観経玄義分 巻第一
*沙門*善導集記
○帰三宝偈
【1】 先づ大衆を勧めて願を発して*三宝に帰せしむ。
◎先勧↢大衆↡発願帰↢三宝↡。
◎ 原漢文の底本は本派本願寺蔵版。 龍谷大学蔵鎌倉時代刊本、 大派依用十行本と対校されている。
・ 勧衆発願
▼*道俗の時衆等、 おのおの*無上心を発せ。
道俗の時衆 現在、 道場に参集している出家・在家の人々。
無上心を発せ 無上心は菩提心のこと。 親鸞聖人はこれを自力の菩提心の意とし、 「無上の心を発せども」 (信文類訓) と読まれた。
道俗時衆等 各発↢無上心↡
生死はなはだ厭ひがたく、 仏法また欣ひがたし。
生死甚難↠厭 仏法復難↠欣
ともに*金剛の志を発して、 ▼横に*四流を超断すべし。
金剛の志 菩提心のこと。 親鸞聖人は他力の菩提心の意とみなされた。
四流 欲暴流・有暴流・見暴流・無明暴流。 煩悩を四種の暴流に喩えたもの。
共発↢金剛志↡ 横超↢断四流↡
弥陀界に入らんと願じて、 帰依し合掌し礼したてまつれ。
願↢入弥陀界↡ 帰依合掌礼
・ 帰三宝
*世尊、 われ一心に*尽十方の
尽十方 十方のすべての世界。
世尊我一心 帰↧命尽十方
*法性*真如海と、 *報化等の諸仏と、
法性真如海 報化等諸仏
一々の菩薩身と、 *眷属等の無量なると、
一一菩薩身 眷属等無量
*荘厳および変化と、 *十地と三賢海と、
荘厳および変化 荘厳身 (報身) および変化身 (化身) の菩薩。
荘厳及変化 十地三賢海
*時劫の満と未満と、 *智行の円と未円と、
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
智行 智慧と修行。
時劫満未満 智行円未円
*正使の尽と未尽と、 *習気の亡と未亡と、
正使尽未尽 習気亡未亡
*功用と無功用と、 *証智と未証智と、
功用と無功用 修行するうえで、 努力を要する者と、 要しない者。
証智と未証智 真如の理をさとった者と、 さとらない者。
功用無功用 証智未証智
▼*妙覚および*等覚の、 ▼まさしく金剛心を受け、
妙覚及等覚 正受↢金剛心↡
*相応する一念の後、 *果徳涅槃のものに帰命したてまつる。
相応 ここでは真如にかなうという意。
果徳涅槃のもの 仏果の徳である涅槃を得た者。
相↢応一念↡後 果徳涅槃者↥
・ 仏力乞加
われらことごとく*三仏菩提の尊に帰命したてまつる。
三仏菩提の尊 法身・報身・化身の三身。 または弥陀・釈迦・諸仏を指す。
我等咸帰↢命 三仏菩提尊↡
無礙の神通力をもつて、 冥に加して願はくは*摂受したまへ。
無礙神通力 冥加願摂受
われらことごとく*三乗等の*賢聖の、 仏の大悲心を学して、
我等咸帰↧命 三乗等賢聖
長時に退することなきものに帰命したてまつる。
学↢仏大悲心↡ 長時無↠退者↥
請ひ願はくははるかに*加備したまへ。 念々に諸仏を見たてまつらん。
請願遥加備 念念見↢諸仏↡
われら*愚痴の身、 *曠劫よりこのかた流転して、
我等愚痴身 曠劫来流転
いま釈迦仏の*末法の遺跡たる
今逢↢釈迦仏 末法之遺跡
弥陀の本誓願、 極楽の*要門に逢へり。
弥陀本誓願 極楽之要門↡
*定散等しく回向して、 すみやかに*無生の身を証せん。
定散等迴向 速証↢無生身↡
・ 造偈の意
▼われ*菩薩蔵*頓教、 *一乗海によりて、
我依↢菩薩蔵 頓教一乗海↡
*偈を説きて*三宝に帰して、 仏心と相応せん。
説↠偈帰↢三宝↡ 与↢仏心↡相応
十方恒沙の仏、 *六通をもつてわれを照知したまへ。
十方恒沙仏 六通照↢知我↡
いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の教に乗じて、 広く浄土の門を開く。
今乗↢二尊教↡ 広開↢浄土門↡
・ 回向
願はくはこの功徳をもつて、 平等に一切に施し、
願以↢此功徳↡ 平等施↢一切↡
同じく*菩提心を発して、 安楽国に往生せん。
同発↢菩提心↡ 往↢生安楽国↡
○七門料簡
【2】 この ¬観経¼ 一部のうちに、 先づ七門を作りて*料簡し、 しかして後に文によりて義を釈せん。 第一に先づ序題を標す。 第二に次にその名を釈す。 第三に文によりて義を釈し、 ならびに*宗旨の不同、 *教の大小を弁ず。 第四にまさしく説人の差別を顕す。 第五に*定散二善、 通別に異なることあることを料簡す。 第六に経論の相違を和会するに、 広く問答を施して疑情を*釈去す。 第七に*韋提の、 仏の正説を聞きて益を得る分斉を料簡す。
宗旨 経典に説かれた法義の最も肝要なことがら。
教の大小 ¬観経¼ が大乘教か小乗教か。
釈去 解釈して取り去ること。
此¬観経¼一部之内、先作↢七門↡料簡、然後依↠文釈↠義。第一先標↢序題↡。第二次釈↢其名↡。第三依↠文釈↠義、并弁↢宗旨不同、教之大小↡。第四正顕↢説人差別↡。第五料↢簡定散二善、通別有↟異。第六和↢会経論相違↡、広施↢問答↡釈↢去疑情↡。第七料↧簡韋提聞↢仏正説↡得↠益分斉↥。
○序題門
【3】 第一に先づ序題を標すとは、
第一先標↢序題↡者、
・ 法性実相
ひそかにおもんみれば、 *真如広大にして*五乗もその辺を測らず。 *法性深高にして*十聖もその際を窮むることなし。 真如の体量、 量性、 *蠢々の心を出でず。 法性無辺なり。 辺体すなはちもとよりこのかた動ぜず。 *無塵の*法界は*凡聖斉しく円かに、 *両垢の如々すなはちあまねく*含識を該ね、 *恒沙の功徳*寂用湛然なり。
蠢々 うごめく小さな虫。
無塵 煩悩のけがれのないこと。
両垢の如々 有垢真如と無垢真如のこと。 煩悩によって覆われている真如とそうでない真如。
含識 心のはたらきを有する者。 有情。 衆生。
寂用湛然 すぐれたはたらきが常に満ちあふれているという意。
窃以真如広大、五乗不↠測↢其辺↡。法性高、十聖莫↠窮↢其際↡。真如之体量、量性不↠出↢蠢蠢之心↡。法性無辺、辺体則元来不動。無*尽法界凡聖斉円、両垢如如則普該↢於含識↡、恒沙功徳寂用湛然。
尽 鎌倉時代刊本、 大派依用本では 塵。
・ 釈尊出世
ただ垢障覆ふこと深きをもつて、 *浄体顕照するに由なし。 ゆゑに ˆ釈尊はˇ 大悲をもつて*西化を隠し、 驚きて*火宅の門に入り、 甘露を灑ぎて*群萌を潤し、 *智炬を輝かせばすなはち*重昏を永夜より朗らかならしむ。 *三檀等しく備はり、 *四摂をもつて斉しく収めて、 長劫の苦因を開示し、 永生の楽果に悟入せしむ。
浄体 清浄な真如の本体。
西化を隠し 釈尊はその本国であるところの西方無勝世界の教化をさしおいてという意。
智炬 智慧の灯火。
重昏 暗闇。
三檀 財施・法施・無畏施の三種の布施をいう。
但以↢垢障覆↡、浄体無↠由↢顕照↡。故使↧大悲隠↢於西化↡驚入↢火宅之門↡、灑↢甘露↡潤↢於羣萠↡、輝↢智炬↡則朗↦重昏於永夜↥。三檀等備四摂斉収、開↢示長劫之苦因↡、悟↢入永生之楽果↡。
・ 観経化前
【4】 *群迷の性の隔たり、 *楽欲の不同をいはず。 *一実の機なしといへども、 等しく五乗の用あれば、 慈雲を三界に布き、 法雨を大悲より注がしむることを致す。 等しく*塵労を洽すに、 あまねく未聞の益を沾さざるはなし。 *菩提の種子これによりてもつて心を抽き、 *正覚の芽念々にこれによりて増長す。 心によりて勝行を起すに、 門八万四千に余れり。 *漸頓すなはちおのおの所宜に称ふをもつて、 縁に随ふもの、 すなはちみな*解脱を蒙る。
群迷 迷いの衆生。
楽欲 意向。 望み。
塵労 煩悩の異名。 ここでは煩悩にけがれた衆生のこと。
不↠謂↢羣迷性隔、楽欲不同↡、雖↠無↢一実之機↡、等有↢五乗之用↡、致↠使↧布↢慈雲於三界↡、注↦法雨於大悲↥。莫↠不↧等洽↢塵労↡普沾↦未聞之益↥。菩提種子藉↠此以抽↠心、正覚之芽念念因↠茲増長。依↠心起↢於勝行↡、門余↢八万四千↡、漸頓則各称↢所宜↡、随↠縁者則皆蒙↢解脱↡。
・ 観経興起
【5】 しかるに衆生障重くして、 悟を取るもの明めがたし。 教益多門なるべしといへども、 *凡惑*遍攬するに由なし。 たまたま韋提、 請を致して、 「▲われいま*安楽に往生せんと楽欲す。 ▲ただ願はくは如来、 われに*思惟を教へたまへ、 われに*正受を教へたまへ」 といふによりて、 しかも*娑婆の化主 (釈尊) はその請によるがゆゑにすなはち広く浄土の↓*要門を開き、 安楽の能人 (阿弥陀仏) は別意の↓*弘願を顕彰したまふ。
遍攬 あまねく知ること。
然衆生障重取↠悟之者難↠明、雖↠可↢教益多門↡凡惑無↠由↢徧攬↡。遇因↧韋提致↠請、我今楽↣欲往↢生安楽↡、唯願如来教↢我思惟↡教↦我正受↥、然娑婆化主因↢其請↡故、即広開↢浄土之要門↡、安楽能人顕↢彰別意之弘願↡。
・ 要弘二門 1. 要門
その↑要門とはすなはちこの ¬観経¼ の定散二門これなり。 「定」 はすなはち*慮りを息めてもつて心を凝らす。 「散」 はすなはち悪を廃してもつて善を修す。 この二行を*回して往生を求願す。
慮りを… 思いをとどめて心をもっぱら一つの対象に注ぐ。
其要門者、即此¬観経¼定散二門是也。定即息↠慮以凝↠心、散即廃↠悪以修↠善。迴↢斯二行↡求↢願往生↡也。
・ 要弘二門 2. 弘願
▼↑弘願といふは ¬*大経¼ (上・意) に説きたまふがごとし。 ▼「一切善悪の凡夫生ずることを得るものは、 ▲みな*阿弥陀仏の*大願業力に乗じて*増上縁となさざるはなし」 と。
言↢弘願↡者、如↢¬大経¼説↡。一切善悪凡夫得↠生者、莫↠不↧皆乗↢阿弥陀仏大願業力↡為↦増上縁↥也。
・ 密意弘深
▼また仏の*密意弘深なり、 教門暁めがたし。 *三賢・*十聖も測りて闚ふところにあらず。 いはんやわれ*信外の軽毛なり、 あへて旨趣を知らんや。 仰ぎておもんみれば、 釈迦はこの方より*発遣し、 弥陀はすなはちかの国より*来迎したまふ。 かしこに喚ばひここに遣はす、 あに去かざるべけんや。 ただ勤心に法を奉けて、 *畢命を期となして、 この穢身を捨てて▼すなはちかの法性の常楽を証すべし。 これすなはち略して序題を標しをはりぬ。
密意 深いおぼしめし。
信外の軽毛 ここでの信は十信位のこと。 十信の位にも入ることのできない風に吹かれる羽毛のような
凡夫をいう。 →
十信、
菩薩
畢命を期となして 命が終る時を限りとして。
又仏密意弘、教門難↠暁、三賢・十聖弗↢測所↟闚、況我信外軽毛、敢知↢旨趣↡。仰惟釈迦此方発遣、弥陀即彼国来迎、彼喚此遣、豈容↠不↠去也。唯可↧勤心奉↠法畢命為↠期、捨↢此穢身↡即証↦彼法性之常楽↥。此即略標↢序題↡竟。
○釈名門
【6】 第二に次に名を釈すとは、
第二次釈↠名者、
¬経¼ に 「↓仏↓説↓無量寿↓観↓経↓一巻」 とのたまへり。
¬経¼言↢「仏説無量寿観経一巻」↡。
・ 「仏」
「↑*仏」 といふはすなはちこれ*西国 (印度) の正音なり。 この土 (中国) には 「覚」 と名づく。 ↓自覚・↓覚他・↓覚行窮満、 これを名づけて仏となす。
言↢「仏」↡者、乃是西国正音、此土名↠覚。自覚・覚他・覚行窮満、名↠之為↠仏。
「↑自覚」 といふは*凡夫に*簡異す。 これ*声聞は狭劣にして、 ただよく*自利のみありて、 闕けて*利他の大悲なきによるがゆゑなり。
簡異 区別すること。
言↢自覚↡者簡↢異凡夫↡。此由↣声聞狭劣唯能自利闕無↢利他大悲↡故。
「↑覚他」 といふは*二乗に簡異す。 これ*菩薩は智あるがゆゑによく自利し、 悲あるがゆゑによく利他し、 つねによく*悲智双行して有無に着せざるによる。
言↢覚他↡者簡↢異二乗↡。此由↧菩薩有↠智故能自利、有↠悲故能利他、常能悲智双行不↞著↢有無↡也。
「↑覚行窮満」 といふは菩薩に簡異す。 これ如来は*智行すでに窮まり、 *時劫すでに満ちて、 *三位を出過せるによるがゆゑに、 名づけて仏となす。
智行 智慧と修行。
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
三位 凡夫・二乗・菩薩の三つの位。
言↢覚行窮満↡者簡↢異菩薩↡。此由↣如来智行已窮、時劫已満、出↢過三位↡故、名為↠仏。
・ 「説」
「↑説」 といふは口音に陳唱す。 ゆゑに名づけて説となす。 また如来、 *機に対して法を説きたまふこと多種不同なり。 *漸頓よろしきに随ひ、 *隠彰異なることあり。 あるいは*六根通じて説きたまふ。 *相好もまたしかなり。 念に応じ、 縁に随ひてみな証益を蒙る。
隠彰 隠顕に同じ。 文の表にあらわれた意 (彰) と、 文の裏にかくれた意 (隠)。 善導大師の隠顕 (隠彰) はともに真実の説意で、 親鸞聖人が 「化身土文類」 でいわれるような真仮 (真実・方便) を分別する意味ではない。
言↢「説」↡者、口音陳唱、故名為↠説。又如来対↠機説↠法多種不同、漸頓随↠宜隠彰有↠異、或六根通説、相好亦然、応↠念随↠縁皆蒙↢証益↡也。
・ 「無量寿」
【7】 「↑*無量寿」 といふは、
言↢「無量寿」↡者、
・ 「無量寿」 ・ 梵漢相対
すなはちこれこの地 (中国) の漢音なり。 「*南無阿弥陀仏」 といふは、 またこれ*西国 (印度) の正音なり。 また 「南」 はこれ帰、 「無」 はこれ命、 「阿」 はこれ無、 「弥」 はこれ量、 「陀」 はこれ寿、 「仏」 はこれ覚なり。 ゆゑに 「帰命無量寿覚」 といふ。 これすなはち*梵漢相対するに、 その義かくのごとし。
梵漢 梵語 (サンスクリット) と漢語 (中国語)。
乃是此地漢音。言↢南無阿弥陀仏↡者、又是西国正音。又南者是帰、無者是命、阿者是無、弥者是量、陀者是寿、仏者是覚、故言↢帰命無量寿覚↡。此乃梵漢相対其義如↠此。
・ 「無量寿」 ・ 人法並彰
いま 「無量寿」 といふはこれ法、 「覚」 とはこれ人なり。 ↓人法並べ彰す、 ゆゑに阿弥陀仏と名づく。
今言↢無量寿↡者是法、覚者是人、人・法並彰、故名↢阿弥陀仏↡。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳
【8】 また↑人法といふはこれ所観の境なり。 すなはちその二あり。 一には↓*依報、 二には↓*正報なり。
又言↢人・法↡者、是所観之境。即有↢其二↡。一者依報、二者正報。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報
↑依報のなかにつきてすなはちその三あり。
就↢依報中↡即有↢其三↡。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 地下荘厳
一には地下の荘厳、 すなはち一切の*宝幢光明のたがひにあひ*映発する等これなり。
映発 うつり合うこと。
一者地下荘厳、即一切宝幢光明互相映発等是。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 地上荘厳
二には地上の荘厳、 すなはち一切の宝地・池林・宝楼・宮閣等これなり。
二者地上荘厳、即一切宝地池林・宝楼・宮閣等是。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 虚空荘厳
三には虚空の荘厳、 すなはち一切の変化の宝宮・*華網・宝雲・*化鳥・風光の動発せる声楽等これなり。
華網 空中にひろがる飾りあみ。
化鳥 化現の鳥。 阿弥陀仏の変化であるところの鳥。
三者虚空荘厳、即一切変化宝宮・華網・宝雲・化鳥・風光動発声楽等是。
前のごとく三種の差別ありといへども、 みなこれ弥陀浄国の*無漏*真実の*勝相なり。 これすなはち総じて依報の*荘厳を結成す。
勝相 すぐれたありさま。
如↠前雖↠有↢三種差別↡、皆是弥陀浄国無漏真実之勝相。此即総結↢成依報荘厳↡也。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 通別
また依報といふは、 ▲日観より下▲華座観に至るこのかたは、 総じて依報を明かす。 この依報のなかにつきてすなはち通あり別あり。
又言↢依報↡者、従↢日観↡下至↢華座観↡已来、総明↢依報↡。就↢此依報中↡、即有↠通有↠別。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 別
別といふは、 華座の一観はこれその別依なり、 ただ弥陀仏に属す。
言↠別者華座一観是其別依、唯属↢弥陀仏↡也。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 通
余の*上の六観はこれその通依なり、 すなはち*法界の*凡聖に属す。 ただ生ずることを得れば、 ともに同じく受用す。 ゆゑに通といふ。
上の六観 日観・水観・地観・宝樹観・宝池観・宝楼観を指す。
余上六観是其通依、即属↢法界之凡聖↡、但*使↠得↢生者共同受用↡、故言↠通也。
使得生者共同受用 返り点は聖教全書まま。 「生ずる者をして共に同じく受用することを得しむ」。
またこの六のなかにつきてすなはち真あり仮あり。
又就↢此六中↡、即有↠真有↠仮。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 仮
仮といふはすなはち▲日想・▲水想・▲氷想等、 これその仮依なり。 これこの界中の相似可見の境相なるによるがゆゑなり。
言↠仮者即日想・水想・冰想等、是其仮依。由↢是此界中相似可見境相↡故。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 依報 ・ 真
真依といふは、 すなはち▲瑠璃地より下▲宝楼観に至るこのかたは、 これその真依なり。 これかの国の*真実*無漏の可見の境相なるによるがゆゑなり。
言↢真依↡者、即従↢瑠璃地↡下至↢宝楼観↡已来、是其真依。由↢是彼国真実無漏可見境相↡故。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報
二には↑正報のなかにつきてまたその二あり。
二就↢正報中↡、亦有↢其二↡。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 主荘厳
一には▲主荘厳、 すなはち阿弥陀仏これなり。
一者主荘厳、即阿弥陀仏是。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 聖衆荘厳
二には▲聖衆荘厳、 すなはち現にかしこにある衆および十方法界同生のものこれなり。
二者聖衆荘厳、即現在↠彼衆、及十方法界同生者是。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 通別
またこの正報のなかにつきてまた通あり別あり。
又就↢此正報中↡亦有↠通有↠別。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 別
別といふはすなはち阿弥陀仏これなり。 すなはちこの別のなかにまた真あり仮あり。
言↠別者即阿弥陀仏是也。即此別中亦有↠真有↠仮。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 別 ・ 仮
仮正報といふはすなはち第八の▲像観これなり。 ▲観音・勢至等もまたかくのごとし。 これ衆生障重く*染惑処深きによりて、 仏 (釈尊)、 たちまちに*真容を想はんに、 顕現するに由なきことを恐れたまふがゆゑに、 *真像を仮立してもつて*心想を住めしめ、 かの仏に同じてもつて境を証せしめたまふ。 ゆゑに仮正報といふ。
染惑 煩悩のこと。
真容 (阿弥陀仏の) 真身。
真像 真身を写した形像。
心想 観想する心のはたらき。
言↢仮正報↡者、即第八像観是也。観音・勢至等亦如↠是。此由↢衆生障重染惑処↡、仏恐↧乍想↢真容↡無↞由↢顕現↡故、使↧仮↢立真像↡以住↢心想↡、同↢彼仏↡以証↞境。故言↢仮正報↡也。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 別 ・ 真
真正報といふはすなはち第九の▲真身観これなり。 これ前の仮正によりて、 やうやくもつて乱想を息めて、 心眼開くることを得て、 ほぼかの方の清浄*二報、 種々の荘厳を見て、 もつて*昏惑を除く。 障を除くによるがゆゑに、 かの真実の境相を見ることを得。
昏惑 凡夫の無智。
言↢真正報↡者、即第九真身観是也。此由↢前仮正↡、漸以息↢於乱想↡、心眼得↠開、粗見↢彼方清浄二報、種種荘厳↡、以除↢昏惑↡。由↠除↠障故、得↠見↢彼真実之境相↡也。
・ 「無量寿」 ・ 二報荘厳 ・ 正報 ・ 通
通正報といふはすなはち▲観音聖衆等以下これなり。
言↢通正報↡者、即観音・*聖衆等已下是也。
聖衆 大派依用本では 「勢至」。
向よりこのかたいふところの通別・真仮は、 まさしく依正二報を明かす。
向来所↠言通別・真仮者、正明↢依正二報↡也。
・ 「観」
【9】 「↑観」 といふは照なり。 つねに浄信心の手をもつて、 もつて智慧の輝を持ち、 かの弥陀の*正依等の事を照らす。
言↢「観」↡者照也。常以↢浄信心手↡、以持↢智慧之輝↡、照↢彼弥陀正依等事↡。
・ 「経」
「↑経」 といふは*経なり。 経よく*緯を持ちて*疋丈を成ずることを得て、 その丈用あり。 経よく法を持ちて*理事相応し、 定散機に随ひて義*零落せず。 よく*修趣のものをして、 かならず教行の縁因によりて、 願に乗じて往生してかの*無為の法楽を証せしむ。 すでにかの国に生じぬれば、 さらに畏るるところなし。 長時に行を起して、 果、 菩提を極む。 法身*常住なること、 たとへば虚空のごとし。 よくこの益を招く。 ゆゑにいひて経となす。
経・緯 たて糸とよこ糸。
疋丈 布帛。 織物。
理事相応 教 (事) と教に説かれた法義 (理) とがあい離れないこと。
零落 とりこぼすこと。
修趣のもの 仏道を修め歩む者。
無為の法楽 無為
涅槃のさとりの楽しみ。 →
涅槃
言↢「経」↡者経也。経能持↠緯得↠成↢*匹丈↡有↢其丈用↡。経能持↠法、理事相応、定散随↠機義不↢零落↡。能令↧修趣之者、必藉↢教行之縁因↡、乗↠願往生、証↦彼無為之法楽↥。既生↢彼国↡更無↠所↠畏。長時起↠行果極↢菩提↡。法身常住、比若↢虚空↡。能招↢此益↡、故曰為↠経。
匹 鎌倉時代刊本では 「疋」。
・ 「一巻」
「↑一巻」 といふは、 この ¬観経¼ 一部は*両会の正説なりといふといへども、 総じてこの一を成ず。 ゆゑに一巻と名づく。
両会の正説 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した王宮会と、 阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮会での仏の説法を再説した耆闍会。
言↢「一巻」↡者、此¬観経¼一部、雖↠言↢両会正説↡、総成↢斯一↡、故名↢一巻↡。
ゆゑに 「仏説無量寿観経一巻」 といふ。 これすなはちその名義を釈しをはりぬ。
故言↢「仏説無量寿観経一巻」↡。此即釈↢其名義↡竟。
○宗教門
【10】三に▲宗旨の不同、 教の大小を弁釈すとは、
三弁↢釈宗旨不同、教之大小↡者、
・ 宗旨不同
¬*維摩経¼ のごときは*不思議解脱をもつて宗となし、 ¬*大品経¼ のごときは*空慧をもつて宗となす。 この例一にあらず。
不思議解脱 思惟を超えたさとりの境地。
空慧 一切のものには実体がないという空の道理をさとる智慧。
如↢¬維摩経¼↡以↢不思議解脱↡為↠宗、如↢¬大品経¼↡以↢空慧↡為↠宗。此例非↠一。
・ 宗旨不同 ・ 念観両宗
▼いまこの ¬観経¼ はすなはち*観仏三昧をもつて宗となし、 また*念仏三昧をもつて宗となす。 一心に*回願して浄土に往生するを*体となす。
回願 浄土を願生すること。
体 ここでは観仏三昧および念仏三昧の体 (本質) という意。
今此¬観経¼即以↢観仏三昧↡為↠宗、亦以↢念仏三昧↡為↠宗。一心迴願往↢生浄土↡為↠体。
・ 教之大小
【11】教の大小といふは、
言↢教之大小↡者、
問ひていはく、 この ¬経¼ は*二蔵のなかにはいづれの蔵の摂なる。 *二教のなかにはいづれの教の収なる。
問曰。此¬経¼二蔵之中何蔵摂、二教之中何教収。
答へていはく、 いまこの ¬観経¼ は*菩薩蔵の収なり。 *頓教の摂なり。
答曰。今此¬観経¼菩薩蔵収、頓教摂。
○説人門
【12】四に▲説人の差別を弁ずとは、
四弁↢説人差別↡者、
おほよそ諸経の起説五種を過ぎず。 一には仏の説、 二には*聖弟子の説、 三には*天仙の説、 四には*鬼神の説、 五には*変化の説なり。
聖弟子 舎利弗等の仏弟子。
天仙 梵天・帝釈天等の護法の善神や仏法に帰依した仙人。
変化 変化身のこと。 仏・菩薩がすがたを変えて仮に現れたもの。
凡諸経起説不↠過↢五種↡。一者仏説、二者聖弟子説、三者天仙説、四者鬼神説、五者変化説。
いまこの ¬観経¼ はこれ仏の自説なり。
今此¬観経¼是仏自説。
問ひていはく、 仏いづれの処にかましまして説き、 何人のためにか説きたまへる。
問曰。仏在↢何処↡説、為↢何人↡説。
答へていはく、 仏*王宮にましまして、 *韋提等のために説きたまへり。
王宮 王舎城の宮殿。
答曰。仏在↢王宮↡為↢韋提等↡説。
○定散門
・ 三重六説
【13】五に*定散両門を*料簡するにすなはちその六あり。
五料↢簡定散両門↡、即有↢其六↡。
一には*能請のひとを明かす、 すなはちこれ韋提なり。 二には*所請のひとを明かす、 すなはちこれ世尊なり。 三には能説のひとを明かす、 すなはちこれ如来なり。 四には所説を明かす、 すなはちこれ定散二善十六観門なり。 五には*能為を明かす、 すなはちこれ如来なり。 六には*所為を明かす、 すなはち韋提等これなり。
能請のひと 教えを説くよう懇請した人。
所請のひと 懇請を受けた人。
能為 教化を行った人。
所為 教化を受けた人。
一明↢能請者↡、即是韋提。二明↢所請者↡、即是世尊。三明↢能説者↡、即是如来。四明↢所説↡、即是定散二善十六観門。五明↢能為↡、即是如来。六明↢所為↡、即韋提等是也。
・ 散善自開
【14】問ひていはく、 定散二善はたれの*致請による。
致請 懇請。
問曰。定散二善因↢誰致請↡。
答へていはく、 定善の一門は韋提の致請にして、 散善の一門はこれ仏の自説なり。
答曰。定善一門韋提致請、散善一門是仏自説。
問ひていはく、 いぶかし、 定散二善は出でていづれの文にかある。 いますでに教備はりて虚しからず、 いづれの*機か受くることを得る。
問曰。未審、定散二善出在↢何文↡、今既教備不↠虚、何機得↠受。
答へていはく、 解するに二義あり。
答曰。解有↢二義↡。
・ 何機得受
一には*謗法と無信と、 *八難および*非人、 これらは受けず。 これすなはち*朽林・▲碩石、 生潤の期あるべからず。 これらの衆生はかならず受化の義なし。 これを除きて以外は、 一心に信楽して往生を求願すれば、 上*一形を尽し下十念を収む。 仏の*願力に乗じてみな往かざるはなし。 これすなはち上のいづれの機か受くることを得るの義を答へをはりぬ。
非人 人間以外の天・竜・
夜叉などの鬼神をいう。 →
補註8
朽林碩石… 雨を得ても朽ちた林は芽を出すことがなく、 大きな石は中まで潤うことがないという意。
一者謗法与↢無信↡、八難及非人、此等不↠受也。斯乃朽林・碩石不↠可↠有↢生潤之期↡、此等衆生必無↢受化之義↡。除↠斯已外、一心信楽求↢願往生↡、上尽↢一形↡下収↢十念↡、乗↢仏願力↡莫↠不↢皆往↡。此即答↢上何機得受義↡竟。
・ 出在何文
二には出でていづれの文にかあるとはすなはち↓*通あり↓*別あり。
通 一般的な諸仏の国土。
別 特別な阿弥陀仏の国土。
二出在何文者、即有↠通有↠別。
・ 出在何文 ・ 通
「↑通」 といふはすなはち三義の不同あり。 なんとなれば、 一には 「▲韋提白仏唯願↓為我広説無憂悩処」 よりは、 すなはちこれ韋提、 心を標してみづからために通じて所求を請ふ。 二には 「▲唯願仏日教我観於清浄業処」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために通じて*去行を請ふ。 三には 「▲世尊光台現国」 よりは、 すなはちこれ前の通請の 「↑為我広説」 の言に酬ゆ。 三義の不同ありといへども、 前の通を答へをはりぬ。
去行 仏国土に生れるための行。
言↠通者即有↢三義不同↡。何者、一従↢「韋提白仏唯願為我広説無憂悩処」↡者、即是韋提標↠心自為通請↢所求↡。二従↢「唯願仏日教我観於清浄業処」↡者、即是韋提自為通請↢去行↡。三従↢「世尊光台現国」↡、即是酬↢前通請「為我広説」之言↡。雖↠有↢三義不同↡、答↢前通↡竟。
・ 出在何文 ・ 別
「↑別」 といふはすなはち二義あり。 一には 「▲韋提白仏我今楽生極楽世界弥陀仏所」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために別して所求を選ぶ。 二には 「▲唯願教我思惟教我正受」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために*別行を修せんと請ふ。 二義の不同ありといへども、 上の別を答へをはりぬ。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
言↠別者、則有↢二義↡。一従↢「韋提白仏我今楽生極楽世界弥陀仏所」↡者、即是韋提自為別選↢所求↡。二従↢「唯願教我思惟教我正受」↡者、即是韋提自為請↠修↢別行↡。雖↠有↢二義不同↡、答↢上別↡竟。
・ 定善散善
これより以下は、 次に定散両門の義を答ふ。
従↠此已下次答↢定散両門之義↡。
問ひていはく、 いかなるをか*定善と名づけ、 いかなるをか*散善と名づくる。
問曰。云何名↢定善↡、云何名↢散善↡。
答へていはく、 日観より下十三観に至るこのかたを名づけて定善となし、 *三福・*九品を名づけて散善となす。
答曰。従↢日観↡下至↢十三観↡已来名為↢定善↡、三福九品名為↢散善↡。
問ひていはく、 定善のなかになんの差別かある、 出でていづれの文にかある。
問曰。定善之中有↢何差別↡、出在↢何文↡。
答へていはく、 いづれの文にか出づるといふは、 ¬経¼ (観経) に 「▲↓教我思惟↓教我正受」 とのたまへり、 すなはちこれその文なり。 差別といふはすなはち二義あり。 一にはいはく↓思惟、 二にはいはく↓正受なり。
答曰。出↢何文↡者、¬経¼言↢「教我思惟教我正受」↡、即是其文。言↢差別↡者即有↢二義↡。一謂思惟、二謂正受。
・ 定善散善 ・ 思惟
「↑思惟」 といふはすなはちこれ観の*前方便なり。 かの国の依正二報総別の相を思想す。 すなはち地観の文 (観経) のなかに説きて、 「▲かくのごとく想ふものを名づけてほぼ極楽国土を見るとなす」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我思惟」 の一句に合す。
言↢思惟↡者、即是観前方便、思↢想彼国依正二報総別相↡也。即地観文中説言↤「如↠此想者名為↣粗見↢極楽国土↡。」即合↢上「教我思惟」一句↡。
・ 定善散善 ・ 正受
「↑正受」 といふは、 *想心すべて息み、 *縁慮並び亡じて、 *三昧相応するを名づけて正受となす。 すなはち地観の文のなかに説きて、 「▲もし三昧を得れば、 かの国地を見ること*了々分明なり」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我正受」 の一句に合す。
想心 観想する心の働き。
縁慮 観ずる対象をとらえようと思いはかる心。
了々分明 はっきりとあきらかな。
言↢正受↡者、想心都息縁慮並亡、三昧相応名為↢正受↡。即地観文中説言↧「若得↢三昧↡、見↢彼国地↡了了分明」↥。即合↢上「教我正受」一句↡。
定散に二義の不同ありといへども、 総じて上の問を答へをはりぬ。
定散雖↠有↢二義不同↡、総答↢上問↡竟。
・ 対破楷定
【15】また向よりこのかたの解は諸師と不同なり。 *諸師は思惟の一句をもつて、 もつて*三福・*九品に合して、 もつて散善となし、 正受の一句、 もつて通じて十六観に合して、 もつて定善となす。 かくのごとき解はまさに謂ふにしからず。 なんとなれば、 ¬*華厳経¼ (意) に、 「思惟正受とはただこれ*三昧の異名なり」 と説きたまふがごときは、 この地観の文と同じ。 この文をもつて証す、 あに散善に通ずることを得んや。
諸師は… 諸師とは浄影寺慧遠、 天台大師智顗、 嘉祥大師吉蔵等であるが、 ここではおもに慧遠の ¬観経義疏¼ に見える説を指す。
又向来解者、与↢諸師↡不↠同。諸師将↢思惟一句↡、用合↢三福九品↡、以為↢散善↡、正受一句用、通合↢十六観↡、以為↢定善