かんぎょうじょうぜん かんだい

*沙門しゃもん*善導ぜんどう集記しゅうき

正宗分

【1】 これより以下いげは、 つぎ*正宗しょうしゅうべんず。 すなはちその*十六あり。 また一々のかんのなかにつきて、 もんたいして*料簡りょうけんす。 わずらはしくあらかじめあらわさず

正宗 正宗分のこと。 その経の本論となる部分。
十六 じょうぜん十三観、 散善さんぜん三観の計十六観をいう。

従↠此已下、次弁↢正宗↡。即有↢其十六↡。還就↢一一観中↡、対↠文料簡。不↢労預顕↡。

 原漢文の底本は本派本願寺蔵版。 龍谷大学蔵鎌倉時代刊本、 大派依用十行本と対校されている。

いま正宗しょうしゅうさだりゅうすること、 *しょおなじからず

諸師 じょうようおん (523-592)、 天台てんだい大師智顗ちぎ (538-597)、 嘉祥かじょう大師吉蔵きちぞう (549-623) などを指す。

今定↢立正宗↡、与↢諸師↡不↠同。

いまただちにもつてほうにつきてさだめば、 日観にっかんはじめのよりしもぼん下生げしょういたるこのかたは、 これその正宗しょうしゅうなり。 日観にっかんより以上いじょう多義たぎどうありといへども、 この文勢もんぜいるに、 ただこれ*じょなり、 るべし

由序 序分じょぶんに同じ。 その経の序説のこと。

今直以就↠法定者、従↢日観初句↡下至↢下品下生↡已来、是其正宗。従↢日観↡已上雖↠有↢多義不同↡、看↢此文勢↡但是由序也。応↠知。

◎正宗分 定善  日観

【2】 はじめの*日観にっかんのなかにつきて、 *げ、 つぎべんじ、 のちけっす。 すなはちその五あり

日観 日想観にっそうかんの略。 日が沈むすがたを観じて、 西方の極楽浄土を観想すること。
先づ挙げ… まず観の名を挙げ、 次に解釈し、 終りに文を結ぶ。 善導ぜんどう大師は定善十三観のすべてにこの三科があるとする。

就↢初日観中↡、先挙、次弁、後結。即有↢其五↡。

◎正宗分 ○定善 1 日観 1. 総告総勧

一に 「仏告ぶつごうだい」 よりしもそう西方さいほう」 にいたるこのかたは、 まさしくそうじてげ、 そうじてすすむることをかす

一従↢「仏告韋提」↡下至↢「想於西方」↡已来、正明↢総告総勧↡。

これはだいさき弥陀みだ仏国ぶっこくしょうじ、 また*正受しょうじゅぎょうしょうずるに、 如来にょらい (釈尊) ときあたりてすなはちゆるしてためにきたまふことをかす

正受の行 三昧さんまいを得るための行法で、 ここでは定善の行法のこと。

此明↧韋提前請↢弥陀仏国↡、又請↢正受之行↡、如来当↠時即許為説↥。

・未聞之益

*ただえんいまだそなはらざれば、 ぎょうあらわすこといまだあまねからざるをもつて、 さらに*ぷくいんひらきて、 もつて*もんやくをなし、 また如来にょらいかさねてげて*ずう勧発かんぽつしたまふ。 このほうきがたければ、 ひろかいせしむ

ただ機縁… (定善の行法だけでは) 教えを受けるべき者のすべてをおさめ尽すことができないので。
三福の因 往生の因であるところの散善さんぜん三福の行。 →三福さんぷく
未聞の益 いままでに聞いたことのないすぐれたやく
流通を勧発し 教えの伝持流布を勧め。

但以↢機縁未↠備顕↠行未↟周、更開↢三福之因↡、以作↢未聞之益↡、又如来重告勧↢発流通↡。此法難↠聞広令↢開悟↡。

・告勧

仏告ぶつごうだいにょぎゅうしゅじょう」 といふは、 これ告勧ごうかんかす。 もしひとしく*塵労じんろうでて仏国ぶっこくしょうずることをもとめんとほっせば、 よろしくすべからくこころはげますべし

塵労 煩悩ぼんのうの異名。 ここでは煩悩にけがされた世間のこと。

言↢「仏告韋提汝及衆生」↡者、此明↢告勧↡。若欲↧等出↢塵労↡求↞生↢仏国↡者、宜↢須励↟意也。

・衆生散動

応当おうとう専心せんしん」 といふ以下いげは、 これしゅじょう散動さんどうしてしき猿猴えんこうよりもはげしく、 しん*じんへんしてしばらくもむによしなきことをかす

言↢「応当専心」↡已下、此明↧衆生散動、識劇↢猨猴↡、心徧↢六塵↡、無↞由↢暫息↡。

 底本まま。 註なし。

ただおもんみれば*境縁きょうえん一にあらず、 れて*とんおこおもいみだす。 しん*三昧さんまいやすんずること、 なんぞべけん。 *えんじょうたくするにあらざるよりは、 相続そうぞくしてしんとどめんや

境縁 外界に認識知覚される対象のこと。
 貪欲のこと。 →貪欲とんよく
縁を捨て静に託する 心を乱す境縁を離れて、 静かなところに安んずること。

但以境縁非↠一、触↠目起↠貪乱↠想。安↢心三昧↡、何容↢可得↡。自↠非↢捨↠縁託↟静、相続注↠心。

ただちに西方さいほうすは、 *の九いきえらぶ。 ここをもつてを一にし、 しんを一にし、 こうを一にし、 しょを一にし、 境界きょうがいを一にし、 相続そうぞくを一にし、 帰依きえを一にし、 正念しょうねんを一にす。 これを想成就じょうじゅして*正受しょうじゅづく。 此世しせ後生ごしょうしんしたがひてだつ

余の九域 東・南・北・東南・西南・西北・東北・上・下の九つの方角。
正受を得 三昧さんまいを成就すること。

直指↢西方↡、簡↢余九域↡。是以一↠身、一↠心、一↢迴向↡、一↠処、一↢境界↡、一↢相続↡、一↢帰依↡、一↢正念↡。是名↣想成就得↢正受↡。此世・後生、随↠心解脱也。

◎正宗分 ○定善 1 日観 2. 牒所観事

二に 「うんそう」 よりしも皆見かいけん日没にちもつ」 にいたるこのかたは、 まさしく所観しょかん*でっすることをかす

二従↢「云何作想」↡下至↢「皆見日没」↡已来、正明↠牒↢所観事↡。

これもろもろのしゅじょうとうひさしくしょうながれて、 安心あんじんさとらず。 西方さいほうすといへども、 いかんが作意さいするといふことをらず。 ゆゑに如来にょらいために反問はんもんしょう疑執ぎしゅう遣除けんじょせしめ、 もつて正念しょうねんほうしめしたまふことをかす

此明↧諸衆生等、久流↢生死↡不↠解↢安心↡。雖↠指↢西方↡不↠知↢云何作意↡。故使↣如来為生↢反問↡、遣↢除疑執↡、以示↦正念之方↥。

・牒前顕後

ぼんそう」 といふは、 これそうじてさきこころ*でっして、 のち入観にゅうかん方便ほうべんあらわすことをかす

言↢「凡作想」↡者、此明↧総牒↢前意↡、顕↦後入観之方便↥。

・得生之類

一切いっさいしゅじょう」 といふは、 そうじて*得生とくしょうるい

得生の類 往生浄土を得る機類。

言↢「一切衆生」↡者、総挙↢得生之類↡。

・機堪不堪

自非じひ生盲しょうもう」 といふ以下いげは、 これ*たんたんとをえらぶことをかす

機の堪と不堪とを簡ぶ 行者が行ずるにえるか堪えないかを区別するという意。

言↢「自非生盲」↡已下、此明↠簡↣機堪与↢不堪↡。

*生盲しょうもう」 といふは、 たいのなかよりでて、 まなこすなはちものざるものをづけて生盲しょうもうといふ。 このひとにはおしへて日観にっかんをなさしむることをず。 日輪にちりん光相こうそうらざるによるがゆゑなり

生盲 →補註10

言↢「生盲」↡者、従↢母胎中↡出、眼即不↠見↠物者、名曰↢生盲↡。此人不↠得↣教作↢日観↡、由↠不↠識↢日輪光相↡故。

生盲しょうもうのぞきて以外いげえんひてうれふるものにはおしへて日観にっかんをなさしむるに、 ことごとく成就じょうじゅすることを。 いまだまなこうれへざるとき、 その日輪にちりんこうみょうとうそうるによりて、 いまうれふといへども、 ただよく日輪にちりんとうそうらしめて、 正念しょうねんけんしてせつかぎらざれば、 かならず成就じょうじゅすることを

生盲 →補註10

除↢生盲↡以外、遇↠縁患者、教作↢日観↡、尽得↢成就↡。由↧未↠患↠眼時、識↦其日輪光明等相↥、今雖↠患↠目但令↣善取↢日輪等相↡、正念堅持不↠限↢時節↡、必得↢成就↡。

 ひていはく、 だいかみしょうには極楽ごくらくきょうんとがんず。 如来にょらいせつしたまふに及至いたりて、 すなはちおしへてしんとどめてかんぜしむるは、 なんのこころかあるや

問曰。韋提上請願↠見↢極楽之境↡、及↠至↢如来許説↡、即先教↢住↠心観↟日有↢何意↡也。

こたへていはく、 これに三のこころあり

答曰。此有↢三意↡。

一にはしゅじょうをしてきょうしんとどめしめんとほっして、 *ほうすことあることあり。 とう両時りょうじらず、 ただ春秋しゅんじゅうの二さいる。 その正東しょうとうよりでて直西じきさいもっす。 弥陀みだ仏国ぶっこく日没にちもつところあたりて、 直西じきさい万億まんおく*せつ超過ちょうかす。 すなはちこれなり

 西方。

一者欲↠令↢衆生識↠境住↟心指↠方有↠在。不↠取↢冬夏両時↡、唯取↢春秋二際↡。其日正東出、直西没。弥陀仏国、当↢日没処↡、直西超↢過十万億刹↡、即是。

二にはしゅじょうをして*ごっしょう軽重きょうじゅうあることをしきせしめんとほっす。 いかんがることをる。 おしへてしんとどめてかんぜしむるによる

二者欲↠令↤衆生識↣知自業障有↢軽重↡。云何得↠知。由↢教住↠心観↟日。

・住身威儀

はじめてしんとどめんとほっするときおしへて*跏趺かふ正坐しょうざせしむ。 みぎあしひだりももうえけてほかとひとしくし、 ひだりあしみぎももうえきてほかとひとしくし、 ひだりみぎうえきて、 をして正直しょうじきならしめ、 くちがっしてはあひちかづくことなかれ。 したうえあごささへよ。 咽喉いんこうおよび鼻中びちゅうどうをして宣通せんつうせしめんがためのゆゑなり

跏趺正坐 足の甲を左右のもものうえにおく座り方。 けっ趺坐ふざに同じ。

初欲↠住↠心時、教令↢跏趺正坐↡。右脚著↢左上↡、与↠外斉、左足安↢右上↡与↠外斉、左手安↢右手上↡、令↢身正直↡。合↠口歯勿↢相近↡、舌柱↢上↡。為↠令↢咽喉及鼻中気道宣通↡故。

またしん*だいないともにくうにして、 すべて一もつもなしとかんぜしめよ

又令↠観↢身四大↡。内外倶空都無↢一物↡。

観…四大 返り点まま。 かかり具合が狭い。

しんだいにくきんこつとうしんおもへ。 西方さいほう散向さんこうして、 西方さいほうきわつくすに、 ないじんそうずと

身之地大、皮肉・筋骨等、心想↣散↢向西方↡。尽↢西方際↡、乃至不↠見↢一塵之相↡。

またおもへ。 しん水大すいだいけつかんしんるいとうしんおもへ。 北方ほっぽう散向さんこうして、 北方ほっぽうきわつくすに、 ないじんそうずと

又想、身之水大、血汗・津涙等、心想↣散↢向北方↡。尽↢北方際↡、乃至不↠見↢一塵之相↡。

またおもへ。 しん風大ふうだい東方とうぼう散向さんこうして、 東方とうぼうきわつくすに、 ないじんそうずと

又想↣身之風大、散↢向東方↡。尽↢東方際↡、乃至不↠見↢一塵之相↡。

またおもへ。 しんだい南方なんぽう散向さんこうして、 南方なんぽうきわつくすに、 ないじんそうずと

又想↣身之火大、散↢向南方↡。尽↢南方際↡、乃至不↠見↢一塵之相↡。

またおもへ。 しん空大くうだいすなはち十ぽうくうと一がっして、 ないじんくうそうずと

又想↧身之空大、即与↢十方虚空↡一合↥。乃至不↠見↢一塵不空之相↡。

またおもへ。 しんの五だいみなくうにして、 ただ識大しきだいのみありて*湛然たんねん凝住ぎょうじゅうす、 なほ円鏡えんきょうのごとく、 ない明照みょうしょうにして朗然ろうねんとして清浄しょうじょうなりと

湛然凝住 いささかの動揺もなく、 静かにとどまっているさま。

又想↧身之五大、皆空唯有↢識大↡、湛然凝住、猶如↢円鏡↡、内外明照朗然清浄↥。

このおもいをなすとき乱想らんそうのぞこることをて、 しんやうやく*凝定ぎょうじょうす。 しかしてのち徐々じょじょとしてしんてんじて、 あきらかにかんず。 その*こんのものは一にしてすなはち明相みょうそう現前げんぜんするを

凝定 り定まること。
利根のもの 素質能力のすぐれた者。

作↢此想↡時、乱想得↠除、心漸凝定。然後徐徐転↠心、諦観↢於日↡。其利根者、一坐即見↢明相現前↡。

きょうげんずるときあたりて、 あるいはぜにおおきさのごとく、 あるいは鏡面きょうめんおおきさのごとし。 このみょううえにおいてすなはちみづから*ごっしょう軽重きょうじゅうそう

当↢境現時↡、或如↢銭大↡、或如↢鏡面大↡。於↢此明上↡即自見↢業障軽重之相↡。

一には黒障こくしょう、 なほ黒雲こくうんふるがごとし。 二には黄障おうしょう、 また黄雲おううんふるがごとし。 三には白障びゃくしょう白雲びゃくうんふるがごとし

一者黒障、猶如↢黒雲障↟日。二者黄障、又如↢黄雲障↟日。三者白障、如↢似白雲障↟日。

このなほくもふるがごとくなるがゆゑに、 *朗然ろうねんとして顕照けんしょうすることをず。 しゅじょうごっしょうもまたかくのごとし。 浄心じょうしんきょう*障蔽しょうへいして、 しんをして明照みょうしょうならしむることあたはず

朗然として… あきらかに照らすことができない。
障蔽 さまたげおおうこと。

此日猶↢雲障↡故、不↠得↢朗然顕照↡。衆生業障亦如↠是。障↢蔽浄心之境↡、不↠能↠令↢心明照↡。

行者ぎょうじゃもしこのそうば、 すなはちすべからく道場どうじょう*厳飾ごんじきし、 仏像ぶつぞうあんし、 清浄しょうじょう洗浴せんよくし、 浄衣じょうえじゃくし、 また名香みょうこうきて諸仏しょぶつ一切いっさい*賢聖げんじょう表白ひょうびゃくし、 ぶつ形像ぎょうぞうかひて、 現在げんざいしょう無始むしよりこのかた、 すなはち*しん口意くいごうつくるところの*あく*ぎゃく*じゅう*謗法ほうぼう*闡提せんだいとうつみさんすべし

行者若見↢此相↡、即須↧厳↢飾道場↡、安↢置仏像↡、清浄洗浴、著↢浄衣↡、又焼↢名香↡、表↢白諸仏一切賢聖↡、向↢仏形像↡、現在一生懺↦悔無始已来、乃身口意業所造十悪・五逆・四重・謗法・闡提等罪↥。

 底本まま。 註なし。

きはめてすべからくていしてなみだあめふらし、 ふかざんしょうじて、 うち心髄しんずいとおり、 ほねりてみづからむべし

極須↧悲涕雨↠涙、生↢慚愧↡、内徹↢心髄↡、切↠骨自責↥。

さんしをはりて、 かえりてさきほうのごとく安心あんじんしてきょうれ。 きょうもしげんずるときは、 さきのごとき三しょうことごとくのぞこりて、 所観しょかん浄境じょうきょう朗然ろうねんとして明浄みょうじょうなり

懺悔已、還如↢前坐法↡、安心取↠境。境若現時、如↠前三障尽除、所観浄境朗然明浄。

これをとんさわりめっすとづく。 あるいは一さんしてすなはちつくすものをこんひとづく

此名↢頓滅↟障也。或一懺即尽者名↢利根人↡也。

あるいは一さんしてただ黒障こくしょうのぞき、 あるいは一さんしておうびゃくとうさわりのぞくことを。 あるいは一さんしてただ白障びゃくしょうのぞ

或一懺但除↢黒障↡、或一懺得↠除↢黄・白等障↡、或一懺但除↢白障↡。

これを*漸除ぜんじょづけ、 *頓滅とんめつづけず

漸除 (ごっしょうを) 漸次に滅除すること。
頓滅 (業障を) すみやかに滅除すること。

此名↢漸除↡、不↠名↢頓滅↡也。

すでにみづから*業相ごっそうのかくのごとくなるをらば、 ただすべからく勤心ごんしんさんすべし。 にち・六とうにただおくしてすなはちさんすることをるものは、 もつともこれ*上根じょうこん上行じょうぎょうひとなり

業相 前頁の業障軽重の相のこと。
上根上行の人 高度の行を修める根機のすぐれた人。 →こん

既自識↢業相如↟是、唯須↢勤心懺悔↡。日夜三時・六時等、但憶得↢即懺↡者、最是上根上行人也。

たとへばとうくに、 またかくすればすなはちるがごとし。 あにいたづらにときち、 ところち、 えんち、 ひとちてまさにはじめてのぞくべけんや

譬如↢湯火焼↠身、亦覚即却↡。豈容↧徒待↠時待↠処、待↠縁待↠人、方始除↥也。

三にはしゅじょうをして弥陀みだ*しょうほう種々しゅじゅ荘厳しょうごんこうみょうとうそうない照曜しょうようして、 この日に超過ちょうかせることひゃく千万倍せんまんばいなることをしきせしめんとほっ

三者欲↠令↧衆生識↦知弥陀依正二報、種種荘厳光明等相、内外照曜超↢過此日↡、百千万倍↥。

行者ぎょうじゃとう、 もしかのきょう光相こうそうらずは、 すなはちこの日輪にちりんこうみょうそうて、 もしは*行住ぎょうじゅう坐臥ざが礼念らいねん*憶想おくそうして、 つねにこのをなせ。 ひさしからざるあひだにすなはち定心じょうしんて、 かのじょうらく荘厳しょうごん

行者等、若不↠識↢彼境光相↡者、即看↢此日輪光明之相↡、若行住坐臥、礼念憶想、常作↢此解↡。不↠久之間、即得↢定心↡、見↢彼浄土之事、快楽荘厳↡。

こののためのゆゑに、 そんおしへて日想にっそうかんをなさしめたまふ

為↢此義↡故、世尊先教作↢日想観↡也。

◎正宗分 ○定善 1 日観 3. 正教観察

 三に 「とう想念そうねん」 よりしもじょう如懸にょげん」 にいたるこのかたは、 まさしくおしへて*観察かんざつせしむ。 これ*威儀いぎただし、 おもて西方さいほうかへて、 きょうまもりてしんとどめ、 堅執けんしゅうしてうつらざれば、 しょみなおうずることをかす

身の威儀を正し けっ趺坐ふざし。

三従↢「当起想念」↡下至↢「状如懸鼓」↡已来、正教観察。此明↧正↢身威儀↡、面向↢西方↡、守↠境住↠心、堅執不↠移、所期皆応↥。

◎正宗分 ○定善 1 日観 4. 弁観成相

四に 「見日けんにち」 よりしも明了みょうりょう」 にいたるこのかたは、 観成かんじょうそうべん

四従↢「既見日已」↡下至↢「明了」↡已来、弁↢観成相↡。

これしんひょうしてるに、 おもいせいえんのぞきて念々ねんねんうつらざれば、 浄相じょうそう*了然りょうねんとしてげんずることをかす

了然 あきらかなさま。

此明↢標↠心見↠日、制↠想除↠縁念念不↠移、浄相了然而現↡。

・観邪正得失

また行者ぎょうじゃはじめて定中じょうちゅうにありて、 このときすなはち三昧さんまい定楽じょうらくて、 *身心しんしんない融液ゆうえきして不可思議ふかしぎなり

身心内外融液して 身 (外) と心 (内) とがとけあって、 安楽になることをいう。

又行者初在↢定中↡、見↢此日↡時、即得↢三昧定楽↡、身心内外融液不可思議。

これをときあたりて、 よくすべからくしんせっして、 じょうをして*上心じょうしん貪取とんしゅざらしむべし。 もし貪心とんしんおこせば、 心水しんすいすなはちどうず。 しんどうずるをもつてのゆゑに浄境じょうきょうすなはちしっす。 あるいはどう、 あるいはあん、 あるいはこく、 あるいはしょうおうしゃくびゃくとういろにして安定あんじょうすることを

上心の貪取 禅定ぜんじょう心の中のむさぼりの心。

当↢見↠此時↡、好須↣摂↠心令↢定不↟得↢上心貪取↡。若起↢貪心↡、心水即動、以↢心動↡故、浄境即失。或動或闇、或黒或青・黄・赤・白等色、不↠得↢安定↡。

このときすなはちみづから念言ねんごんせよ。 「これらの境相きょうそう揺動ようどうしてやすからざることは、 わが貪心とんしん動念どうねんによりて、 浄境じょうきょうをして動滅どうめつせしむることをいたす」 と。 すなはちみづから安心あんじん正念しょうねんにして、 かえりてもとよりおこせば、 動相どうそうすなはちのぞこりて、 静心じょうしんかえりてげんず。 すでにこのとがらば、 さらに*増上ぞうじょう貪心とんしんおこすことをざれ

増上の貪心 「上心の貪取」 に同じ。

見↢此事↡時、即自念言、此等境相揺動不↠安者、由↢我貪心動念↡、致↠使↢浄境動滅↡。即自安心正念、還従↠本起↢動相↡即除、静心還現。既知↢此過↡、更不↠得↠起↢増上貪心↡也。

起動相即除 返り点まま。 「動相を起せば即ち除きて」

以下いげ諸観しょかん邪正じゃしょう得失とくしつ、 もつぱらこれにおな

已下諸観邪正得失、一同↠此也。

かんじてるは、 *心境しんきょう相応そうおうす。 づけて正観しょうかんとなす。 かんずるにずしてすなはち雑境ぞうきょうとうるは、 心境しんきょう相応そうおうせず。 ゆゑにじゃづく

観↠日見↠日、心境相応。名為↢正観↡。観↠日不↠見↠日、乃見↢余雑境等↡、心境不↢相応↡。故名↠邪也。

これすなはち*しゃ闇宅あんたくには、 れてもつてほうすべきことなし。 ただ朗日ろうにちひかりぶるのみありて、 おもいせてとお極楽ごくらくひょう

心境相応す 観ずる心と観の対象とが完全に合致する。
娑婆の闇宅 娑婆世界をみょうの闇におおわれた家に喩えていう。

斯乃娑婆之闇宅、触↠事無↢以比方↡。唯有↢朗日舒↟輝、寄↠想遠標↢於極楽↡。

◎正宗分 ○定善 1 日観 5. 総結

五に 「是為ぜい」 より以下いげそうじてけっ

五従↢「是為」↡已下、総結。

上来じょうらいどうありといへども、 ひろ日観にっかんかしをはりぬ

上来雖↠有↢五句不同↡、広明↢日観↡竟。

◎正宗分 ○定善  水観

【3】 二に*水観すいかんのなかにつきて、 またげ、 つぎべんじ、 のちけっす。 すなはちその六あり

水観 水想観すいそうかんの略。 極楽浄土の大地を観想するための前段階として、 水の清澄なることを観じ、 次第に浄土の大地を観想するに至ること。

二就↢水観中↡、亦先挙、次弁、後結。即有↢其六↡。

◎正宗分 ○定善 2 水観 1. 総標地体

一に 「次作しさ水想すいそう」 よりしもない映徹ようてつ」 にいたるこのかたは、 そうじてたいひょう

一従↢「次作水想」↡下至↢「内外映徹」↡已来、総標↢地体↡。

 ひていはく、 さきおしへてかんぜしむるは、 *業相ごっそうとうらしめんがためなり。 ゆゑにかんぜしむ。 いまこのかんのなかに、 またおしへてみずかんぜしむるは、 なんの所以ゆえんかある

業相 ごっしょう軽重の相。

問曰。前教観↠日、為↠知↢業相等↡。故令↠観↠日。今此観中、又教観↠水、有↢何所以↡。

こたへていはく、 日輪にちりんつねにらし、 もつて極楽ごくらく*長暉じょうきひょうす。 またかのたいらかならずして、 この*こく*こうるいすることをおそ

長暉 とこしえに輝いていること。
高下 高低や起伏。

答曰。日輪常照、以表↢極楽之長暉↡。復恐↣彼地不↠平、類↢此穢国之高下↡。

ただおもんみればしゃ闇宅あんたくには、 ただのみよくあきらかなり。 このさかいにはきょうありていまだこうなきところあらず。 よくたいらかなるものをらんとほっするに、 みずぎたるはなし。 この可平かびょうそうしめして、 かの*瑠璃るりの地にきょう

瑠璃の地 青色の宝石でできた大地。

以↩娑婆闇宅、唯日能明、此界丘阬、未↧無↢高下↡之処↥。欲↠取↢能平之者↡、無↝過↢於水↡、示↢斯可平之相↡、況↢彼瑠璃之地↡也。

以…無過於水 返り点まま。 「…水に過ぎたるは無きをもって」
 底本まま。 註なし。

 またひていはく、 このさかいみず湿うるおひてかつやわらかなり。 いぶかし、 かのまたこのみずどうずるや

又問曰。此界之水、而且輭。未審、彼地亦同↢此水↡也。

こたへていはく、 このさかい平水びょうすい、 もつてかのひとしくして*こうなきにたい

答曰。此界之平水、以対↣彼地等無↢高下↡。

またみずてんじてこおりとなすは、 かの瑠璃るりない*映徹ようてつせるにたいす。 これ弥陀みだ*曠劫こうごうひとしくぎょうじて、 *へんなく、 *正習しょうじゅうともにもうじて、 よく*りん映徹ようてつせるをかんずることをかす

 かたより。
正習 正使と習気のこと。 →正使しょうじじっ
地輪 大地の意。

又転↠水成↠冰者、対↢彼瑠璃之地内外映徹↡也。此明↣弥陀曠劫等行無↠偏、正・習倶亡、能感↢地輪之映徹↡。

 底本まま。 註なし。

 またひていはく、 すでにおしへてみずおもひてもつてしんとどめしめ、 みずてんじてもつてこおりとなし、 こおりてんじてもつて瑠璃地るりじとなすといはば、 いかんがほうしてきょうをしてげんぜしむる

又問曰。既教想↠水以住↠心、転↠水以成↠冰、転↠冰以成↢瑠璃地↡者、云何作法而令↢境現↡。

こたへていはく、 *住身じゅうしん威儀いぎのごときは、 もつぱらさき日観にっかんのなかのほうおなじ。 またみずかんじてもつて定心じょうしんらんとほっせば、 かえりてすべからくそうきょうたいしてかんずべし。 すなはちじょうべきことやす

住身の威儀 身をたもつ作法。 跏趺かふ正坐しょうざの作法。

答曰。若住身威儀、一同↢前日観中法↡。又欲↣観↠水以取↢定心↡者、還須↧対↢相似之境↡而観↥。即易↠可↠得↠定。

行者ぎょうじゃとう静処じょうしょにおいて一わんみずりて、 ゆかまえうえきてよくこれにたしり、 しんゆかうえにありてし、 けんて、 一のしろものまめばかりのおおきさのごとくなるをけて、 こうべおもてみずうえのぞめて、 一心いっしんにこのしろところらして、 さらにえんすることなかれ

行者等於↢静処↡取↢一椀水↡、著↢牀前地上↡、好満↢盛之↡、自身在↢牀上↡坐、当↢自眉間↡、著↣一白物如↢豆許大↡、低↠頭臨↢面水上↡、一心照↢看此白処↡、更莫↢異縁↡。

またみずはじにありてろうとどまらざるとき、 おもてのぞめてこれをかんずるに、 面像めんぞうず。 かんをなすことまざれば、 *漸々ぜんぜんおもてげんず。 はじめのとき面相めんそうとどまらずして、 たちまちにながく、 たちまちにみじかく、 たちまちにひろく、 たちまちにせまく、 たちまちにえ、 えず

又水初在↠地波浪不↠住、臨↠面観↠之、不↠見↢面像↡。為↠観不↠休、漸漸面現。初時面相不↠住、乍長乍短、乍寛乍狭、乍見不↠見。

このそうげんずるとき、 さらにすべからく極細ごくさい用心ようじんすべし。 ひさしからざるあひだにすいさいにして、 どうずるにどうぜず、 面相めんそうやうやくあきらかにげんずることを面上めんじょうげんとうるといへども、 またいまだるをもちゐず、 またさまたぐるをもちゐず。 ただ身心しんしんをほしいままにして、 ありとりてることなかれ。 ただしろところりて*了々りょうりょうにこれをかんじて、 正念しょうねんしゅして、 *しつえんせしむることなかれ。 これをときあたりて、 しんやうやくとどまることをて、 水性すいしょう*湛然たんねんなり

失意異縁 他事に心を移して正念しょうねんを失うこと。
湛然 静かに落ち着いているさま。

此相現時、更須↢極細用心↡。不↠久之間、水波微細、似↠動不↠動、面相漸得↢明現↡。雖↠見↢面上眼・耳・鼻・口等↡、亦未↠須↠取、亦不↠須↠妨。但縦↢身心↡、知↠有勿↠取也。唯取↢白処↡了了観↠之、正念守護、勿↠令↠失↢意異縁↡。当↢見↠此時↡、心漸得↠住、水性湛然也。

また行者ぎょうじゃとうしんのなかのみずろうとどまらざることをしきせんとほっせば、 ただこのみずどうどうそうかんじて、 すなはちしんきょうげんげん明闇みょうあんそうれ。 またみずしずかなるときち、 一のこめばかりなるをりて、 水上すいじょうててまかせてこれをみずのなかにぐれば、 そのすいすなはちどうじてわんのうちにへんす。 おもてうえのぞめてこれをるに、 そのしろきものすなはちどうず。 さらにまめばかりなるをけてこれをみずぐるに、 なみさらにだいにして、 面上めんじょうしろきもの、 あるいはえ、 えず。 ないなつめとう、 これをみずぐるに、 そのなみ*うたただいにして、 面上めんじょうしろきものおよびしんめんそうじてみな隠没おんもつしてげんぜず。 みずどうずるによるがゆゑなり

又行者等、欲↣識↢知自心中水波浪不↟住者、但観↢此水動・不動之相↡、即知↢自心境現不現・明闇之相↡也。又待↢水静時↡、取↢一米許↡、当↢水上↡、信↠手投↢之水中↡、其水波即動徧↢於椀内↡。自面臨↠上観↠之、其白者即動。更著↢豆許↡投↢之水↡、波更大、面上白者、或見不↠見。乃至棗等、投↢之於水↡、其波転大、面上白者、及自身頭面、総皆隠没不↠現、猶↢水動↡故也。

わん」 といふはすなはちしんたとふ。 「みず」 といふはすなはち心水しんすいたとふ。 「ろう」 といふはすなはち乱想らんそう煩悩ぼんのうたとふ。 「*漸々ぜんぜんろうむ」 といふは、 すなはちこれ衆縁しゅえん*制捨せいしゃして、 しんを一きょうとどむるなり。 「みずしずかにしてきょうげんず」 といふは、 すなはちこれ*能縁のうえんしんみだるることなければ、 *所縁しょえんきょうどうぜず、 ない*恬怕てんぱくにしてしょそう*顕然けんねんなり。 また*さいそうおよび*そうあれば、 心水しんすいすなはちどうず。 心水しんすいすでにどうずれば、 静境じゃくきょうすなはちしっす。 また*細塵さいじんおよび*じん、 これを寂静じゃくじょうみずのなかにぐるに、 そのみずろうすなはちどうず。 また行者ぎょうじゃとうただこのみずどうどうそうて、 すなはちしんじゅう不住ふじゅう

制捨 とどめ捨て去ること。
能縁の心 行者の観ずる心。
所縁の境 観によって現れるところの境界。
恬怕 静かに安らいでいるさま。
顕然 あきらかであるようす。
細想・粗想 心の動きの微細なものと粗雑なもの。
細塵・粗塵 しきしょうこうそくほうの六塵 (六境) によって生じる心の乱れの微細なものと粗雑なもの。

言↠椀者即喩↢身器↡也。言↠水者即喩↢自心水↡也。言↢波浪↡者即喩↢乱想煩悩↡也。言↢漸漸波浪息↡者、即是制↢捨衆縁↡、住↢心一境↡也。言↢水静境現↡者、即是能縁之心無↠乱、所縁之境不↠動、内外恬怕所求之相顕然。又細想及麤想、心水即動。心水既動、静境即失。又細塵及以麤塵、投↢之寂静水中↡、其水波浪即動。又行者等、但看↢此水動・不動相↡、即識↢自心住・不住↡也。

また境現きょうげんしつしつ邪正じゃしょうとう、 もつぱらさき日観にっかんおな

又境現失不失・邪正等、一同↢前日観↡也。

 また天親てんじんさん (浄土論) にいはく、

かのかいそうかんずるに、 三がいどう*勝過しょうがせり。

勝過 超えすぐれていること。

究竟くきょうしてくうのごとく、 広大こうだいにして*辺際へんざいなし」 と

辺際 ほとり。

又天親¬讃¼云。「観↢彼世界相↡、勝↢過三界道↡、究竟如↢虚空↡、広大無↢辺際↡。」

これすなはちそうじてかのくに分量ぶんりょうかす

此即総明↢彼国地之分量↡也。

◎正宗分 ○定善 2 水観 2. 地下荘厳

二に 「下有げう金剛こんごう七宝しっぽう」 よりしも不可ふかけん」 にいたるこのかたは、 まさしく地下じげ荘厳しょうごんかす。 すなはちその七あり

二従↢「下有金剛七宝」↡下至↢「不可具見」↡已来、正明↢地下荘厳↡、即有↢其七↡。

一には*どうたいひとしくこれ無漏むろ金剛こんごうなることをかす

 浄土の大地を支える宝でできた柱。

一明↢幢体等是無漏金剛↡。

二にはささげてあひ顕映けんようせる荘厳しょうごんかす

二明↢擎↠地相顕映荘厳↡。

三には*方楞ほうりょうそくして円相えんそうにあらざることをあらわすことをかす

方楞具足して 方は側面、 楞は角の意。 ¬観経¼ に 「八方八楞具足」 とあるのをうける。 宝幢が八角柱の形をなしているということ。

三明↢方楞具足、表↟非↢円相↡。

四には百宝ひゃっぽう合成ごうじょうして、 りょう*塵沙じんじゃでたることをかす

四明↣百宝合成、量出↢塵沙↡。

五にはたから千光せんこういだして、 ひかりへんきわにあまねきことをかす

五明↧宝出↢千光↡、光周↦無辺之際↥。

六にはひかりしきおおくしていろほうらし、 したがひて変現へんげんし、 ときとしてやくせざることなきことをかす

六明↧光多↢異色↡、色照↢他方↡、随↠機変現、無↦時不↞益也。

七には衆光しゅこういろさんじて日輪にちりん映絶ようぜつし、 *新往しんおうのものこれをてにはかに*周悉しゅうしつしがたきことをかす

新往のもの 新たに浄土に往生した者。
周悉 すべてを尽すこと。

七明↧衆光散↠彩映↢絶日輪↡、新往者覩↠之卒難↦周悉↥。

¬さん¼ にいはく (礼讃)

地下じげ荘厳しょうごん七宝しっぽうどうりょうへんしゅおくなり。

ぽうめん百宝ひゃっぽうをもつてじょうず。 かれをれば*しょう*ねんさとる。

しょう宝国ほうこくながじょうたり。 一々のたからしゅひかりながす。

行者ぎょうじゃしんかたむけてつねにたいして、 *じんやくして西方さいほうれ」 と

讃云。地下荘厳七宝幢、無量無辺無数億。八方八面百宝成、見↠彼無生自然悟。無生宝国永為↠常、一一宝流↢無数光↡。行者傾↠心常対↠目、騰神踊躍入↢西方↡。

また*さんにいはく、

讃にいはく この讃文と同様の意を表した文言は ¬ほう事讃じさん¼ ¬般舟讃はんじゅさん¼ にみられる。

西方さいほう*寂静じゃくじょう無為むいらくなり。 畢竟ひっきょう*逍遙しょうようして有無うむはなれたり。

寂静無為の楽 煩悩ぼんのうを滅し尽した生滅変化のない絶対のさとりの世界。 浄土のこと。
逍遙 なにものにもとらわれず、 あるがままにあること。

だいしんくんじて法界ほうかいあそぶ。 わかちて*ものすることひとしくしてことなることなし。

あるいは*神通じんずうげんじてほうき、 あるいは*相好そうごうげんじて*無余むよる。

無余 煩悩を余すところなく滅した涅槃のさとり。 →はん

変現へんげん荘厳しょうごんこころしたがひてづ。 *群生ぐんじょうるものつみみなのぞこる」 と

又讃云。西方寂静無為楽、畢竟逍遥離↢有無↡。大悲薫↠心遊↢法界↡、分身利↠物等無↠殊。或現↢神通↡而説↠法、或現↢相好↡入↢無余↡。変現荘厳随↠意出、羣生見者罪皆除。

また*さんにいはく、

讃にいはく この讃文と同様の意を表した文言は ¬ほう事讃じさん¼ ¬礼讃らいさん¼ ¬般舟讃はんじゅさん¼ にみられる。 続く 「讃にいはく」 もこれに同じ。

*帰去来いざいなん*魔郷まきょうにはとどまるべからず。

帰去来 陶淵明 (365-427) の 「帰去来辞」 の中の言葉。 故郷に帰る決意を述べたものであるが、 ここでは浄土に生れたいという意をあらわす。
魔郷 魔障のある世界。 しゃを指す。

*曠劫こうごうよりこのかたてんして、 *どうことごとくみなたり。

いたところらくなし、 ただ愁歎しゅうたんこえく。

この*生平しょうびょうへてのち、 かのはんみやこらん」 と

又讃云。帰去来、魔郷不↠可↠停。曠劫来流↢転六道↡尽皆逕。到処無↢余楽↡、唯聞↢愁歎声↡。畢↢此生平↡後、入↢彼涅槃城↡。

流転六道 返り点は底本まま。 「六道に流転して」
 鎌倉時代刊本では

◎正宗分 ○定善 2 水観 3. 地上荘厳

三に 「瑠璃地るりじじょう」 よりしも分斉ぶんざい分明ぶんみょう」 にいたるこのかたは、 まさしく地上じじょう荘厳しょうごん*顕標けんぴょう殊勝しゅしょうなることをかす

顕標 あらわれているさま。

三従↢「瑠璃地上」↡下至↢「分斉分明」↡已来、正明↢地上荘厳顕標殊勝↡。

これ*依持えじ円浄えんじょうかす。 七宝しっぽうりんとうはこれ*のう瑠璃るりほうはこれ*しょなり。 はこれ*のうだいじゅとうはこれ*しょなり。 これ弥陀みだ*因行いんぎょう周備しゅうびせるによりて、 *感報かんぽうをして円明えんみょうならしむることをいたす。 明浄みょうじょうはすなはち無漏むろたいとなす

依持円浄 地と地上の荘厳しょうごんとが相離れずまどかに成立しているさまを依 (能依・所依) と持 (能持・所持) の観点からいうもの。 十八円浄の一。
能依 依るもの。
所依 依られるもの。
能持 保持するもの。
所持 保持されるもの。
因行周備 いんの修行が完全無欠であること。
感報 果報を得ること。

此明↢依持円浄↡。七宝池林等是能依、瑠璃宝地是所依。地是能持、池・台・樹等是所持。此由↢弥陀因行周備↡、致↠使↢感報円明↡。明浄之義即無漏為↠体也。

さんにいはく、

ほう荘厳しょうごん比量ひりょうなし。 処々しょしょこうみょうぽうらす。

宝閣ほうかくだいみな遍満へんまんす。 *雑色ざっしき玲瓏れいろうとしてはかるべきことかたし。

雑色玲瓏 種々の色彩が美しく光り輝くさま。

宝雲ほううん宝蓋ほうがいくうのぞみておおひ、 しょうじゅつうしてたがひに往来おうらいす。

*宝幢ほうどう幡蓋ばんがいふうしたがひててんじ、 宝楽ほうがくふくみてねんおうじてめぐる。

わくたいしてしょうずるもの、 はないまだひらけず。 合掌がっしょう*篭々ろうろうたること*たいしょするにたとふ。

籠々 華の中に含まれているさま。
 母の胎内。

うちに*法楽ほうらくけて微苦みくなし。 さわりきてしゅはなおのづからひらく。

法楽 仏法の楽しみ。

もく精明しょうみょうにして金色こんじきなり。 さつ徐々じょじょとしてほうさずく。

ひかりたいるるに*にんじょうずることを。 すなはちぶつたてまつらんとほっして金台こんだいよりくだる。

*法侶