行↡者、必不↠誤↢衆生↡也。何以故、仏是満足大悲人故、実語故。除↠仏已還、智行未↠満、在↢其学地↡、由↧有↢正習二障↡未↞除、果願未↠円。此等凡聖、縦使測↢量諸仏教意↡、未↠能↢決了↡、雖↠有↢平章↡、要須↧請↢仏証↡為↞定也。
深信行者 返り点まま。 「行を深信する者は」。
▼もし仏意に称へばすなはち*印可して、 「*如是如是」 とのたまふ。 ▼もし仏意に可はざれば、 すなはち 「なんぢらが所説この義不如是」 とのたまふ。 ▼印せざるはすなはち*無記・無利・無益の語に同ず。 ▼仏の印可したまふは、 すなはち仏の正教に随順す。 ▼もし仏のあらゆる言説なれば、 ▼すなはちこれ正教・正義・正行・正解・正業・正智なり。
如是如是 そのとおりそのとおり。
無記 無意味、 無価値なこと。
若称↢仏意↡、即印可言↢如是如是↡。若不↠可↢仏意↡者、即言↢汝等所説是義不如是↡。不↠印者即同↢無記・無利・無益之語↡、仏印可者、即随↢順仏之正教↡。若仏所有言説、即是正教・正義・正行・正解・正業・正智。
▼もしは多、 もしは少、 すべて菩薩・人・天等に問ひて、 その是非を定めざれ。 ▼もし仏の所説なれば、 すなはちこれ*了教なり。 ▼菩薩等の説はことごとく不了教と名づく、 知るべし。
了教 真実を完全に説きあらわしている教え。 了義教に同じ。
若多若少、衆不↠問↢菩薩・人・天等↡、定↢其是非↡也。若仏所説即是了教、菩薩等説尽名↢不了教↡也。応↠知。
▼このゆゑにいまの時、 仰ぎて一切有縁の往生人等を勧む。 ただ深く仏語を信じて*専注奉行すべし。 菩薩等の*不相応の教を信用して、 もつて疑礙をなし、 惑を抱きてみづから迷ひ、 往生の大益を廃失すべからず。
専注奉行 心を専一にして行 (念仏) を修すること。
不相応の教 仏の意にかなわない教え。
是故今時、仰勧↢一切有縁往生人等↡、唯可↧信↢仏語↡、専注奉行↥、不↠可↧信↢用菩薩等不相応教↡以為↢疑礙↡、抱↠惑自迷廃↦失往生之大益↥也。
・深心釈 ・第七深心
【7】 ▼また深心は 「深き信なり」 といふは、 決定して自心を建立して、 教に順じて修行し、 永く疑錯を除きて、 一切の*別解・*別行・*異学・*異見・*異執のために、 退失し*傾動せられざるなり。
又心信者、決定建↢立自心↡、順↠教修行、永除↢疑錯↡、不↧為↢一切別解・別行・異学・異見・異執↡之所↦退失傾動↥也。
・深心釈 ・四重破人
▼問ひていはく、 凡夫は智浅く、 *惑障処すること深し。 もし*解行不同の人多く経論を引きて来りてあひ妨難し、 証して 「一切の罪障の凡夫往生を得ず」 といふに逢はば、 いかんがかの難を*対治して、 信心を成就して、 決定してただちに進みて、 *怯退を生ぜざらんや。
惑障 煩悩の障害。
対治 しりぞけること。
怯退 おそれて退くこと。
問曰。凡夫智浅、惑障処。若逢↧解行不同人、多引↢経論↡来、相妨難証、云↦一切罪障凡夫、不↞得↢往生↡者、云何対↢治彼難↡成↢就信心↡、決定直進不↠生↢怯退↡也。
・深心釈 ・四重破人 ・解行不同人
▼答へていはく、 もし人ありて多く経論を引きて証して 「生ぜず」 といはば、 行者すなはち報へていへ。 「なんぢ経論をもつて来し証して ª生ぜずº といふといへども、 わが意のごときは決定してなんぢが破を受けず。 なにをもつてのゆゑに。 しかるにわれまた、 これかのもろもろの経論を信ぜざるにはあらず。 ことごとくみな仰信す。 ▼しかるに仏かの経を説きたまふ時は、 *処別・時別・*対機別・利益別なり。 またかの経を説きたまふ時は、 すなはち ¬観経¼・¬弥陀経¼ 等を説きたまふ時にあらず。 しかるに仏の説教は*機に備ふ、 時また不同なり。 かれすなはち通じて人・天・菩薩の解行を説く。 いま ¬観経¼ の定散二善を説きたまふことは、 ただ韋提および仏滅後の*五濁・*五苦等の一切凡夫のために、 証して ª生ずることを得º とのたまふ。 この因縁のために、 われいま一心にこの仏教によりて決定して奉行す。 たとひなんぢら百千万億ありて ª生ぜずº といふとも、 ただわが▼往生の信心を増長し成就せん」 と。
処別 場所が異なっていること。
対機別 教えの対象となる人の資質や能力が異なっていること。
機に備ふ 教えの対象となる人の資質や能力にあわせる。
答曰。若有↠人多引↢経論証↡云↠不↠生者、行者即報云。仁者雖↧将↢経論↡来証噵↞不↠生、如↢我意↡者、決定不↠受↢汝破↡。何以故、然我亦不↢是不↟信↢彼諸経論↡、尽皆仰信。然仏説↢彼経↡時、処別・時別・対機別・利益別。又説↢彼経↡時、即非↧説↢¬観経¼・¬弥陀経¼等↡時↥。然仏説教備↠機、時亦不同。彼即通説↢人・天・菩薩之解行↡。今説↢¬観経¼定散二善↡、唯為↢韋提及仏滅後五濁・五苦等一切凡夫↡、証言↠得↠生。為↢此因縁↡、我今一心依↢此仏教↡、決定奉行。縦使汝等百千万億、噵↠不↠生者、唯増↢長成↣就我往生信心↡也。
・深心釈 ・四重破人 ・地前菩薩
▼また行者さらに向かひて説きていへ。 「なんぢよく聴け、 われいまなんぢがためにさらに決定の信相を説かん。 たとひ*地前の菩薩・羅漢・*辟支等、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に*遍満して、 みな経論を引きて証して ª生ぜずº といふとも、 われまたいまだ一念の疑心を起さず。 ただわが▼清浄の信心を増長し成就せん。 なにをもつてのゆゑに。 仏語は決定成就の了義にして、 一切のために破壊せられざるによるがゆゑなり」 と。
地前の菩薩 初地の位以前の菩薩。 菩薩五十二位の修道階位のうち
十地の階位以前の
十信・
十住・
十行・
十回向の四十位を指していう。 →
菩薩
又行者更向説言。仁者善聴、我今為↠汝更説↢決定信相↡。縦使地前菩薩・羅漢・辟支等、若一若多、乃至徧↢満十方↡、皆引↢経論証↡言↠不↠生者、我亦未↠起↢一念疑心↡、唯増↢長成↣就我清浄信心↡。何以故、由↫仏語決定成就了義、不↪為↢一切↡所↩破壊↨故。
・深心釈 ・四重破人 ・地上菩薩
▼また行者よく聴け。 たとひ*初地以上十地以来、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 異口同音にみないはく、 「釈迦仏、 弥陀を指讃し、 三界・六道を*毀呰し、 衆生を勧励し、 ª専心に念仏し、 および余善を修すれば、 この一身を畢へて後必定してかの国に生ずº といふは、 これかならず虚妄なり、 依信すべからず」 と。 われこれらの所説を聞くといへども、 また一念の疑心を生ぜず。 ただわが決定▼上上の信心を増長し成就せん。 なにをもつてのゆゑに。 ▼すなはち仏語は真実*決了の義なるによるがゆゑなり。 仏はこれ実知・実解・実見・実証にして、 これ疑惑心中の語にあらざるがゆゑなり。 また一切の菩薩の異見・異解のために破壊せられず。 もし実にこれ菩薩ならば、 すべて仏教に違せじ。
初地以上十地以来 第一
歓喜地から第十
法雲地までの十地の菩薩。 →
菩薩
決了 決定了解の略。 真実をはっきりと了解して不確かなことが少しもないこと。
又行者善聴。縦使初地已上十地已来、若一若多、乃至徧↢満十方↡、異口同音、皆云↧釈迦仏指↢讃弥陀↡、毀↢呰三界・六道↡、勧↢励衆生↡、専心念仏、及修↢余善↡、畢↢此一身↡後、必定生↢彼国↡者、此必虚妄、不↞可↢依信↡也。我雖↠聞↢此等所説↡、亦不↠生↢一念疑心↡、唯増↢長成↣就我決定上上信心↡。何以故、乃由↢仏語真実決了義↡故、仏是実知・実解・実見・実証、非↢是疑惑心中語↡故。又不↧為↢一切菩薩異見・異解↡之所↦破壊↥。若実是菩薩者、衆不↠違↢仏教↡也。
・深心釈 ・四重破人 ・化仏報仏
▼またこの事を置く、 行者まさに知るべし。 たとひ化仏・*報仏、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 おのおの光を輝かし、 舌を吐きてあまねく十方に覆ひて、 一々に説きてのたまはく、 「釈迦の所説に、 あひ讃めて一切の凡夫を勧発して、 ª専心に念仏し、 および余善を修して、 *回願すればかの浄土に生ずることを得º といふは、 これはこれ虚妄なり、 さだめてこの事なし」 と。 われこれらの諸仏の所説を聞くといへども、 ▼*畢竟じて、 一念疑退の心を起してかの仏国に生ずることを得ざることを畏れず。 なにをもつてのゆゑに。 一仏は一切仏なり、 あらゆる知見・解行・証悟・果位・大悲、 等同にして少しき差別もなし。 このゆゑに一仏の制したまふところは、 すなはち一切仏同じく制したまふ。 前仏、 殺生・*十悪等の罪を制断したまひ、 畢竟じて犯さず行ぜざるをば、 すなはち*十善・*十行にして*六度の義に随順すと名づけたまふがごとき、 もし後仏、 出世したまふことあらんに、 あに前の十善を改めて十悪を行ぜしめたまふべけんや。
回願 浄土を願生すること。
十行 ここでは十善を修し行うことを指して十行という。 →
十善
又置↢此事↡、行者当↠知。縦使化仏・報仏、若一若多、乃至徧↢満十方↡、各各輝↠光吐↠舌、徧覆↢十方↡、一一説言↪釈迦所説相讃、勧↧発一切凡夫、専心念仏及修↢余善↡、迴願得↞生↢彼浄土↡者、此是虚妄、定無↩此事↨也。我雖↠聞↢此等諸仏所説↡、畢竟不↧起↢一念疑退之心↡畏↞不↠得↠生↢彼仏国↡也。何以故、一仏一切仏、所有知見・解行・証悟・果位・大悲、等同無↢少差別↡。是故一仏所↠制、即一切仏同制。*如↢似前仏制断↡殺生十悪等罪、畢竟不↠犯不↠行者、即名↢十善・十行↡、随↢順六度之義↡。若有↢後仏↡出↠世、豈可↧改↢前十善↡令↞行↢十悪↡也。
如似~制断…罪 返り点まま。 「~制断の如似き…罪」。
・深心釈 ・就人立信
▼この道理をもつて*推験するに、 あきらかに知りぬ、 ▼諸仏の言行はあひ違失せざることを。 たとひ▼釈迦一切の凡夫を指勧して、 「▼この一身を尽すまで専念専修すれば、 捨命以後さだめてかの国に生ず」 とのたまはば、 ▼すなはち十方の諸仏ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまはん。 なにをもつてのゆゑに。 *同体の大悲なるがゆゑなり。 ▼一仏の*所化は、 すなはちこれ一切仏の化なり。 一切仏の化は、 すなはちこれ一仏の所化なり。
推験 おしはかること。
所化 教化されるところ。
以↢此道理↡推験、明知、諸仏言行不↢相違失↡。縦令釈迦指↢勧一切凡夫↡、尽↢此一身↡専念専修、捨命已後定生↢彼国↡者、即十方諸仏悉皆同讃同勧同証。何以故、同体大悲故。一仏所化即是一切仏化、一切仏化即是一仏所化。
▼すなはち ¬弥陀経¼ のなかに説きたまふ。 ▼釈迦極楽の種々の荘厳を讃歎し、 ▲また 「一切の凡夫、 一日七日、 一心にもつぱら弥陀の名号を念ずれば、 さだめて往生を得」 (意) と勧めたまひ、 次下の文に (同・意)、 「▲十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦よく五濁悪時、 悪世界、 悪衆生、 悪見、 悪煩悩、 悪邪、 無信の盛りなる時において、 弥陀の名号を指讃して、 ª衆生称念すればかならず往生を得º と勧励したまふを讃じたまふ」 とのたまふは、 すなはちその証なり。
即¬弥陀経¼中説、釈迦讃↢歎極楽種種荘厳↡、又勧↢一切凡夫↡、一日七日一心専↢念弥陀名号↡、定得↢往生↡。次下文云。十方各有↢恒河沙等諸仏↡、同讃↧釈迦能於↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪・無信盛時↡、指↢讃弥陀名号↡、*勧↢励衆生↡、称念必得↦往生↥。即其証也。
勧励衆生 返り点まま。 「衆生を勧励して」。
▼また十方の仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざることを恐畏れて、 すなはちともに同心同時に、 おのおの*舌相を出してあまねく*三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 「▼なんぢら衆生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 *時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るまで、 一心にもつぱら弥陀の名号を念ずれば、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なし」 と。
舌相を出して 仏の説くところが
虚妄でないという
証誠の意を示す
。
時節の久近 時間の長短。
又十方仏等、恐↢畏衆生不↟信↢釈迦一仏所説↡、即共同心・同時、各出↢舌相↡、徧覆↢三千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、皆応↠信↢是釈迦所説・所讃・所証↡。一切凡夫、不↠問↢罪福多少、時節久近↡、但能上尽↢百年↡、下至↢一日・七日↡、一心専↢念弥陀名号↡、定得↢往生↡、必無↠疑也。
▼このゆゑに一仏の所説は、 すなはち一切仏同じくその事を*証誠したまふ。 これを*人に就きて信を立つと名づく。
人 ここでは勧める人、 釈迦・諸仏を指す。 一説には四重の破人 (念仏の教えを否定する四種の人) を指すという。
是故一仏所説、即一切仏同証↢誠其事↡也。此名↢就↠人立↟信也。
・深心釈 ・就行立信
【8】 ▼次に▼行に就きて信を立つといふは、 しかるに行に二種あり。 一には↓正行、 二には↓雑行なり。
次就↠行立↠信者、然行有↢二種↡。一者正行、二者雑行。
・深心釈 ・就行立信 ・正行
↑▼*正行といふは、 もつぱら*往生経の行によりて行ずるは、 これを正行と名づく。 何者かこれなるや。 一心にもつぱらこの ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼ 等を読誦し、 一心に専注してかの国の*二報荘厳を思想し観察し憶念し、 もし礼するにはすなはち一心にもつぱらかの仏を礼し、 もし口に称するにはすなはち一心にもつぱらかの仏を称し、 もし讃歎供養するにはすなはち一心にもつぱら讃歎供養す、 これを名づけて正となす。
往生経 ¬大経¼ ¬観経¼ ¬小経¼ を指す。
言↢正行↡者、専依↢往生経行↡行者、是名↢正行↡。何者是也。一心専読↢誦此¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼等↡、一心専↢注思↣想観↤察憶↯念彼国二報荘厳↡、若礼即一心専礼↢彼仏↡、若口称即一心専称↢彼仏↡、若讃歎供養即一心専讃歎供養、是名為↠正。
▼またこの正のなかにつきてまた二種あり。
又就↢此正中↡、復有↢二種↡。
・深心釈 ・就行立信 ・正行 ・正業
▼一には▼一心にもつぱら弥陀の名号を念じて、 *行住坐臥に▼時節の久近を問はず念々に捨てざるは、 これを*正定の業と名づく、 かの仏の願に順ずるがゆゑなり。
一者一心専↢念弥陀名号↡、行住坐臥、不↠問↢時節久近↡、念念不↠捨者、是名↢正定之業↡。順↢彼仏願↡故。
・深心釈 ・就行立信 ・正行 ・助業
▼もし*礼誦等によるをすなはち名づけて*助業となす。
礼誦等 五正行のうちの称名以外の
行業。
読誦・
観察・
礼拝・
讃嘆供養の助業をいう。 →
助業
若依↢礼誦等↡、即名為↢助業↡。
・深心釈 ・就行立信 ・雑行
▼この正助二行を除きて以外の自余の諸善はことごとく▼↑*雑行と名づく。 もし前の正助二行を修すれば、 心つねに〔阿弥陀仏に〕親近して憶念断えず、 名づけて*無間となす。 もし後の雑行を行ずれば、 すなはち心つねに*間断す、 *回向して生ずることを得べしといへども、 すべて疎雑の行と名づく。
間断 とだえること。
除↢此正助二行↡、已外自余諸善、悉名↢雑行↡。若修↢前正助二行↡、心常親近、憶念不↠断、名為↢無間↡也。若行↢後雑行↡、即心常間断。雖↠可↢迴向得↟生、衆名↢疎雑之行↡也。
▼ゆゑに深心と名づく。
故名↢「心」↡。
・回向発願心釈
【9】 ▲「三には回向発願心」 と。
「三者迴向発願心」。
▼「回向発願心」 といふは、 ▼過去および今生の*身口意業所修の*世・出世の善根と、 および他の一切*凡聖の身口意業所修の世・出世の善根を*随喜せると、 この自他の所修の善根をもつて、 ことごとくみな真実の深信の心中に*回向して、 かの国に生ぜんと願ず。 ゆゑに回向発願心と名づく。
世出世の善根 世間の善 (
世福) と出世間の善 (
戒福・
行福) のこと。 →
三福
言↢「迴向発願心」↡者、過去及以今生身口意業所↠修世・出世善根、及随↢喜他一切凡聖身口意業所↠修世・出世善根↡、以↢此自他所修善根↡、悉皆真実信心中迴向願↠生↢彼国↡。故名↢「迴向発願心」↡也。
▼また回向発願して生ぜんと願ずるものは、 *かならずすべからく決定真実心のうちに回向し願じて、 *得生の想をなすべし。 ▼この心深信せること金剛のごとくなるによりて、 一切の*異見・*異学・*別解・*別行の人等のために動乱破壊せられず。 ただこれ決定して一心に捉りて、 正直に進み、 かの人の語を聞きて、 すなはち進退あり、 心に*怯弱を生ずることを得ざれ。 *回顧すれば*道より落ちて、 すなはち往生の大益を失するなり。
かならず…想をなすべし 親鸞聖人は 「かならず決定して真実心のうちに回向したまへる願を須ゐて得生の想をなせ」 (信文類訓) と読まれた。
得生の想 かならず浄土に往生できるという想い。
道より落ちて 白道より退転して。 「道に落ちて」 と読めば、 悪童に落ちるという意になる。
又迴向発願願生者、必須↢決定真実心中迴向願↡作↢得生想↡。此心信由↠若↢金剛↡、不↧為↢一切異見・異学・別解・別行人等↡之所↦動乱破壊↥。唯是決定、一心*投正直進、*不↠得↠聞↢彼人語↡。即有↢進退心↡、生↢怯弱↡迴顧、落↠道即失↢往生之大益↡也。
投 他書では 「捉」。
不得聞彼人語即有進退心生怯弱 返り点まま。 「彼の人の語を聞くことを得ざれ。 すなわち進退の心ありて怯弱を生じ」。
・回向発願心釈 ・解行不同人
【10】▼問ひていはく、 もし*解行不同の邪雑人等ありて、 来りてあひ惑乱し、 あるいは種々の疑難を説きて、 「往生を得ず」 といひ、 あるいはいはく、 「なんぢら衆生、 曠劫よりこのかたおよび今生の身口意業に、 一切凡聖の身の上においてつぶさに▼*十悪・*五逆・*四重・*謗法・*闡提・破戒・破見等の罪を造りて、 いまだ除尽することあたはず。 しかるにこれらの罪は三界の悪道に*繋属す。 いかんぞ一生の修福の念仏をもつてすなはちかの無漏無生の国に入りて、 永く不退の位を証悟することを得んや」 と。
繋属 つなぎとめること。
問曰。若有↢解行不同邪雑人等↡、来相惑乱、或説↢種種疑難↡、噵↠不↠得↢往生↡、或云、汝等衆生、曠劫已来及以今生身口意業、於↢一切凡聖身上↡、具造↢十悪・五逆・四重・謗法・闡提・破戒・破見等罪↡、未↠能↢除尽↡。然此等之罪繋↢属三界悪道↡、云何一生修福念仏、即入↢彼無漏・無生之国↡、永得↣証↢悟不退位↡也。
▼答へていはく、 諸仏の教行、 数*塵沙に越えたり。 *稟識の機縁、 情に随ひて一にあらず。 たとへば世間の人の眼に見るべく信ずべきがごときは、 明よく闇を破し、 空よく有を含み、 地よく*載養し、 水よく*生潤し、 火よく*成壊するがごときなり。 かくのごとき等の事をことごとく*待対の法と名づく。 すなはち目に見るべし、 千差万別なり。
稟識 心のはたらきを有するもの。 有情、 衆生に同じ。
載養 草木などを載せて育成すること。
生潤 うるおし育てること。
成壊 ものを熟成させたり、 ほろぼしたりすること。
待対の法 相対してはたらくもの。
答曰。諸仏教行、数越↢塵沙↡。稟↠識機縁、随↠情非↠一。譬如↢世間人、眼可↠見可↟信者、如↢明能破↠闇、空能含↠有、地能載養、水能生潤、火能成壊↡。如↢此等↡事、悉名↢待対之法↡。即目可↠見、千差万別。
▼いかにいはんや仏法不思議の力、 あに種々の益なからんや。 ▼随ひて一門を出づれば、 すなはち一煩悩の門を出づ。 ▼随ひて一門に入れば、 すなはち一解脱智慧の門に入る。 これがために縁に随ひて行を起して、 おのおの解脱を求めよ。 ▼なんぢ、 なにをもつてかすなはち*有縁の要行にあらざるをもつてわれを障惑するや。 ▼しかるにわが所愛は、 すなはちこれわが有縁の行なり。 すなはちなんぢが所求にあらず。 ▼なんぢが所愛は、 すなはちこれなんぢが有縁の行なり。 またわが所求にあらず。 このゆゑにおのおの*所楽に随ひてその行を修すれば、 かならず疾く解脱を得。
有縁の要行 自分の素質能力にかなった肝要な方法。
何況仏法不思議之力、豈無↢種種益↡也。随出↢一門↡者、即出↢一煩悩門↡也。随入↢一門↡者、即入↢一解脱智慧門↡也。為↠此随↠縁起↠行、各求↢解脱↡。汝何以乃将↠非↢有縁之要行↡、障↢惑於我↡。然我之所愛即是我有縁之行、即非↢汝所求↡。汝之所愛即是汝有縁之行、亦非↢我所求↡。是故各随↢所楽↡而修↢其行↡者、必疾得↢解脱↡也。
▼行者まさに知るべし。 もし*解を学せんと欲せば、 *凡より*聖に至り、 すなはち仏果に至るまで、 一切礙なくみな学することを得ん。 ▼もし行を学せんと欲せば、 かならず有縁の法によれ。 少しき功労を用ゐるに多く益を得ればなり。
解 学解のこと。 仏教の学問的理解。
凡・聖 凡夫、 聖者。
行者当↠知。若欲↠学↠解、従↠凡至↠聖、乃至仏果、一切無↠礙、皆得↠学也。若欲↠学↠行者、必藉↢有縁之法↡。少用↢功労↡、多得↠益也。
・回向発願心釈 ・二河譬
【11】▼また一切の往生人等にまうさく、 いまさらに行者のために▼一の譬喩を説きて、 信心を守護して、 もつて外邪異見の難を防がん。 何者かこれなるや。
又白↢一切往生人等↡、今更為↢行者↡、説↢一譬喩↡、守↢護信心↡、以防↢外邪異見之難↡。何者是也。
▲たとへば、 人ありて西に向かひて百千の里を行かんと欲するがごとし。 忽然として*中路に二の河あるを見る。 ↓一にはこれ火の河、 南にあり。 二にはこれ水の河、 北にあり。 二河おのおの闊さ百歩、 おのおの深くして底なし。 南北辺なし。 ↓まさしく水火の中間に一の白道あり。 闊さ四五寸ばかりなるべし。 ▼この道↓東の岸より↓西の岸に至るに、 また長さ百歩、 ↓その水の波浪交はり過ぎて道を湿し、 ↓その火炎また来りて道を焼く。 ▼水火あひ交はりて、 つねにして休息することなし。 この人すでに↓*空曠のはるかなる処に至るに、 さらに人物なし。 ↓多く群賊・悪獣ありて、 この人の単独なるを見て、 競ひ来りて殺さんと欲す。
中路 途中。
空曠のはるかなる処 なにもなくてどこまでも広がっている場所。
譬如↧有↠人欲↢向↠西行↡、百千之里。忽然中路見有↢二河↡。一是火河在↠南、二是水河在↠北。二河各闊百歩、各無↠底、南北無↠辺。正水火中間有↢一白道↡、可↢闊四五寸許↡。此道従↢東岸↡至↢西岸↡、亦長百歩。其水波浪交過↠道、其火燄亦来焼↠道。水火相交、常無↢休息↡。此人既至↢空曠迥処↡、更無↢人物↡。多有↢羣賊・悪獣↡、見↢此人単独↡、競来欲↠殺↢此人↡。
▲この人死を怖れてただちに走りて西に向かふに、 忽然としてこの大河を見て、 すなはちみづから念言す。 「この河は南北に*辺畔を見ず。 中間に一の白道を見るも、 きはめてこれ狭小なり。 二の岸あひ去ること近しといへども、 なにによりてか行くべき。 今日さだめて死すること疑はず。 まさしく到り回らんと欲すれば、 群賊・悪獣*漸々に来り逼む。 まさしく南北に避り走らんと欲すれば、 悪獣・毒虫競ひ来りてわれに向かふ。 まさしく西に向かひて道を尋ねて去かんと欲すれば、 またおそらくはこの水火の二河に堕せん」 と。
辺畔 ほとり。 際限。
怖↠死直走向↠西、忽然見↢此大河↡、即自念言。此河南北不↠見↢辺畔↡、中間見↢一白道↡、極是狭小。二岸相去雖↠近、何由可↠行。今日定死不↠疑。正欲↢到迴↡、羣賊・悪獣漸漸来逼。正欲↢南北避走↡、悪獣・毒蟲競来向↠我。正欲↢向↠西尋↠道而去↡、復恐堕↢此水火二河↡。
▼時に当りて*惶怖することまたいふべからず。 すなはちみづから思念す。 「われいま回らばまた死せん。 住まらばまた死せん。 去かばまた死せん。 一種として死を勉れずは、 ↓われ*むしろこの道を尋ねて前に向かひて去かん。 すでにこの道あり。 かならず度るべし」 と。
むしろ 原漢文は 「寧」 の字。 親鸞聖人は 「やすく」 (信文類訓) と読まれた。
当↠時惶怖、不↢復可↟言。即自思念。我今迴亦死、住亦死、去亦死。一種不↠勉↠死者、我寧尋↢此道↡、向↠前而去。既有↢此道↡、必応↢可度↡。
▼この念をなす時、 ↓東の岸にたちまち人の勧むる声を聞く。 「なんぢ、 ただ決定してこの道を尋ねて行け、 かならず死の難なからん。 もし住まらば、 すなはち死せん」 と。 ↓また▼西の岸の上に人ありて喚ばひていはく、 「なんぢ一心正念にしてただちに来れ。 われよくなんぢを護らん。 すべて水火の難に堕することを畏れざれ」 と。 この人すでにここに遣はし、 かしこに喚ばふを聞きて、 すなはちみづから身心を正当にして、 決定して道を尋ねてただちに進みて、 *疑怯退心を生ぜず。
疑怯退心 疑ったり、 恐れたりして、 しりごみする心。
作↢此念↡時、東岸忽聞↢人勧声↡。仁者但決定尋↢此道↡行、必無↢死難↡。若住即死。又西岸上有↠人喚言。汝一心正念直来、我能護↠汝。衆不↠畏↠堕↢於水火之難↡。此人既聞↢此遣彼喚↡、即自正当↢身心↡、決定尋↠道直進、不↠生↢疑怯退心↡、
▼↓あるいは行くこと一分二分するに、 東の岸に群賊等喚ばひていはく、 「なんぢ、 回り来れ。 この道嶮悪にして過ぐることを得ず。 かならず死すること疑はず。 われらすべて悪心をもつてあひ向かふことなし」 と。 この人喚ばふ声を聞くといへどもまた*回顧せず。 一心にただちに進みて道を念じて行けば、 ↓須臾にすなはち西の岸に到りて、 永くもろもろの難を離る。 善友あひ見えて▼慶楽すること已むことなし。
或行一分二分、東岸羣賊等喚言。仁者迴来、此道嶮悪、不↠得↠過。必死不↠疑。我等衆無↢悪心相向↡。此人雖↠聞↢喚声↡、亦不↢迴顧↡、一心直進念↠道而行、須臾即到↢西岸↡、永離↢諸難↡。善友相見慶楽無↞已。
▼これはこれ喩へなり。
此是喩也。
・回向発願心釈 ・二河譬合法
▼次に喩へを合せば、 「↑東の岸」 といふは、 すなはちこの*娑婆の*火宅に喩ふ。
次合↠喩者、言↢東岸↡者、即喩↢此娑婆之火宅↡也。
▼「↑西の岸」 といふは、 すなはち極楽の宝国に喩ふ。
言↢西岸↡者、即喩↢極楽宝国↡也。
▼「↑群賊・悪獣詐り親しむ」 といふは、 すなはち衆生の*六根・*六識・*六塵・*五陰・*四大に喩ふ。
言↢羣賊・悪獣詐親↡者、即喩↢衆生六根・六識・六塵・五陰・四大↡也。
▼「↑無人*空迥の沢」 といふは、 すなはち▼つねに悪友に随ひて真の*善知識に値はざるに喩ふ。
空迥の沢 広々とした野原のこと。
言↢無人空迥沢↡者、即喩↧常随↢悪友↡不↞値↢真善知識↡也。
▼「↑水火二河」 といふは、 すなはち衆生の*貪愛は水のごとく、 *瞋憎は火のごとくなるに喩ふ。
瞋憎 いかりと憎しみ。
言↢水火二河↡者、即喩↢衆生貪愛如↠水、瞋憎如↟火也。
▼「↑中間の白道四五寸」 といふは、 すなはち▼衆生の▼貪瞋煩悩のなかに、 ▼よく清浄の願往生心を生ずるに喩ふ。 すなはち貪瞋強きによるがゆゑに、 すなはち水火のごとしと喩ふ。 善心*微なるがゆゑに、 白道のごとしと喩ふ。
微 かすか。
言↢中間白道四五寸↡者、即喩↣衆生貪瞋煩悩中、能生↢清浄願往生心↡也。乃由↢貪瞋強↡故、即喩↠如↢水火↡。善心微故、喩↠如↢白道↡。
▼また 「↑水波つねに道を湿す」 といふは、 すなはち*愛心つねに起りて、 よく善心を染汚するに喩ふ。
愛心 愛し執着する心。
又水波常↠道者、即喩↣愛心常起能染↢汚善心↡也。
▼また 「↑火炎つねに道を焼く」 といふは、 すなはち*瞋嫌の心よく功徳の法財を焼くに喩ふ。
瞋嫌 いかりきらう心。
又火燄常焼↠道者、即喩↣瞋嫌之心能焼↢功徳之法財↡也。
▼「↑人道の上を行きてただちに西に向かふ」 といふは、 すなはちもろもろの行業を回してただちに西方に向かふに喩ふ。
言↧人行↢道上↡直向↞西者、即喩↧迴↢諸行業↡直向↦西方↥也。
▼「↑東の岸に人の声の勧め遣はすを聞きて、 道を尋ねてただちに西に進む」 といふは、 すなはち釈迦すでに滅したまひて、 後の人見たてまつらざれども、 なほ教法ありて尋ぬべきに喩ふ。 すなはちこれを声のごとしと喩ふ。
言↧東岸聞↢人声勧遣↡、尋↠道直西進↥者、即喩↧釈迦已滅後人不↠見、由有↢教法↡可↞尋。即喩↢之如↟声也。
▼「↑あるいは行くこと一分二分するに群賊等喚ばひ回す」 といふは、 すなはち別解・別行・▼悪見人等*妄りに*見解を説きてたがひにあひ惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失するに喩ふ。
妄りに…喩ふ 親鸞聖人は 「妄りに見解をもってたがひにあひ惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失すと説くに喩ふるなり」 (信文類訓) と読まれた。
見解 自説。
言↢或行一分二分、羣賊等喚迴↡者、即喩↣別解・別行・悪見人等、妄説↢見解迭相惑乱、及自造↠罪退失↡也。
▼「↑西の岸の上に人ありて喚ばふ」 といふは、 すなはち弥陀の願意に喩ふ。
言↢西岸上有↠人喚↡者、即喩↢弥陀願意↡也。
▼「↑須臾に西の岸に到りて善友あひ見えて▼喜ぶ」 といふは、 すなはち衆生久しく生死に沈みて、 *曠劫より輪廻し、 迷倒して*みづから纏ひて、 解脱するに由なし。 ▼仰ぎて釈迦*発遣して指して西方に向かはしめたまふことを蒙り、 ▼また弥陀悲心をもつて*招喚したまふによりて、 ▼いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の意に信順して、 水火の二河を顧みず、 ▼念々に遺るることなく、 かの願力の道に乗じて、 捨命以後かの国に生ずることを得て、 仏とあひ見えて慶喜することなんぞ極まらんといふに喩ふ。
みづから纏ひて 自らの業に縛りつけられて。 迷っての意。
招喚 阿弥陀仏が衆生に、 浄土へ来れと招きよぶこと。 発遣の対。
言↧須臾到↢西岸↡、善友相見喜↥者、即喩↧衆生久沈↢生死↡、曠劫淪迴、迷倒自纏、無↠由↢解脱↡。仰蒙↣釈迦発遣指向↢西方↡、又藉↢弥陀悲心招喚↡、今信↢順二尊之意↡、不↠顧↢水火二河↡、念念無↠遺、乗↢彼願力之道↡、捨命已後、得↠生↢彼国↡、与↠仏相見慶喜何極↥也。
【12】▼また一切の行者、 *行住坐臥に三業の所修、 昼夜時節を問ふことなく、 ▼つねにこの解をなしつねにこの想をなすがゆゑに、 回向発願心と名づく。
又一切行者、行住坐臥、三業所修、無↠問↢昼夜時節↡、常作↢此解↡、常作↢此想↡故、名↢「迴向発願心」↡。
▼また 「回向」 といふは、 かの国に生じをはりて、 還りて大悲を起して、 *生死に回入して衆生を教化するをまた回向と名づく。
生死に回入して 生死輪廻の迷いの世界にもどって。
又言↢「迴向」↡者、生↢彼国↡已、還起↢大悲↡、囘↢入生死↡教↢化衆生↡、亦名↢「迴向」↡也。
・三心結釈
【13】▲三心すでに具すれば、 行として成ぜざるはなし。 願行すでに成じて、 もし生ぜずは、 この処あることなからん。 またこの三心はまた通じて定善の義を摂す、 知るべし。
三心既具、無↢行不↟成。願行既成、若不↠生者、無↠有↢是処↡也。又此三心亦通↢摂定善之義↡。応↠知。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 5. 機
【14】▲五に 「▲復有三種衆生」 より以下は、 まさしく機のよく法を奉け、 教によりて修行するに堪へたるを*簡ぶことを明かす。
簡ぶ 区別する。
五従↢「復有三種衆生」↡已下、正明↧*簡↢機堪能↡、奉↠法依↠教修行↥。
簡機堪能 返り点まま。 「機の堪能を簡び」。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 6. 受法
▲六に 「▲何等為三」 より下 「六念▲」 に至るこのかたは、 まさしく受法の不同を明かす。 すなはちその三あり。
六従↢「何等為三」↡下至↢「六念」↡已来、正明↢受法不同↡。即有↢其三↡。
▲一には慈心不殺を明かす。
一明↢慈心不↟殺。
しかるに殺業に多種あり。 あるいは口殺あり、 あるいは身殺あり、 あるいは心殺あり。
然殺業有↢多種↡。或有↢口殺↡、或有↢身殺↡、或有↢心殺↡。
「口殺」 といふは、 処分許可するを名づけて口殺となす。 「身殺」 といふは、 身手等を動かし指授するを名づけて身殺となす。 「心殺」 といふは、 方便を思念して*計校する等を名づけて心殺となす。
言↢口殺↡者、処分許可、名為↢口殺↡。言↢身殺↡者、動↢身手等↡指授、名為↢身殺↡。言↢心殺↡者、思↢念方便↡計校等、名為↢心殺↡。
もし殺業を論ぜば*四生を簡ばず、 みなよく罪を招きて浄土に生ずることを障ふ。 ただ一切の生命において慈心を起すは、 すなはちこれ一切衆生に寿命安楽を施す。
若論↢殺業↡、不↠簡↢四生↡、皆能招↠罪、障↠生↢浄土↡。但於↢一切生命↡起↢於慈心↡者、即是施↢一切衆生寿命安楽↡。
またこれ最上勝妙の戒なり。 これすなはち上の初福 (世福) の第三の句に 「▲慈心不殺」 といへるに合す。
亦是最上勝玅戒也。此即合↣上初福第三句、云↢「慈心不殺」↡也。
すなはち止・行の二善あり。 みづから殺せざるがゆゑに止善と名づく。 他を教へて殺せざらしむるがゆゑに行善と名づく。 自他はじめて断ずるを止善と名づけ、 *畢竟じて永く除くを行善と名づく。
即有↢止行二善↡。自不↠殺故名↢止善↡、教↠他不↠殺故名↢行善↡。自他初断名↢止善↡、畢竟永除名↢行善↡。
止・*持の二善ありといへども、 総じて*慈下の行を結成す。
持 行善のこと。
慈下の行 下を慈しむ行為。
雖↠有↢止・持二善↡、総結↢成慈下行↡也。
▲「具諸戒行」 といふは、 もし人・天・二乗の器に約すればすなはち*小戒と名づけ、 もし*大心大行の人に約すれば、 すなはち菩薩戒と名づく。
小戒 小乗の戒。
大心大行 大乗の心、 大乗の行。
言↢「具諸戒行」↡者、若約↢人天・二乗之器↡、即名↢小戒↡。若約↢大心大行之人↡、即名↢菩薩戒↡。
この戒もし位をもつて約すれば、 これ上輩三位のものに当れり、 すなはち菩薩戒と名づく。 まさしく人位定まれるによるがゆゑに自然に転成す。 すなはち▲上の第二福 (戒福) の戒分の善根に合す。
此戒若以↠位約者、当↢此上輩三位者↡、即名↢菩薩戒↡。正由↢人位定↡故、自然転成。即合↢上第二福戒分善根↡也。
▲二には読誦大乗を明かす。
二明↢「読誦大乗」↡者、
これ衆生の*性習不同にして、 法を執ることおのおの異なることを明かす。
性習 習慣によってできた性質。
此明↢衆生性習不同、執↠法各異↡。
前の第一の人は、 ただ慈を修し、 戒を持つをもつて能となす。 次に第二の人は、 ただ読誦大乗をもつて是となす。 しかるに戒はすなはちよく*五乗・*三仏の機を持ち、 法はすなはち*三賢・*十地万行の智慧を*薫成す。 もし徳用をもつて来し比校せば、 おのおの一の能あり。
三仏 法身・報身・応身のこと。
薫成 香気を移すように、 他のものにその性質を移し付けること。
前第一人、但用↢修↠慈持↟戒為↠能。次第二人、唯将↢読誦大乗↡為↠是。然戒即能持↢五乗・三仏之機↡。法即熏↢成三賢・十地万行之智慧↡。若以↢徳用↡来比校者、各有↢一能↡。
すなはち上の第三福 (行福) の第三の句に 「▲読誦大乗」 といへるに合す。
即合↣上第三福第三句云↢「読誦大乗」↡也。
▲三には*修行六念を明かす。
三明↢「修行六念」↡者、
いはゆる仏・法・僧を念じ、 戒・捨・天等を念ず。 これまた通じて上の第三福の大乗の意義に合す。
所謂念↢仏・法・僧↡、念↢戒・捨・天等↡。此亦通合↢上第三福大乗之意義↡也。
「念仏」 といふは、 すなはち▼もつぱら阿弥陀仏の口業の功徳、 身業の功徳、 意業の功徳を念ず。 一切の諸仏もまたかくのごとし。
言↢念仏↡者即専念↢阿弥陀仏口業功徳・身業功徳・意業功徳↡。一切諸仏亦如↠是。
また一心にもつぱら諸仏所証の法ならびにもろもろの眷属の菩薩僧を念じ、 また諸仏の戒を念じ、 および過去の諸仏、 現在の菩薩等の、 なしがたきをよくなし、 捨てがたきをよく捨て、 内に捨て外に捨て、 内外に捨つるを念ず。 これらの菩薩ただ法を念ぜんと欲して*身財を惜しまず。 行者等すでにこの事を念知せば、 すなはちすべからくつねに仰ぎて*前賢・後聖を学し、 身命を捨つる意をなすべし。
身財 身命と財産。
前賢後聖 前世 (過去) の賢者や後世 (未来) の尊い聖者・菩薩たち。
又一心専念↢諸仏所証之法、并諸眷属菩薩僧↡、又念↢諸仏之戒↡、及念↢過去諸仏、現在菩薩等、難↠作能作、難↠捨能捨、内捨外捨、内外捨↡。此等菩薩但欲↠念↠法不↠惜↢身財↡。行者等既念↢知此事↡、即須↧常作仰学↦前賢・後聖捨↢身命↡意↥也。
また 「念天」 とはすなはちこれ*最後身十地の菩薩なり。 これらは難行の行すでに過ぎ、 *三祇の劫すでに超え、 万徳の行すでに成じ、 *潅頂の位すでに証せり。
三祇の劫 三大阿僧祇劫のこと。 菩薩が修行して仏になるまでに経なければならないというきわめて長い時間をいう。
潅頂の位 菩薩の第十地の位。 菩薩が第十地に入るとき、 諸仏がその頂に甘露 (香水) を潅いで法王の職を授けるしるしとするところから潅頂という。
又念天者、即是最後身十地之菩薩。此等難行之行已過、三祇之劫已超、万徳之行已成、潅頂之位已証。
行者等すでに念知しをはりなば、 すなはちみづから思念すべし。 ▼わが身は*無際よりこのかた、 他とともに同時に願を発して悪を断じ、 菩薩の道を行じき。 他はことごとく身命を惜しまず。 道を行じ位を進みて、 因円かに果熟して、 聖を証せるもの*大地微塵に踰えたり。 しかるにわれら凡夫、 すなはち今日に至るまで、 *虚然として流浪す。 煩悩悪障は転々してますます多く、 *福慧は微微たること、 *重昏を対して明鏡に臨むがごとし。 たちまちにこの事を*思忖するに、 心驚きて悲歎するに勝へざるものをや。
無際 無始。 その始めもわからない遠い過去。
大地微塵 大地を微塵 (物質の最小単位) にくだいたほどの数という意。
虚然 むなしくうつろであること。
重昏 暗闇。
思忖 思いはかること。
行者等既念知已、即自思念。我身無際已来、共↠他同時発↠願断↠悪、行↢菩薩道↡。他尽不↠惜↢身命↡。行↠道進↠位、因円果熟証↠聖者、踰↢於大地微塵↡。然我等凡夫、乃至今日虚然流浪。煩悩悪障転転増多、福慧微微、若↧対↢重昏↡之臨↦明鏡↥也。忽思↢忖此事↡、不↠勝↢心驚悲歎↡者哉。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 7. 回向
▲七に 「▲回向発願」 より以下は、 まさしくおのおの前の所修の業を回して、 所求の処に向かふことを明かす。
七従↢「迴向発願」↡已下、正明↧各各回↢前所修之業↡、向↦所求処↥。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 8. 時節
▲八に 「▲具此功徳」 より以下は、 まさしく修行の*時節の延促を明かす。
時節の延促 時間の長短。
八従↢「具此功徳」↡已下、正明↢修行時節延促↡。
上*一形を尽し、 ▼下一日・一時・一念等に至る。 あるいは一念・十念より一時・一日・一形に至る。 大意は、 一たび*発心して以後、 ▼誓ひてこの生を畢るまで退転あることなし。 ただ浄土をもつて期となす。
上尽↢一形↡、下至↢一日・一時・一念等↡。或従↢一念・十念↡、至↢一時・一日・一形↡。大意者、一発心已後、誓畢↢此生↡無↠有↢退転↡。唯以↢浄土↡為↠期。
また 「具此功徳」 といふは、 あるいは一人にして*上の二を具し、 あるいは一人にして*下の二を具し、 あるいは一人にして三種ことごとく具す。 あるいは人ありて三種分なきを、 名づけて*人の皮を着たる畜生となす、 人と名づくるにあらず。
上の二 慈心不殺と読誦大乗。
下の二 読誦大乗と修行六念。
又言↢「具此功徳」↡者、或一人具↢上二↡、或一人具↢下二↡、或一人三種尽具。或有↠人三種無↠分者、名作↧著↢人皮↡畜生↥、非↠名↠人也。
また具三・不具三を問はず、 回すればことごとく往生を得、 知るべし。
又不↠問↢具三・不具三↡、迴尽得↢往生↡。応↠知。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 9. 去時
▲九に 「▲生彼国時」 より下 「往生彼国▲」 に至るこのかたは、 まさしく命終の時に臨みて聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその十一あり。
九従↢「生彼国時」↡下至↢「往生彼国」↡已来、正明↧臨↢命終時↡、聖来迎接不同、去時遅疾↥。即有↢其十一↡。
▲一には*所帰の国を標定することを明かす。
所帰の国を… 帰するところの浄土を定めること。
一明↣標↢定所帰之国↡。
▲二にはかさねてその行を顕して、 決定*精勤のものを指し出すことを明かす。 またこれ功徳の強弱を*校量す。
二明↧重顕↢其行↡指↦出決定精勤者↥。亦是校↢量功徳強弱↡。
▲三には弥陀*化主の身みづから来赴したまふことを明かす。
化主 教化の主。
三明↢弥陀化主身、自来赴↡。
▲四には 「観音」 より以下は、 さらに無数の大衆等みな弥陀に従ひて行者を来迎することを顕すことを明かす。
四明↫「観音」已下、更顕↪無数大衆等、皆従↢弥陀↡来↩迎行者↨。
▲五には宝宮、 衆に随ふことを明かす。
五明↢宝宮随↟衆。
▲六にはかさねて観音・勢至ともに金台を執りて、 行者の前に至ることを明かす。
六明↧重観音・勢志共執↢金台↡、至↦行者前↥。
▲七には弥陀光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
七明↣弥陀放↠光、照↢行者之身↡。
▲八には仏すでに光を舒べて照らし、 およびすなはち化仏等と同時に手を接したまふことを明かす。
八明↧仏既舒↠光照、及即与↢化仏等↡同時接↞手。
▲九にはすでに接して台に昇らしめて、 観音等同声に行者の心を讃勧したまふことを明かす。
九明↣既接昇↠台、観音等同声讃↢勧行者之心↡。
▲十にはみづから見れば台に乗じ、 仏に従ふことを明かす。
十明↢自見乗↠台従↟仏。
▲十一にはまさしく*去時の遅疾を明かす。
十一正明↢去時遅疾↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 10. 華開
▲十に 「▲生彼国」 より以下は、 まさしく金台かしこに到りて、 さらに華合の障なきことを明かす。
十従↢「生彼国」↡已下、正明↣金台到↠彼、更無↢華合之障↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 11. 得益
▲十一に 「▲見仏色身」 より下 「*陀羅尼門▲」 に至るこのかたは、 まさしく金台到りて後の得益の不同を明かす。 すなはちその三あり。
陀羅尼門 陀羅尼は梵語ダーラニー (dhāraņī) の音写。 総持、 能持などと漢訳する。 種々の善法を保持し、 悪法をおこさせない力のこと。 門は法門、 教えのこと。
十一従↢「見仏色身」↡下至↢「陀羅尼門」↡已来、正明↢金台到後、得↠益不↟同。即有↢其三↡。
▲一にははじめて妙法を聞きてすなはち*無生を悟る。
一者初聞↢妙法↡、即悟↢無生↡。
▲二には須臾に*歴事して次第に授記せらる。
二者須臾歴事↡、次第授記。
▲三には*本国・他方にしてさらに*聞持の二益を証す。
本国他方 本国は極楽、 他方は極楽以外の世界を指す。
聞持の二益 法を聞く利益と法をたもつ利益。
三者本国他方、更証↢聞持二益↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 1 上品上生釈 12. 総結
▲十二に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
十二従↢「是名」↡已下、総結。
上来十二句の不同ありといへども、 広く上品上生の義を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢十二句不同↡、広解↢上品上生義↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈
【15】次に上品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
次就↢上品中生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其八↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 1. 位
▲一に 「▲上品中生者」 より以下は、 総じて位の名を挙ぐ。 すなはちこれ大乗次善の凡夫人なり。
一従↢「上品中生者」↡已下、総挙↢位名↡。即是大乗次善凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 2. 回向
▲二に 「▲不必受持」 より下 「生彼国▲」 に至るこのかたは、 まさしく*△第六・△第七・△第八門のなかの、 所修の業を*回して、 西方を定め指すことを明かす。 すなはちその四あり。
第六第七第八門 十一門の第六、 七、 八門。
二従↢「不必受持」↡下至↢「生彼国」↡已来、正明↧第六・第七・第八門中、迴↢所修業↡定↦指西方↥。即有↢其四↡。
▲一には受法不定にして、 あるいは読誦を得、 読誦を得ざることを明かす。
一明↧受法不定、或得↢読誦↡、不↞得↢読誦↡。
▲二にはよく大乗の*空の義を解することを明かす。
二明↣善解↢大乗空義↡。
あるいは諸法は一切みな空にして生死・無為もまた空なり。 *凡聖・明闇もまた空なり。 *世間の*六道、 出世間の*三賢・*十聖等、 もしその*体性に望むれば畢竟じて不二なりと聴聞す。 この説を聞くといへども、 その心坦然として疑滞を生ぜず。
凡聖明闇 凡夫と聖者、 智者と愚者のこと。
体性 本性。
或聴↧聞諸法一切皆空、生死無為亦空、凡聖明闇亦空。世間六道、出世間三賢・十聖等、若望↢其体性↡畢竟不二↥。雖↠聞↢此説↡、其心坦然不↠生↢疑滞↡也。
▲三には深く*世・出世の苦楽二種の因果を信じ、 これらの因果およびもろもろの道理に*疑謗を生ぜざることを明かす。
世出世 世間 (世俗) と出世間 (世間を超えた仏法の世界)。
疑謗 疑いそしること。
三明↧信↢世・出世苦楽二種因果↡、此等因果及諸道理不↞生↢疑謗↡。
もし疑謗を生ずれば、 すなはち福行を成ぜず。 世間の果報すらなほ得べからず、 いかにいはんや浄土に生ずることを得んや。 これすなはち第三福 (行福) の*▲第二・▲第三の句に合す。
第二第三の句 第二句は 「深信因果」、 第三句は 「読誦大乗」 を指す。
若生↢疑謗↡、即不↠成↢福行↡、世間果報、尚不↠可↠得。何況得↠生↢浄土↡。此即合↢第三福第二・第三句↡也。
▲四には前の所業を*回して、 *所帰を標指することを明かす。
所帰 西方の浄土のこと。
四明↧回↢前所業↡、標↦指所帰↥。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 3. 迎接
▲三に 「▲行此行者」 より下 「迎接汝▲」 に至るこのかたは、 まさしく弥陀、 もろもろの聖衆と台を持して来応したまふことを明かす。 すなはちその五あり。
三従↢「行此行者」↡下至↢「迎接汝」↡已来、正明↧弥陀与↢諸聖衆↡、持↠台来応↥。即有↢其五↡。
▲一には行者の*命延久しからざることを明かす。
一明↢行者命延不↟久。
▲二には弥陀、 衆とみづから来りたまふことを明かす。
二明↢弥陀与↠衆自来↡。
▲三には侍者台を持して行者の前に至ることを明かす。
三明↣侍者持↠台至↢行者前↡。
▲四には仏、 聖衆と同声に讃歎して、〔行者の〕*本所修の業を述べたまふことを明かす。
本所修の業 往生する以前に修めた善根功徳。
四明↧仏与↢聖衆↡、同声讃歎、述↦本所修之業↥。
▲五には仏、 行者の疑を懐くことを恐れたまふがゆゑに、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 とのたまふことを明かす。
五明↧仏恐↢行者懐↟疑故、言↦我来迎↞汝。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 4. 去時
▲四に 「▲与千化仏」 より下 「七宝池中▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 衆聖の授手と、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその五あり。
四従↢「与千化仏」↡下至↢「七宝池中」↡已来、正明↢第九門中、衆聖授手、去時遅疾↡。即有↢其五↡。
▲一には弥陀、 千の化仏と同時に授手したまふことを明かす。
一明↧弥陀与↢千化仏↡、同時授↞手。
▲二には行者すでに授手を蒙りてすなはちみづから身を見れば、 すでに身紫金の台に坐することを明かす。
二明↧行者既蒙↢授手↡、即自見↠身、已身坐↦紫金之台↥。
▲三にはすでにみづから台に坐することを見て、 合掌して仰ぎて弥陀等の衆を讃ずることを明かす。
三明↣既自見↠坐↠台、合掌仰讃↢弥陀等衆↡。
▲四にはまさしく去時の遅疾を明かす。
四明↢正去時遅疾↡。
▲五にはかしこに到りて宝池のうちに止住することを明かす。
五明↣到↠彼止↢住宝池之内↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 5. 華開
▲五に 「▲此紫金台」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五従↢「此紫金台」↡已下、正明↢第十門中、到↠彼華開時節不同↡。
行強きによるがゆゑに、 上上はすなはち▲金剛台を得。 行劣なるによるがゆゑに、 上中はすなはち紫金台を得。〔浄土に〕生じて宝池にありて宿を経て開くるがごとし。
由↢行強↡故、上上即得↢金剛台↡。由↢行劣↡故、上中即得↢紫金台↡。生在↢宝池↡、逕↠宿如↠開也。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 6. 得益
▲六に 「▲仏及菩薩倶時放光」 より下 「得不退転▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその五あり。
六従↢「仏及菩薩倶時放光」↡下至↢「得不退転」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益不同↡。即有↢其五↡。
▲一には仏光、 身を照らすことを明かす。
一明↢仏光照↟身。
▲二には行者すでに体を照らすことを蒙りて、 目すなはち開明なることを明かす。
二明↢行者既蒙↠照↠体、目即開明↡。
▲三には人中にして習へるところ、 かしこに到りて衆声の彰すところとなり、 またその法を聞くことを明かす。
三明↣人中所習、到↠彼衆声所↠彰還聞↢其法↡。
▲四にはすでに眼開けて法を聞くことを得て、 すなはち金台より下り、 親しく仏辺に到りて、 歌揚して徳を讃ずることを明かす。
四明↧既得↢眼開聞↟法、即下↢金台↡、親到↢仏辺↡、歌揚讃↞徳。
▲五には時を経ること七日にして、 すなはち*無生を得ることを明かす。
五明↣逕↠時七日、即得↢無生↡、
「七日」 といふは、 おそらくはこの間の七日なり、 かの国の七日を指すにあらず。 この間に七日を経るは、 かの処にはすなはちこれ一念須臾のあひだなり、 知るべし。
言↢「七日」↡者、恐此間七日、不↠指↢彼国七日↡也。此間逕↢於七日↡者、彼処即是一念須臾間也。応↠知。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 7. 他方得益
▲七に 「▲応時即能飛至十方」 より下 「現前授記▲」 に至るこのかたは、 まさしく*他方の得益を明かす。 すなはちその五あり。
他方の得益 極楽以外の世界で得る利益のこと。
七従↢「応時即能飛至十方」↡下至↢「現前授記」↡已来、正明↢他方得益↡。即有↢其五↡。
▲一には身十方に至ることを明かす。
一明↣身至↢十方↡。
▲二には一々に諸仏を*歴供することを明かす。
歴供 歴事供養の略。 十方諸仏のもとを次々とめぐって供養すること。
二明↣一一歴供↢諸仏↡。
▲三には多くの三昧を修することを明かす。
三明↠修↢多三昧↡。
▲四には*延時の得忍を明かす。
延時の得忍 後の時に無生法忍を得ることを指す。 経の文には、 「一小劫を経て無生忍を得」 とある。
四明↢延時得忍↡。
▲五には一々の仏辺にして現に*授記を蒙ることを明かす。
五明↣一一仏辺現蒙↢授記↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品中生釈 8. 総結
▲八に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
八従↢「是名」↡已下、総結。
上来八句の不同ありといへども、 広く上品中生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢八句不同↡、広解↢上品中生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 3 上品下生釈
【16】次に上品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
次就↢上品下生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其八↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 1. 位
▲一に 「▲上品下生者」 より以下は、 総じて位の名を挙ぐ。 すなはちこれ大乗下善の凡夫人なり。
一従↢「上品下生者」↡已下、総挙↢位名↡。即是大乗下善凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 2. 受法
▲二に 「▲亦信因果」 より下 「無上道心▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第六門のなかの、 受法の不同を明かす。 すなはちその三あり。
二従↢「亦信因果」↡下至↢「無上道心」↡已来、正明↢第六門中受法不同↡、即有↢其三↡。
▲一には所信の因果不定なることを明かす。
一明↢所信因果不定↡。
あるいは信じ信ぜず。 ゆゑに名づけて 「亦」 となす。 あるいはまた△前の〔上品中生の〕深信に同じかるべし。
或信不↠信、故名為↠亦。或可↣亦同↢前信↡也。
また信ずといへども深からず。 善心しばしば退し、 悪法しばしば起る。 これすなはち深く苦楽の因果を信ぜざるによりてなり。 もし深く生死の苦を信ずるものは、 *罪業*畢竟じてかさねて犯さず。 もし深く浄土無為の楽を信ずるものは、 善心一たび発りて永く退失することなし。
又雖↠信不↠、善心数退、悪法数起。此乃由↠不↣信↢苦楽因果↡也。若信↢生死苦↡者、罪業畢竟不↢重犯↡。若信↢浄土無為楽↡者、善心一発永無↢退失↡也。
▲二には信*間断すといへども、 一切の大乗において*疑謗することを得ざることを明かす。 もし疑謗を起さば、 たとひ千仏身を繞りたまふとも、 救ふべきに由なし。
間断 とだえること。
疑謗 疑いそしること。
二明↧信雖↢間断↡、於↢一切大乗↡、不↞得↢疑謗↡。若起↢疑謗↡者、縦使千仏繞↠身、無↠由↠可↠救也。
▲三には以上の諸善また功なきに似たることを明かす。 ただ一念を発して苦を厭ひ、 諸仏の境界に生じ、 すみやかに菩薩の大悲の願行を満てて、 生死に還り入りて、 あまねく衆生を度せんと楽ふ。 ゆゑに*発菩提心と名づく。 この義△第三福 (行福) のなかにすでに明かしをはりぬ。
三明↣已上諸善似↢亦無↟功。唯発↢一念↡厭↠苦、楽↧生↢諸仏境界↡、速満↢菩薩大悲願行↡、還↢入生死↡普度↦衆生↥故、名↢発菩提心↡也。此義第三福中已明竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 3. 回向
▲三に 「▲以此功徳」 より以下は、 まさしく△第八門のなかの、 前の正行を*回して、 所求の処に向かふことを明かす。
三従↢「以此功徳」↡已下、正明↧第八門中回↢前正行↡向↦所求処↥。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 4. 去時
▲四に 「▲行者命欲終時」 より下 「七宝池中▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 臨終に聖来りて*迎接したまふと、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその九あり。
四従↢「行者命欲終時」↡下至↢「七宝池中」↡已来、正明↢第九門中、臨終聖来迎接、去時遅疾↡。即有↢其九↡。
▲一には*命延久しからざることを明かす。
一明↢命延不↟久。
▲二には弥陀、 もろもろの聖衆と*金華を持して来応したまふことを明かす。
二明↧弥陀与↢諸聖衆↡、持↢金華↡来応↥。
▲三には化仏同時に授手したまふことを明かす。
三明↢化仏同時授↟手。
▲四には聖衆同声に等しく讃ずることを明かす。
四明↢聖衆同声等讃↡。
▲五には行者の罪滅するがゆゑに 「清浄」 といひ、〔行者の〕*本所修を述ぶるがゆゑに 「発無上道心」 といふことを明かす。
本所修 本所修の業のこと。 往生する以前に修めた善根功徳。
五明↧行者罪滅故云↢清浄↡、述↢本所修↡故云↦発無上道心↥。
▲六には行者*霊儀を覩るといへども、 疑心ありて往生を得ざることを恐る。 このゆゑに聖衆同声に告げて、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 といふことを明かす。
霊儀 (仏聖者来迎の) 尊いありさま。
六明↧行者雖↠覩↢霊儀↡、疑心恐↠不↠得↢往生↡。是故聖衆同声告言↦我来迎↞汝。
▲七にはすでに告げを蒙り、 およびすなはち自身を見るに、 すでに金華の上に坐して、 *篭々として合することを明かす。
篭々 華の中に含まれているさま。
七明↧既蒙↠告、及即見↢自身↡、已坐↢金華之上↡、篭篭而合↥。
▲八には仏身の後に随ひて、 一念にすなはち生ずることを明かす。
八明↧随↢仏身後↡、一念即生↥。
▲九にはかしこに到りて宝池のなかにあることを明かす。
九明↣到↠彼在↢宝池中↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 5. 華開
▲五に 「▲一日一夜」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五従↢「一日一夜」↡已下、正明↢第十門中、到↠彼華開時節不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 6. 得益
▲六に 「▲七日之中」 より下 「皆演妙法▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。
六従↢「七日之中」↡下至↢「皆演妙法」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 7. 他方得益
▲七に 「▲遊歴十方」 より下 「住歓喜地▲」 に至るこのかたは、 まさしく*他方の得益を明かす、 また*後益と名づく。
他方の得益 極楽以外の世界で得る利益のこと。
後益 往生後に得る利益。
七従↢「遊歴十方」↡下至↢「住歓喜地」↡已来、正明↢他方得益↡、亦名↢後益↡也。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 2 上品下生釈 8. 総結
▲八に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
八従↢「是名」↡已下、総結。
上来八句の不同ありといへども、 広く上品下生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢八句不同↡、広解↢上品下生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●上輩観 ○上輩総讃
【17】 ¬讃¼ にいはく (礼讃)、
「▲上輩は*上行上根の人なり。 浄土に生ずることを求めて*貪瞋を断ず。
上行上根の人 高度の行を修める根機のすぐれた人。 →
根機
行の差別につきて三品を分つ。 *五門相続して*三因を助く。
一日七日もつぱら精進して、 *畢命に台に乗じて*六塵を出づ。
畢命に 命おわる時に。
慶ばしきかな、 逢ひがたくしていま遇ふことを得たり。 永く*無為法性の身を証せん」 と。
無為法性の身 すべての限定を超えたさとりの身。
讃云。上輩上行上根人。求↠生↢浄土↡断↢貪・瞋↡。就↢行差別↡分↢三品↡、五門相続助↢三因↡。一日七日専精進、畢命乗↠台出↢六塵↡。慶哉難↠逢今得↠遇、永証↢無為法性身↡。
上来三位の不同ありといへども、 総じて上輩一門の義を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢三位不同↡、総解↢上輩一門之義↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 ○文前料簡
【18】十五に中輩観の行善の文前につきて、 総じて*料簡してすなはち十一門となす。
十五就↢中輩観行善文前↡、総料簡即為↢十一門↡。
一には総じて*告命を明かす。
一者総明↢告命↡。
二にはまさしくその位を弁定することを明かす。
二者正明↣弁↢定其位↡。
三にはまさしく総じて有縁の類を挙ぐることを明かす。
三者正明↣総挙↢有縁之類↡。
四にはまさしく三心を弁定してもつて正因となすことを明かす。
四者正明↧弁↢定三心↡以為↦正因↥。
▽五にはまさしく*機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
機の堪と不堪とを簡ぶ 行者が行ずるに堪えるか堪えないかを区別するという意。
五者正明↠簡↣機堪与↢不堪↡。
▽六にはまさしく受法の不同を明かす。
六者正明↢受法不同↡。
▽七にはまさしく修業の時節に*延促異なることあることを明かす。
延促 長短。
七者正明↢修業時節延促有↟異。
▽八にはまさしく所修の行を*回して、 弥陀仏国に生ぜんと願ずることを明かす。
八者正明↧迴↢所修行↡、願↞生↢弥陀仏国↡。
▽九にはまさしく命終の時に臨みて聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。
九者正明↧臨↢命終時↡、聖来迎接不同、去時遅疾↥。
▽十にはまさしくかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
十者正明↢到↠彼華開遅疾不同↡。
▽十一にはまさしく華開以後の得益に異なることあることを明かす。
十一者正明↢華開已後得益有↟異。
上来十一門の不同ありといへども、 広く中輩三品を料簡しをはりぬ。
上来雖↠有↢十一門不同↡、広料↢簡中輩三品↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈
【19】次に中品上生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
次就↢中品上生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其八↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 1. 告命
▲一に 「▲仏告阿難」 より以下は、 総じて告命を明かす。
一従↢「仏告阿難」↡已下、総明↢告命↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 2. 位
▲二に 「▲中品上生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれ小乗根性の上善の凡夫人なり。
二従↢「中品上生者」↡、正明↣弁↢定其位↡。即是小乗根性、上善凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 3. 受法
▲三に 「▲若有衆生」 より下 「無衆過患▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 受法の不同を明かす。 すなはちその四あり。
三従↢「若有衆生」↡下至↢「無衆過患」↡已来、正明↢第五・第六門中受法不同↡。即有↢其四↡。
▲一には*機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
機の堪と不堪とを簡ぶ 行者が行ずるに堪えるか堪えないかを区別するという意。
一明↠簡↣機堪与↢不堪↡。
▲二には小乗の*斎戒等を受持することを明かす。
二明↣受↢持小乗斎戒等↡。
▲三には*小戒の力微にして五逆の罪を消さざることを明かす。
小戒 小乗の戒。
三明↧小戒力微、不↞消↢五逆之罪↡。
▲四には小戒等を持ちて犯すことあることを得ずといへども、 もし*余あらば、 つねにすべからく*改悔してかならず清浄ならしむべきことを明かす。
余 他の罪や過ち。
改悔 悔いあらためること。
四明↫雖↧持↢小戒↡等不↞得↠有↠犯、設有↢余↡、恒須↪改悔必令↩清浄↨。
これすなはち▲上の*第二の戒善の福に合す。 しかるに修戒の時は、 あるいはこれ終身、 あるいは一年・一月・一日・一夜・一時等なり。 この時また不定なり。 大意はみな*畢命を期となして毀犯することを得ず。
畢命を期となして 命がおわる時を限りとして。
此即合↢上第二戒善之福↡也。然修戒時、或是終身、或一年・一月・一日・一夜・一時等。此時亦不定。大意皆畢命為↠期、不↠得↢毀犯↡也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 4. 回向
▲四に 「▲以此善根回向」 より以下は、 まさしく△第八門のなかの、 所修の業を*回して所求の処に向かふことを明かす。
四従↢「以此善根迴向」↡已下、正明↧第八門中回↢所修業↡向↦所求処↥。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 5. 去時
▲五に 「▲臨命終時」 より下 「極楽世界▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 終時に聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその六あり。
五従↢「臨命終時」↡下至↢「極楽世界」↡已来、正明↢第九門中、終時聖来迎接不同、去時遅疾↡。即有↢其六↡。
▲一には*命延久しからざることを明かす。
一明↢命延不↟久。
▲二には弥陀、 比丘衆と来りて、 菩薩あることなきことを明かす。 これ小乗の根性なるによりて、 また小根の衆を感ぜり。
二明↧弥陀与↢比丘衆↡来、無↞有↢菩薩↡。由↢是小乗根性↡、還感↢小根之衆↡也。
▲三には仏、 金光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
三明↧仏放↢金光↡、照↦行者身↥。
▲四には仏、 ために法を説き、 また出家は多衆の苦、 種々の俗縁・家業・王官・*長征・遠防等を離るることを讃ずることを明かす。 「なんぢいま出家して*四輩に仰がれ、 万事憂へず。 *迥然として自在にして、 *去住障なし。 これがために*道業を修することを得」 と。 このゆゑに讃じて 「衆苦を離る」 とのたまふ。
長征遠防 遠方へ出征することや、 遠国へ防備に赴くこと。
四輩 人・天・竜・鬼のこと。
迥然 (俗事に) はるかに遠ざかっていること。
去住 ゆくもとどまるもの意。
道業 仏道の行業。
四明↤仏為説↠法、又讃↣出家離↢多衆苦、種種俗縁・家業・王官・長征遠防等↡。汝今出家、仰↢於四輩↡万事不↠憂、迥然自在、去住無↠障、為↠此得↠修↢道業↡。是故讃云↠離↢衆苦↡也。
▲五には行者すでに見聞しをはりて欣喜に勝へず。 すなはちみづから身を見ればすでに*華台に坐し、 頭を低れて仏を礼することを明かす。
五明↧行者既見聞已、不↠勝↢欣憙↡、即自見↠身已坐↢華台↡、低↠頭礼↞仏。
▲六には行者頭を低るることここにありて、 頭を挙げをはればかの国にあることを明かす。
六明↧行者低↠頭在↠此、挙↠頭已在↦彼国↥也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 6. 華開
▲六に 「▲蓮華尋開」 よりは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
六従↢「蓮華尋開」↡者、正明↢第十門中、到↠彼華開遅疾不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 7. 得益
▲七に 「▲当華敷時」 より下 「八解脱▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその三あり。
七従↢「当華敷時」↡下至↢「八解脱」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益不同↡。即有↢其三↡。
▲一には宝華たちまち発くることを明かす。 これ戒行精強なるによるがゆゑなり。
一明↢宝華尋発↡。此由↢戒行精強↡故也。
▲二には法音同じく*四諦の徳を讃ずることを明かす。
二明↣法音同讃↢四諦之徳↡。
▲三にはかしこに到りて四諦を説くを聞きて、 すなはち*羅漢の果を獲ることを明かす。
三明↧到↠彼聞↠説↢四諦↡、即獲↦羅漢之果↥。
「羅漢」 といふは、 ここには無生といひ、 また無着といふ。 因亡ずるがゆゑに無生なり。 果喪するがゆゑに無着なり。
言↢「羅漢」↡者、此云↢無生↡、亦云↢無著↡。因亡故無生、果喪故無著。
「三明」 といふは、 宿命明・天眼明・漏尽明なり。
言↢「三明」↡者、宿命明・天眼明・漏尽明也。
「八解脱」 といふは、 *内有色外観色は一の解脱なり。 *内無色外観色は二の解脱なり。 *不浄相は三の解脱なり。 *四空とおよび*滅尽と総じて八を成ず。
内有色外観色 内身の貪りを除くために、 外界の不浄を観じ内身の貪りの心を離れる禅定。 八解脱の第一。
内無色外観色 内身への貪りはないが、 さらに外界の不浄を観じて、 貪りの心を捨てることを一層堅固にする禅定。 八解脱の第二。
不浄相 不浄相を除いて浄色を観じ、 貪りの心を離れる禅定で、 普通は浄解脱という。 八解脱の第三。
四空 無色界の四種の禅定。 空無辺処定・識無辺処定・無所有処定・非想非非想処定のこと。
滅尽 滅尽定。 心のはたらきをすべて滅し尽した禅定。
言↢「八解脱」↡者、内有色・外観色一解脱、内無色・外観色二解脱、不浄相三解脱、四空及滅尽、総成↠八也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 4 中品上生釈 8. 総結
▲八に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
八従↢「是名」↡已下、総結。
上来八句の不同ありといへども、 広く中品上生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢八句不同↡、広解↢中品上生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈
【20】次に中品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
次就↢中品中生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其七↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 1. 位
▲一に 「▲中品中生者」 よりは、 総じて行の名を挙げてその位を弁定す。 すなはちこれ小乗下善の凡夫人なり。
一従↢「中品中生者」↡、総挙↢行名↡、弁↢定其位↡。即是小乗下善凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 2. 受法
▲二に 「▲若有衆生」 より下 「威儀無欠▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△六・△七門のなかの、 *簡機・時分・受法等の不同を明かす。 すなはちその三あり。
二従↢「若有衆生」↡下至↢「威儀無欠」↡已来、正明↢第五・六・七門中簡機・時分・受法等不同↡。即有↢其三↡。
▲一には*八戒斎を受持することを明かす。
一明↣受↢持八戒斎↡。
▲二には*沙弥戒を受持することを明かす。
二明↣受↢持沙弥戒↡。
▲三には*具足戒を受持することを明かす。
三明↣受↢持具足戒↡。
この三品の戒はみな同じく一日一夜なり。 清浄にして犯すことなく、 すなはち軽罪に至るまでも、 極重の過を犯すがごとくし、 三業の*威儀に失あらしめず。 これすなはち上の▲第二の福 (戒福) に合す、 知るべし。
威儀 仏弟子としての規律にかなった起居動作、 ふるまいのこと。
此三品戒、皆同一日一夜。清浄無↠犯、乃至軽罪如↠犯↢極重之過↡、三業威儀不↠令↠有↠失也。此即合↢上第二福↡。応↠知。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 3. 回向
▲三に 「▲以此功徳」 より以下は、 まさしく所修の業を*回して、 所求の処に向かふことを明かす。
三従↢「以此功徳」↡已下、正明↧回↢所修業↡向↦所求処↥。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 4. 去時
▲四に 「▲戒香熏修」 より下 「七宝池中▲」 に至るこのかたは、 まさしく第△九門のなかの、 行者の*終時に聖来りて*迎接したまふと、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその八あり。
四従↢「戒香熏修」↡下至↢「七宝池中」↡已来、正明↢第九門中、行者終時、聖来迎接、去時遅疾↡。即有↢其八↡。
▲一には*命延久しからざることを明かす。
一明↢命延不↟久。
▲二には弥陀、 もろもろの比丘衆と来りたまふことを明かす。
二明↧弥陀与↢諸比丘衆↡来↥。
▲三には仏、 金光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
三明↧仏放↢金光↡照↦行者身↥。
▲四には比丘、 華を持して来現することを明かす。
四明↢比丘持↠華来現↡。
▲五には行者みづから空声等の讃を見聞することを明かす。
五明↣行者自見↢聞空声等讃↡。
▲六には仏讃じて、 「なんぢ深く仏語を信じ、 随順して疑ふことなし。 ゆゑに来りてなんぢを迎ふ」 とのたまふことを明かす。
六明↧仏讃言↦汝信↢仏語↡、随順無↠疑、故来迎↞汝。
▲七にはすでに仏讃を蒙りてすなはち見るに、 みづから*華座に坐す。 坐しをはれば、 華合することを明かす。
七明↧既蒙↢仏讃↡、即見↦自坐↢華座↡、坐已華合↥。
▲八には華すでに合しをはりて、 すなはち西方宝池のうちに入ることを明かす。
八明↣華既合已、即入↢西方宝池之内↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 5. 華開
▲五に 「▲経於七日」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五従↢「経於七日」↡已下、正明↢第十門中、到↠彼華開時節不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 6. 得益
▲六に 「▲華既敷已」 より下 「成羅漢▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその四あり。
六従↢「華既敷已」↡下至↢「成羅漢」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益不同↡。即有↢其四↡。
▲一には華開けて仏を見たてまつることを明かす。
一明↢華開見↟仏。
▲二には合掌して仏を讃ずることを明かす。
二明↢合掌讃↟仏。
▲三には法を聞きて*初果を得ることを明かす。
三明↣聞↠法得↢於初果↡。
▲四には半劫を経をはりてまさに*羅漢となることを明かす。
四明↧経↢半劫↡已、方成↦羅漢↥。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 5 中品中生釈 7. 総結
▲七に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
七従↢「是名」↡已下、総結。
上来七句の不同ありといへども、 広く中品中生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢七句不同↡、広解↢中品中生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈
【21】次に中品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
次就↢中品下生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其七↡。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 1. 位
▲一に 「▲中品下生」 より以下は、 まさしく総じて行の名を挙げて、 その位を弁定することを明かす。 すなはちこれ世善上福の凡夫人なり。
一従↢「中品下生」↡已下、正明↧総挙↢行名↡弁↦定其位↥。即是世善上福凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 2. 受法
▲二に 「▲若有善男子」 より下 「行世仁慈▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 *簡機・受法の不同を明かす。 すなはちその四あり。
二従↢「若有善男子」↡下至↢「行世仁慈」↡已来、正明↢第五・第六門中簡機・授法不同↡。即有↢其四↡。
▲一には簡機を明かす。
一明↢簡機↡。
▲二には父母に孝養し、 *六親に奉順することを明かす。 すなはち上の*初福 (世福) の▲第一・▲第二の句に合す。
初福の第一第二の句 第一句は 「孝養父母」 第二句は 「奉事師長」 を指す。
二明↧孝↢養父母↡、奉↦順六親↥。即合↢上初福第一・第二句↡。
▲三にはこの人、 性調ほり柔善にして自他を簡ばず、 *物の苦に遭へるを見て慈敬を起すことを明かす。
三明↧此人性調柔善、不↠簡↢自他↡、見↢物遭↟苦、起↦於慈敬↥。
四にはまさしくこの品の人かつて仏法を見聞せず、 また*悕求することを解らず、 ただみづから孝養を行ずることを明かす、 知るべし。
悕求 ねがいもとめること。
四正明↧此品之人不↣曾見↢聞仏法↡、亦不↠解↢悕求↡、但自行↦孝養↥也。応↠知。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 3. 回向
▲三に 「▲此人命欲終時」 より下 「四十八願▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第八門のなかの、 臨終に仏法に遇逢ふ時節の*分斉を明かす。
分斉 区切り。
三従↢「此人命欲終時」↡下至↢「四十八願」↡已来、正明↧第八門中、臨終遇↢逢仏法↡時節分斉↥。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 4. 去時
▲四に 「▲聞此事已」 より下 「極楽世界▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 *得生の益と*去時の遅疾とを明かす。
得生の益 往生浄土を得る利益。
四従↢「聞此事已」↡下至↢「極楽世界」↡已来、正明↢第九門中得生之益、去時遅疾↡也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 5. 華開
▲五に 「▲生経七日」 よりは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華の開と不開とを異となすことを明かす。
五従↢「生経七日」↡者、正明↢第十門中、到↠彼華開不開為↟異。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 6. 得益
▲六に 「▲遇観世音」 より下 「成羅漢▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその三あり。
六従↢「遇観世音」↡下至↢「成羅漢」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益不同↡。即有↢其三↡。
▲一には時を経て以後、 観音・大勢に遇ひたてまつることを得ることを明かす。
一明↢逕↠時已後、得↟遇↢観音・大勢↡。
▲二にはすでに二聖 (観音・勢至) に逢ひたてまつりて、 妙法を聞くことを得ることを明かす。
二明↧既逢↢二聖↡得↞聞↢妙法↡。
▲三には一小劫を経て以後、 はじめて羅漢を悟ることを明かす。
三明↧逕↢一小劫↡已後、始悟↦羅漢↥也。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 6 中品下生釈 7. 総結
▲七に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
七従↢「是名」↡已下、総結。
上来七句の不同ありといへども、 広く中品下生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢七句不同↡、広解↢中品下生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●中輩観 ○中輩総讃
【22】 ¬讃¼ にいはく (礼讃)、
「▲中輩は*中行中根の人なり。 一日の斎戒をもつて金蓮に処す。
中行中根の人 中度の行を修める根機の中程度の人。 →
根機
父母に孝養せるを教へて回向せしめ、 ために西方快楽の因と説く。
仏、 声聞衆と来り取りて、 ただちに弥陀の*華座の辺に到る。
百宝の華に篭りて七日を経。 三品の蓮開けて*小真を証す」 と。
小真 小乗のさとり。
讃云。中輩中行中根人。一日斎戒処↢金蓮↡。孝↢養父母↡教↢回向↡、為説↢西方快楽因↡。仏与↢声聞衆↡来取、直到↢弥陀華座辺↡。百宝華篭経↢七日↡、三品蓮開証↢小真↡。
上来三位の不同ありといへども、 総じて中輩一門の義を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢三位不同↡、総解↢中輩一門之義↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 ○文前料簡
【23】十六に下輩観の善悪二行の文前につきて、 *料簡してすなはち十一門となす。
十六就↢下輩観善悪二行文前↡、料簡即為↢十一門↡。
一には総じて*告命を明かす。
一者総明↢告命↡。
二にはその位を弁定す。
二者弁↢定其位↡。
三には総じて有縁の生類を挙ぐ。
三者総挙↢有縁生類↡。
四には三心を弁定してもつて正因となす。
四者弁↢定三心↡以為↢正因↡。
▽五には*機の堪と不堪とを簡ぶ。
機の堪と不堪とを簡ぶ 簡機に同じ。
五者簡↣機堪与↢不堪↡。
▽六には苦楽の二法を受くる不同を明かす。
六者明↧受↢苦楽二法↡不同↥。
七には修業の時節に*延促異なることあることを明かす。
延促 長短。
七者明↢修業時節延促有↟異。
八には所修の行を*回して、 所求の処に向かふことを明かす。
八者明↧迴↢所修行↡向↦所求処↥。
▽九には臨終の時聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。
九者明↢臨終時、聖来迎接不同、去時遅疾↡。
▽十にはかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
十者明↢到↠彼華開遅疾不同↡。
▽十一には華開以後の得益に異なることあることを明かす。
十一者明↢華開已後得益有↟異。
上来十一門の不同ありといへども、 総じて下輩の三位を*料簡しをはりぬ。
上来雖↠有↢十一門不同↡、総料↢簡下輩三位↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈
【24】次に下品上生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその九あり。
次就↢下品上生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其九↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 1. 告命
▲一に 「▲仏告阿難」 より以下は、 まさしく*告命を明かす。
一従↢「仏告阿難」↡已下、正明↢告命↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 2. 位
▲二に 「▲下品上生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれ十悪を造る軽罪の凡夫人なり。
二従↢「下品上生者」↡、正明↣弁↢定其位↡。即是造↢十悪↡軽罪凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 3. 機
▲三に 「▲或有衆生」 より下 「無有慚愧▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五門のなかの、 *簡機に、 一生以来の造悪の軽重の相を挙出することを明かす。 すなはちその五あり。
三従↢「或有衆生」↡下至↢「無有慚愧」↡已来、正明↣第五門中簡機、挙↢出一生已来造悪軽重之相↡。即有↢其五↡。
▲一には総じて造悪の機を挙ぐることを明かす。
一明↣総挙↢造悪之機↡。
▲二には衆悪を造作することを明かす。
二明↣造↢作衆悪↡。
▲三には衆罪を作るといへども、 もろもろの大乗において誹謗を生ぜざることを明かす。
三明↧雖↠作↢衆罪↡、於↢諸大乗↡不↞生↢誹謗↡。
▲四にはかさねて造悪の人を*牒して、 智者の類にあらざることを明かす。
四明↧重牒↢造悪之人↡、非↦智者之類↥也。
▲五にはこれらの愚人衆罪を造るといへども、 総じて*愧心を生ぜざることを明かす。
愧心 罪や過ちを恥じる心。
五明↧此等愚人雖↠造↢衆罪↡、総不↠生↦愧心↥。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 4. 受法
▲四に 「▲命欲終時」 より下 「生死之罪▲」 に至るこのかたは、 まさしく造悪の人等臨終に善に遇ひて法を聞くことを明かす。 すなはちその六あり。
四従↢「命欲終時」↡下至↢「生死之罪」↡已来、正明↢造悪人等、臨終遇↠善聞↟法。即有↢其六↡。
▲一には*命延久しからざることを明かす。
一明↢命延不↟久。
▲二にはたちまちに*往生の善知識に遇ふことを明かす。
往生の善知識 往生浄土を勧める善知識。 以下の善人・智者もこれに同じ。 →
善知識
二明↣忽遇↢往生善知識↡。
▲三には善人、 ために衆経を讃ずることを明かす。
三明↣善人為讃↢衆経↡。
▲四にはすでに経を聞く功力、 罪を除くこと千劫なることを明かす。
四明↢已聞↠経功力、除↠罪千劫↡。
▲五には智者教を転じて、 弥陀の号を称念せしむることを明かす。
五明↣智者転↠教称↢念弥陀之号↡。
▲六には弥陀の名を称するをもつてのゆゑに、 罪を除くこと五百万劫なることを明かす。
六明↧以↠称↢弥陀名↡故、除↠罪五百万劫↥。
【25】▼問ひていはく、 なんがゆゑぞ、 経を聞くこと*十二部なるには、 ただ罪を除くこと千劫、 仏を称すること一声するには、 すなはち罪を除くこと五百万劫なるは、 なんの意ぞや。
問曰。何故聞↠経十二部、但除↠罪千劫、称↠仏一声、即除↠罪五百万劫者、何意也。
答へていはく、 造罪の人障重くして、 加ふるに死苦の来り逼むるをもつてす。 善人多経を説くといへども、 *餐受の心浮散す。 心散ずるによるがゆゑに、 罪を除くことやや軽し。 また仏名はこれ一なれば、 すなはちよく散を摂してもつて心を住む。 また教へて正念に名を称せしむ。 *心重きによるがゆゑに、 すなはちよく罪を除くこと多劫なり。
餐受の心 教えを受け入れる心。
心重きによるがゆゑに 心が落ち着き、 統一されているので。
答曰。造罪之人障重、加以↢死苦来逼↡、善人雖↠説↢多経↡、餐受之心浮散。由↢心散↡故、除↠罪稍軽。又仏名是一、即能摂↠散以住↠心、復教令↢正念称↟名。由↢心重↡故、即能除↠罪多劫也。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 5. 去時
【26】▲五に 「▲爾時彼仏」 より下 「生宝池中▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 *終時の*化衆の来迎と、 *去時の遅疾とを明かす。 すなはちその六あり。
化衆 化仏・化菩薩衆。
五従↢「爾時彼仏」↡下至↢「生宝池中」↡已来、正明↢第九門中、終時化衆来迎、去時遅疾↡。即有↢其六↡。
▲一には行者まさしく名を称する時、 かの弥陀すなはち化衆を遣はして声に応じて来現せしめたまふことを明かす。
一明↧行者正称↠名時、彼弥陀即遣↢化衆↡、応↠声来現↥。
▲二には化衆すでに身現じてすなはち同じく行人を讃じたまふことを明かす。
二明↣化衆既已身現、即同讃↢行人↡。
▲三には▼所聞の*化讃、 ただ称仏の功を述べて、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 とのたまひて*聞経の事を論ぜざることを明かす。
化讃 化仏の讃嘆。
聞経 経典の名を聞くこと。
三明↧所聞化讃、但述↢称仏之功↡、「我来迎汝」不↞論↢聞経之事↡。
▼しかるに仏の願意に望むれば、 ただ勧めて正念に名を称せしむ。 往生の義、 疾きこと*雑散の業に同じからず。 この ¬経¼ (観経) および*諸部のなかのごとき、 処々に広く歎じて、 勧めて名を称せしむ。 まさに*要益となすなり、 知るべし。
諸部 ¬大経¼ ¬小経¼ およびその他諸々の大乗経を指す。
要益 肝要にして有益なことの意。
然望↢仏願意↡者、唯*勧↢正念↡称↠名。往生義疾不↠同↢雑散之業↡。如↢此経及諸部中、処処広歎↡、勧令↠称↠名将↠為↢要益↡也。応↠知。
勧正念 返り点まま。 「正念を勧め」。
▲四にはすでに化衆の告げを蒙り、 およびすなはち光明の室に遍するを見ることを明かす。
四明↧既蒙↢化衆告↡、及即見↦光明徧↞室。
▲五にはすでに光照を蒙りて、 *報命すなはち終ることを明かす。
報命 寿命のこと。
五明↧既蒙↢光照↡、報命尋終↥。
▲六には華に乗じ、 仏に従ひて宝池のなかに生ずることを明かす。
六明↣乗↠華従↠仏生↢宝池中↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 6. 華開
▲六に 「▲経七日」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
六従↢「経七日」↡已下、正明↢第十門中、到↠彼華開遅疾不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 7. 得益
▲七に 「▲当華敷時」 より下 「得入初地▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益に異なることあることを明かす。 すなはちその五あり。
七従↢「当華敷時」↡下至↢「得入初地」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益有↟異。即有↢其五↡。
▲一には観音等先づ*神光を放つことを明かす。
一明↣観音等先放↢神光↡。
▲二には〔観音等の〕身、 行者の宝華の側に赴くことを明かす。
二明↣身赴↢行者宝華之側↡。
▲三にはために前生所聞の教を説くことを明かす。
三明↣為説↢前生所聞之教↡。
▲四には行者聞きをはりて領解し*発心することを明かす。
四明↢行者聞已領解発心↡。
▲五には遠く多劫を経て、 *百法の位に証臨することを明かす。
百法の位 百法明門の位。 あらゆる法門を明瞭に通達した初地の位のこと。
五明↧遠逕↢多劫↡、証↦臨百法之位↥也。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 8. 総結
▲八に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
八従↢「是名」↡已下、総結。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 7 下品上生釈 9. 挙益
▲九に 「▲得聞仏名」 より以下は、 かさねて行者の益を挙ぐ。 ただ念仏のみ独り往生を得るにあらず。 ▼法・僧通念するもまた去くことを得。
九従↢「得聞仏名」↡已下、重挙↢行者之益↡。非↣但念↠仏独得↢往生↡、法・僧通念亦得↠去也。
上来九句の不同ありといへども、 広く下品上生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢九句不同↡、広解↢下品上生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈
【27】次に下品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
次就↢下品中生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其七↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 1. 告命
▲一に 「▲仏告阿難」 より以下は、 総じて*告命を明かす。
一従↢「仏告阿難」↡已下、総明↢告命↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 2. 位
▲二に 「▲下品中生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれ破戒次罪の凡夫人なり。
二従↢「下品中生者」↡、正明↣弁↢定其位↡。即是破戒次罪凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 3. 機
▲三に 「▲或有衆生」 より下 「応堕地獄▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 *簡機と造業とを明かす。 すなはちその七あり。
三従↢「或有衆生」↡下至↢「応堕地獄」↡已来、正明↢第五・第六門中簡機造業↡。即有↢其七↡。
▲一には総じて造悪の機を挙ぐることを明かす。
一明↣総挙↢造悪之機↡。
▲二には多く諸戒を犯すことを明かす。
二明↣多犯↢諸戒↡。
▲三には*僧物を*偸盗することを明かす。
僧物 出家教団に属する財物・物資。
三明↣偸↢盗僧物↡。
▲四には*邪命説法を明かす。
四明↢邪命説法↡。
▲五には総じて*愧心なきことを明かす。
愧心 罪や過ちを恥じる心。
五明↣総無↢愧心↡。
▲六には衆罪を兼ね造り、 内には心に悪を発し、 外にはすなはち身口に悪をなすことを明かす。
六明↧兼↢造衆罪↡、内心発↠悪、外即身口為↞悪。
すでに自身不善なれば、 また見るものみな憎む。 ゆゑに 「もろもろの悪心をもつてみづから荘厳す」 といふ。
既自身不善、又見者皆憎、故云↢諸悪心自荘厳↡也。
▲七にはこの罪状を験むるに、 さだめて地獄に入るべきことを明かす。
七明↧験↢斯罪状↡、定入↦地獄↥。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 4. 去時
▲四に 「▲命欲終時」 より下 「即得往生▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 *終時の*善悪来迎することを明かす。 すなはちその九あり。
善悪来迎 下品中生者は臨終に地獄の苦相が現れ、 次いで聖者の来迎があるので、 善 (楽) 悪 (苦) 来迎という。
四従↢「命欲終時」↡下至↢「即得往生」↡已来、正明↢第九門中、終時善悪来迎↡。即有↢其九↡。
▲一には罪人の*命延久しからざることを明かす。
一明↢罪人命延不↟久。
▲二には獄火来現することを明かす。
二明↢獄火来現↡。
▲三にはまさしく火現ずる時、 善知識に遇ふことを明かす。
三明↣正火現時、遇↢善知識↡。
▲四には*善人、 ために弥陀の功徳を説くことを明かす。
四明↣善人為説↢弥陀功徳↡。
▲五には罪人すでに弥陀の名号を聞きて、 すなはち罪を除くこと多劫なることを明かす。
五明↧罪人既聞↢弥陀名号↡、即除↠罪多劫↥。
▲六にはすでに罪滅を蒙りて、 火変じて風となることを明かす。
六明↧既蒙↢罪滅↡、火変為↞風。
▲七には天華風に随ひて来応して、 目の前に羅列することを明かす。
七明↣天華随↠風来応、羅↢列目前↡。
▲八には*化衆来迎することを明かす。
化衆 化仏・化菩薩衆。
八明↢化衆来迎↡。
▲九には*去時の遅疾を明かす。
九明↢去時遅疾↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 5. 華開
▲五に 「▲七宝池中」 より下 「六劫▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五従↢「七宝池中」↡下至↢「六劫」↡已来、正明↢第十門中、到↠彼華開時節不同↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 6. 得益
▲六に 「▲蓮華乃敷」 より下 「発無上道心▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益に異なることあることを明かす。 すなはちその三あり。
六従↢「蓮華乃敷」↡下至↢「発無上道心」↡已来、正明↢第十一門中、華開已後得益有↟異。即有↢其三↡。
▲一には華すでに開けをはりて、 観音等*梵声をもつて安慰することを明かす。
梵声 きよらかな音声。
一明↢華既開已、観音等梵声安慰↡。
▲二にはために甚深の妙典を説くことを明かす。
二明↣為説↢甚妙典↡。
▲三には行者領解し、 *発心することを明かす。
三明↢行者領解発心↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 8 下品中生釈 7. 総結
▲七に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
七従↢「是名」↡已下、総結。
上来七句の不同ありといへども、 広く下品中生を解しをはりぬ。
上来雖↠有↢七句不同↡、広解↢下品中生↡竟。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 9 下品下生釈
【28】次に下品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
次就↢下品下生位中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其七↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 9 下品下生釈 1. 告命
▲一に 「▲仏告阿難」 より以下は、 総じて*告命を明かす。
一従↢「仏告阿難」↡已下、総明↢告命↡。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 9 下品下生釈 2. 位
▲二に 「▲下品下生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれつぶさに五逆等を造れる重罪の凡夫人なり。
二従↢「下品下生者」↡、正明↣弁↢定其位↡。即是具造↢五逆等↡重罪凡夫人也。
◎正宗分 ○散善 ●下輩観 9 下品下生釈 3. 機
▲三に 「▲或有衆生」 より下 「受苦無窮▲」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 *簡機と造悪の軽重の相とを明かす。 すなはちその七あり。
三従↢「或有衆生」↡下至↢「受苦無窮」↡已来、正明↢第五・第六門中、簡機造悪軽重之相↡。即有↢其七↡。
▲一には造悪の機を明かす。
一明↢造悪之機↡。
▲二には総じて不善の名を挙ぐることを明かす。
二明↣総挙↢不善之名↡。
▲三には罪の軽重を簡ぶことを明かす。
三明↠簡↢罪軽重↡。
▲四には総じて衆悪を結して、 智人の業にあらずといふことを明かす。
四明↧総結↢衆悪↡、非↦智人之業↥。
▲五には悪を造ることすでに多ければ、 罪また軽