仏説無量寿経 巻上
*曹魏*天竺*三蔵*康僧鎧訳
曹魏 三国時代の魏 (220-265) の別称。 王室の姓をとって曹魏と呼ぶ。
◎序分 ○証信序(聞信時主処成就)
【1】 われ聞きたてまつりき、 かくのごとく。 ひと時、 仏、 *王舎城*耆闍崛山のうちに住したまひき。
我聞如↠是。一時仏、住↢王舎城耆闍崛山中↡、
◎序分 ○証信序(衆成就) 1 声聞衆
*大比丘の衆、 万二千人と倶なりき。 一切は大聖にして、 *神通すでに達せり。
大比丘の衆 大いなる比丘の集まり。 後に列挙する菩薩衆に対すれば声聞衆である。
与↢大比丘衆万二千人↡倶。一切大聖神通已達。
その名をば、 尊者*了本際・尊者*正願・尊者*正語・尊者*大号・尊者*仁賢・尊者*離垢・尊者*名聞・尊者*善実・尊者*具足・尊者*牛王・尊者*優楼頻蠃迦葉・尊者*伽耶迦葉・尊者*那提迦葉・尊者*摩訶迦葉・尊者*舎利弗・尊者*大目犍連・尊者*劫賓那・尊者*大住・尊者*大浄志・尊者*摩訶周那・尊者*満願子・尊者*離障・尊者*流潅・尊者*堅伏・尊者*面王・尊者*異乗・尊者*仁性・尊者*嘉楽・尊者*善来・尊者*羅云・尊者*阿難といひき。
其名曰↢尊者了本際・尊者正願・尊者正語・尊者大号・尊者仁賢・尊者離垢・尊者名聞・尊者善実・尊者具足・尊者牛王・尊者優楼頻蠃迦葉・尊者伽耶迦葉・尊者那提迦葉・尊者摩訶迦葉・尊者舎利弗・尊者大目犍連・尊者劫賓那・尊者大住・尊者大浄志・尊者摩訶周那・尊者満願子・尊者離障・尊者流潅・尊者堅伏・尊者面王・尊者異乗・尊者仁性・尊者嘉楽・尊者善来・尊者羅云・尊者阿難↡。
みなこれらのごとき*上首たるものなり。
上首 教団の最上位にあるものをいう。
皆如↠斯等上首者也。
◎序分 ○証信序(衆成就) 2 菩薩衆
▼また*大乗のもろもろの*菩薩と倶なりき。
又与↢大乗衆菩薩↡倶。
1. 出家菩薩
*普賢菩薩・*妙徳菩薩・慈氏菩薩(*弥勒)等の、 この*賢劫のなかの一切の菩薩、
暜賢菩薩・玅徳菩薩・慈氏菩薩等此賢劫中一切菩薩、
2. 在家菩薩
また賢護等の十六*正士、 善思議菩薩・信慧菩薩・空無菩薩・神通華菩薩・光英菩薩・慧上菩薩・智幢菩ぼ薩さつ・寂根じゃくこん菩ぼ薩さつ・願がん慧ね菩ぼ薩さつ・香象こうぞう菩ぼ薩さつ・宝英ほうよう菩ぼ薩さつ・中住ちゅうじゅう菩ぼ薩さつ・制行せいぎょう菩ぼ薩さつ・解げ脱だつ菩ぼ薩さつなり。
正士 正道を求める
大だい士じ。
菩ぼ薩さつのこと。
又賢護等十六正士、善思議菩薩・信慧菩薩・空無菩薩・神通華菩薩・光英菩薩・慧上菩薩・智幢菩薩・寂根菩薩・願慧菩薩・香象菩薩・宝英菩薩・中住菩薩・制行菩薩・解脱菩薩。
◎序分 ○証信序(衆成就) 3 八相化儀
【2】 みな*普ふ賢げん大だい士じの徳とくに遵したがへり。 もろもろの菩ぼ薩さつの無む量りょうの*行願ぎょうがんを具ぐし、 一切いっさい功く徳どくの法ほうに安住あんじゅうす。 十方じっぽうに遊歩ゆぶして*権方便ごんほうべんを行ぎょうじ、 *仏法蔵ぶっぽうぞうに入いりて*彼ひ岸がんを究竟くきょうし、 無む量りょうの世せ界かいにおいて*等覚とうがくを成じょうずることを現げんじたまふ。
普賢大士の徳に遵へり 普賢菩薩のように、 慈悲行を実践するという意。
行願 菩薩の修する四摂ししょう・六度等の行と四弘誓願しぐぜいがん・十大願等の願。
仏法蔵 真如しんにょ法ほっ性しょうのこと。
皆遵↢暜賢大士之徳↡、具↢諸菩薩無量行願↡、安↢住一切功徳之法↡。遊↢歩十方↡、行↢権方便↡、入↢仏法蔵↡、究↢竟彼岸↡、於↢無量世界↡、現↠成↢等覚↡。
1. 降兜率相・託胎相
*兜率天とそつてんに処しょして*正しょう法ぼうを*弘ぐ宣せんし、 かの天てん宮ぐを捨すてて*神じんを母も胎たいに降くだす。
神 神識じんしき。 こころ。
処↢兜率天↡、弘↢宣正法↡、捨↢彼天宮↡、降↢神母胎↡、
2. 出胎相
右脇うきょうより生しょうじて七しち歩ぶを行ゆくことを現げんず。 *光こう明みょうは*顕耀けんようにして、 あまねく*十方じっぽうを照てらし、 無む量りょうの仏ぶつ土どは、 *六種ろくしゅに震動しんどうす。 声こえを挙あげてみづから称となふ、 「われまさに世よにおいて無上尊むじょうそんとなるべし」 と。 *釈しゃく・梵ぼんは奉侍ぶじし、 天てん・人にんは*帰き仰ごうす。
従↢右脇↡生、現↠行↢七歩↡。光明顕曜暜照↢十方↡、無量仏土、六種震動。挙↠声自称、吾当↣於↠世為↢無上尊↡。釈梵奉侍、天人帰仰。
3. 処宮相
算さん計げ・文芸もんげい・*射しゃ御ごを示じ現げんして、 博ひろく*道術どうじゅつを綜ならひ、 *群籍ぐんじゃくを*貫練かんれんしたまふ。 後ご園おんに遊あそびて武ぶを講こうじ芸げいを試こころみる。 宮中くちゅう*色しき味みのあひだに処しょすることを現げんじ、
色味 五欲 (色しき・声しょう・香こう・味み・触そくを対象とする欲) の中の二つを挙げて、 欲望を代表的に示す。
示↢現算計・文芸・射御↡、博↢綜道術↡、貫↢練羣籍↡。遊↢於後園↡、講↠武試↠芸。現↠処↢宮中色味之間↡、
4. 出家相
老病死ろうびょうしを見みて世よの*非常ひじょうを悟さとる。 国くにと財ざいと位くらいを棄すてて山やまに入いりて道どうを学がくす。 服乗ぶくじょうの白馬びゃくめ・宝冠ほうかん・*瓔珞ようらく、 これを遣つかはして還かえさしむ。 珍妙ちんみょうの衣ころもを捨すてて法服ほうぶくを着ちゃくし、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょし、 樹じゅ下げに端たん坐ざし、 勤ごん苦くすること六年ろくねん、 行ぎょう、 *所応しょおうのごとくまします。
見↢老・病・死↡、悟↢世非常↡、棄↢国財位↡、入↠山学↠道。服乗白馬・宝冠・瓔珞、遣↠之令↠還、捨↢珍玅衣↡、而著↢法服↡、剃↢除鬚髪↡、端↢坐樹下↡。勤苦六年、行如↢所応↡。
5. 降魔相
*五濁ごじょくの*刹せつに現げんじて*群生ぐんじょうに随順ずいじゅんす。 塵垢じんくありと示しめして*金こん流るに沐浴もくよくす。 天てんは樹きの枝えだを按おさへて池いけより攀よぢ出いづることを得えしむ。 *霊禽りょうきん、 *翼従よくじゅうして*道場どうじょうに往詣おうげいす。 *吉祥きっしょう、 *感徴かんちょうして*功こう祚そを*表章ひょうしょうす。 哀あわれんで施せ草そうを受うけて仏樹ぶつじゅの下もとに敷しき、 *跏趺かふして坐ざす。 大光明だいこうみょうを奮ふるつて、 *魔ま知しらしむ。 魔ま、 *官属かんぞくを率ひきゐて、 来きたりて逼せめ試こころみる。 制せいするに智ち力りきをもつてして、 みな*降伏ごうぶくせしむ。
非常 無常に同じ。 常ならざること。
金流 清流。 釈尊の場合では、 ブッダガヤー(Buddha- gayā)に近いナイランジャナー(Nairañjanā)河を指す。
霊禽 霊鳥。 不思議な鳥。
翼従 両翼のように左右に従うこと。
吉祥 仏陀の成じょう道どうに際し、 草を捧げた童子の名。 その草も吉祥という。
感徴 仏が成道するという奇端きずいを感得すること。
功祚 仏のさとり。 仏果。 修行の功く徳どくによって成仏したことをたたえていう語。
官属 一族の者。 配下の者。
現↢五濁刹↡、随↢順羣生↡、示↠有↢塵垢↡、沐↢浴金流↡。天按↢樹枝↡、得↢攀出↟池。霊禽翼従、往↢詣道場↡、吉祥感徴、表↢章功祚↡。哀受↢施艸↡、敷↢仏樹下↡、跏趺而坐。奮↢大光明↡、使↢魔知↟之。魔率↢官属↡、而来逼試。制以↢智力↡、皆令↢降伏↡。
6. 成道相
微妙みみょうの法ほうを得えて最正覚さいしょうがくを成なる。
得↢微玅法↡、成↢最正覚↡。
7. 転法輪相
釈しゃく・梵ぼん、 祈き勧かんして*転法輪てんぽうりんを請しょうず。 ˆ成じょう道どうせられし菩ぼ薩さつはˇ ▼仏ぶつの遊歩ゆぶをもつてし、 仏ぶつの吼くをもつて吼くす。 法ほう鼓くを扣たたき、 法ほう螺らを吹ふき、 法剣ほうけんを執とり、 *法幢ほうどうを建たて、 法雷ほうらいを震ふるひ、 法電ほうでんを曜かがやかし、 法ほう雨うを澍そそぎ、 法ほう施せを演のぶ。 つねに法音ほうおんをもつて、 もろもろの*世せ間けんを覚かくせしむ。 光こう明みょう、 あまねく無む量りょうの仏ぶつ土どを照てらし、 一切いっさい世せ界かい、 六種ろくしゅに震動しんどうす。 総そうじて魔ま界かいを摂せっし、 魔まの宮く殿でんを動どうず。 衆しゅ魔ま、 *慴怖しょうふして帰き伏ぶくせざるはなし。 邪網じゃもうを*掴裂かくれつし、 *諸見しょけんを消滅しょうめつし、 もろもろの*塵労じんろうを散さんじ、 もろもろの*欲塹よくぜんを壊やぶる。 法城ほうじょうを厳ごん護ごして法門ほうもんを開闡かいせんす。 垢汚くおを洗濯せんじょくして清白しょうびゃくを顕明けんみょうす。 仏法ぶっぽうを光こう融ゆし、 正化しょうけを宣せん流るす。 国くにに入いりて*分ぶん衛えして、 もろもろの豊ぶ膳ぜんを獲え、 功く徳どくを貯たくわへしめ、 *福田ふくでんを示しめす。 法ほうを宣のべんと欲ほっして欣笑ごんしょうを現げんず。 もろもろの法薬ほうやくをもつて*三さん苦くを救療くりょうし、 *道どう意い無む量りょうの功く徳どくを顕現けんげんす。 菩ぼ薩さつに*記きを授さずけ、 *等正覚とうしょうがくを成ならしむ。
転法輪 仏が教法の輪を転ずること。
法幢 真理の旗。
諸見 もろもろの悪い見解。
分衛 梵語ピンダ・パータ(piņđa-pāta)の音写。 乞こつ食じき・托鉢の意。
釈梵祈勧、請↠転↢法輪↡。以↢仏遊歩↡、仏吼而吼。扣↢法鼓↡、吹↢法蠃↡、執↢法劒↡、建↢法幢↡、震↢法雷↡、曜↢法電↡、澍↢法雨↡、演↢法施↡、常以↢法音↡覚↢諸世間↡。光明暜照↢無量仏土↡、一切世界、六種震動。総摂↢魔界↡、動↢魔宮殿↡。衆魔慴怖、莫↠不↢帰伏↡。掴↢裂邪網↡、消↢滅諸見↡、散↢諸塵労↡、壊↢諸欲塹↡。厳↢護法城↡、開↢闡法門↡。洗↢濯垢汙↡、顕↢明清白↡。光↢融仏法↡、宣↢流正化↡。入↠国分衛、獲↢諸豊膳↡、貯↢功徳↡、示↢福田↡。欲↠宣↠法現↢欣笑↡。以↢諸法薬↡、救↢療三苦↡。顕↢現道意無量功徳↡、授↢菩薩記↡、成↢等正覚↡。
8. 入涅槃相
*滅めつ度どを示じ現げんすれども、 *拯済じょうさいすること極きわまりなし。 *諸しょ漏ろを消除しょうじょして、 もろもろの*徳本とくほんを植うゑ、 *功く徳どくを具ぐ足そくせしむること、 微妙みみょうにして量はかりがたし。
諸漏 もろもろの煩惱。
示↢現滅度↡、拯済無↠極。消↢除諸漏↡、植↢衆徳本↡、具↢足功徳↡、微玅難↠量。
◎序分 ○証信序(衆成就) 4 重列諸徳
1. 遊化諸仏国
諸仏しょぶつの国くにに遊あそびてあまねく*道教どうきょうを現げんず。 その修行しゅぎょうするところ、 清浄しょうじょうにして穢えなし。 たとへば幻げん師しのもろもろの異い像ぞうを現げんじて、 男おとことなし、 女おんなとなして、 変へんぜざるところなく、 *本学ほんがく明了みょうりょうにして*意こころの所しょ為いにあるがごとし。 このもろもろの菩ぼ薩さつ、 またまたかくのごとし。 一切いっさいの法ほうを学がくして*貫綜かんそう縷る練れんす。 *所住安諦しょじゅうあんたいにして化けを致いたさざることなし。 無む数しゅの仏ぶつ土どにみなことごとくあまねく現げんず。 いまだかつて*慢まん恣しせず。 衆しゅ生じょうを*愍傷みんしょうす。 かくのごときの法ほう、 一切いっさい具ぐ足そくせり。 菩ぼ薩さつの経典きょうてん、 要妙ようみょうを*究暢くちょうし、 名称みょうしょうあまねく至いたりて十方じっぽうを*導どう御ごす。 無む量りょうの諸仏しょぶつ、 ことごとくともに護ご念ねんしたまふ。 *仏ぶつの所住しょじゅうは、 みなすでに住じゅうすることを得えたり。 *大聖だいしょうの所立しょりゅうは、 しかもみなすでに立りゅうす。 如来にょらいの導どう化けは、 おのおのよく宣せん布ぷして、 もろもろの菩ぼ薩さつのために、 しかも大だい師しとなる。 甚深じんじんの*禅ぜん・慧えをもつて衆人しゅにんを開導かいどうす。 *諸法しょほうの性しょうを通さとり、 衆しゅ生じょうの相そうに達たっせり。 あきらかに諸国しょこくを了さとりて諸仏しょぶつを供く養ようしたてまつる。 その身みを化け現げんすること、 なほ*電光でんこうのごとし。
道教 仏道の教え。
本学 幻師 (幻術者) の学問を指す。
貫綜縷練 徹底的に学び通達すること。
所住安諦 学んだ教えの上に心を落ち着かせて、 安らかになること。
仏の所住 仏の具そなえる功く徳どく。
大聖の所立 大聖は仏のこと。 仏の清浄しょうじょうな行い。
禅慧 禅定ぜんじょうと智慧ちえ。
諸法の性 あらゆる存在の本性。
遊↢諸仏国↡、暜現↢道教↡。其所↢修行↡、清浄無穢。譬如↧幻師現↢衆異像↡、為↠男為↠女、無↠所↠不↠変、本学明了、在↦意所為↥。此諸菩薩、亦復如↠是。学↢一切法↡、貫綜縷練、所住安諦、靡↠不↠致↠化。無数仏土、皆悉暜現。未↢曽慢恣↡、愍↢傷衆生↡。如↠是之法、一切具足。菩薩経典、究↢暢要玅↡、名称暜至、導↢御十方↡。無量諸仏、咸共護念。仏所住者、皆已得↠住、大聖所立、而皆已立。如来導化、各能宣布、為↢諸菩薩↡、而作↢大師↡、以↢甚禅慧↡、開↢導衆人↡。通↢諸法性↡、達↢衆生相↡。明了↢諸国↡、供↢養諸仏↡。化↢現其身↡、猶如↢電光↡。
2. 菩薩自利
よく*無畏むいの網もうを学がくして、 あきらかに*幻げん化けの法ほうを了りょうす。 *魔ま網もうを壊え裂れつし、 もろもろの*纏縛てんばくを解とく。 *声しょう聞もん・*縁覚えんがくの地じを超越ちょうおつして、 *空くう・無む相そう・無む願がん三昧ざんまいを得えたり。 よく*方便ほうべんを立りゅうして*三乗さんじょうを顕けん示じす。 この*中下ちゅうげにおいて、 しかも滅めつ度どを現げんずれども、 また所しょ作さなく、 また所しょ有うなし。 不起ふき・不ふ滅めつにして平等びょうどうの法ほうを得えたり。 無む量りょうの*総そう持じ、 百千ひゃくせんの*三昧さんまいを具ぐ足そくし成就じょうじゅす。 *諸根しょこん智慧ちえ、 *広こう普ふ寂定じゃくじょうにして、 深ふかく菩ぼ薩さつの法蔵ほうぞうに入いり、 *仏華厳三昧ぶつけごんざんまいを得えて一切いっさいの経典きょうてんを*宣暢せんちょうし演説えんぜつす。 深定門じんじょうもんに住じゅうして、 ことごとく現在げんざいの無む量りょうの諸仏しょぶつを覩みたてまつること、 一念いちねんのあひだに周遍しゅうへんせざることなし。
幻化の法 すべての事物は因縁いんねんによって生起したもので、 それ自身に固有な本性がないから幻のようである、 という道理。
纏縛 煩惱ぼんのうの異名。
中下 縁覚えんがくと声しょう聞もん。
諸根智慧 一切衆しゅ生じょうの素質能力を知りわける智慧。
広普寂定 菩薩が無量の法門を説法するよりどころとなる禅定ぜんじょう。
仏華厳三昧 広普寂定の異名。
善学↢無畏之網↡、暁了↢幻化之法↡。壊↢裂魔網↡、解↢諸纏縛↡。超↢越声聞・縁覚之地↡、得↢空・無相・無願三昧↡。善立↢方便↡、顕↢示三乗↡、於↢此中下↡、而現↢滅度↡。亦無↢所作↡、亦無↢所有↡。不起不滅、得↢平等法↡。具↢足成↣就無量総持、百千三昧↡。諸根智慧、広暜寂定、入↢菩薩法蔵↡、得↢仏華厳三昧↡、宣↢暢演↣説一切経典↡。住↢定門↡、悉覩↢現在無量諸仏↡。一念之頃、無↠不↢周徧↡。
3. 菩薩利他
もろもろの*劇難ぎゃくなんと、 もろもろの*閑げんと不ふ閑げんとを済すくひて、 真実しんじつの際さいを分別ふんべつし顕けん示じす。 もろもろの如来にょらいの*弁才べんざいの智ちを得え、 もろもろの言音ごんのんを入さとりて一切いっさいを開かい化けす。 世せ間けんのもろもろの*所しょ有うの法ほうに超過ちょうかして、 心こころつねにあきらかに度世どせの道どうに住じゅうす。 一切いっさいの万物まんもつにおいて、 しかも随ずい意い自じ在ざいなり。 もろもろの*庶類しょるいのために*不請ふしょうの友ともとなる。 群生ぐんじょうを荷負かぶしてこれを重担じゅうたんとす。 如来にょらいの甚深じんじんの法蔵ほうぞうを*受じゅ持じし、 *仏種性ぶっしゅしょうを護まもりて、 つねに絶たえざらしむ。 大だい悲ひを興おこして衆しゅ生じょうを愍あわれみ、 慈じ弁べんを演のべ、 *法眼ほうげんを授さずく。 *三趣さんしゅを杜ふさぎ、 善門ぜんもんを開ひらく。 不請ふしょうの法ほうをもつてもろもろの*黎庶れいしょに施ほどこすこと、 純孝じゅんきょうの子この父母ぶもを愛敬あいきょうするがごとし。 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて視みそなはすこと、 自己じこのごとし。 一切いっさいの*善本ぜんぽんみな彼ひ岸がんに度どす。 ことごとく諸仏しょぶつの無む量りょうの功く徳どくを獲う。 智慧ちえ聖明しょうみょうなること不可思議ふかしぎなり。
劇難 八難処の中で痛苦の最も劇しい三悪趣さんまくしゅをいう。
閑と不閑 苦悩が薄くて仏道を求めるのに暇のある者と、 ひどく苦に迫られて仏道を求める暇のない者。
所有の法 有為うい法ほう。 迷いによって現れたあらゆる世間の事柄。
庶類 衆しゅ生じょうのこと。
不請の友 衆生が請願しなくとも、 衆生のために大いなる慈しみをもってその親友となる人。
仏種性 一切衆生が本来的にもっている仏性ぶっしょうのこと。
黎庶 衆生のこと。
済↢諸劇難諸閑不閑↡、分↢別顕↣示真実之際↡、得↢諸如来弁才之智↡、入↢衆言音↡、開↢化一切↡。超↢過世間諸所有法↡、心常諦住↢度世之道↡。於↢一切万物↡、而随意自在。為↢諸庶類↡、作↢不請之友↡、荷↢負羣生↡、為↢之重担↡。受↢持如来甚法蔵↡、護↢仏種性↡、常使↠不↠絶。興↢大悲↡、愍↢衆生↡、演↢慈弁↡、授↢法眼↡。杜↢三趣↡、開↢善門↡、以↢不請之法↡、施↢諸黎庶↡、如↣純孝之子愛↢敬父母↡。於↢諸衆生↡、視若↢自己↡。一切善本、皆度↢彼岸↡、悉獲↢諸仏無量功徳↡。智慧聖明不可思議。
4. 総結
かくのごときらの菩ぼ薩さつ大だい士じ、 *称計しょうげすべからず、 一いち時じに来らい会えす。
如↠是之等菩薩大士、不↠可↢称計↡。一時来会。
◎序分 ○発起序 1 五徳瑞現
【3】 その時ときに、 *世せ尊そん、 *諸根しょこん悦えつ予よし、 姿し色しき清浄しょうじょうにして*光顔こうげん巍々ぎぎとまします。
諸根悦予 諸根は眼・耳・鼻・舌・身の五根 (五種の感覚器官)、 悦予はよろこぶこと。
光顔巍々 光り輝く顔が気高くすぐれているさま。
爾時世尊、諸根悦予、姿色清浄、光顔巍巍。
尊者そんじゃ阿あ難なん、 仏ぶつの聖旨しょうしを承うけてすなはち座ざより起たちて、 *ひとへに右みぎの肩かたを袒かたぬぎ、 長跪じょうき合掌がっしょうして、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ▼「今日こんにち世せ尊そん、 諸根しょこん悦えつ予よし、 姿し色しき清浄しょうじょうにして光顔こうげん巍々ぎぎとましますこと、 *明浄みょうじょうなる鏡かがみの影かげ、 表裏ひょうりに暢とおるがごとし。 威い容よう*顕曜けんようにして超絶ちょうぜつしたまへること無む量りょうなり。 いまだかつて*瞻せん覩とせず、 殊妙しゅみょうなること今いまのごとくましますをば。
ひとへに…長跪合掌して 衣の右肩をはだ脱ぎ、 両膝を地につけ両足指を地に立てて合掌して。
明浄なる鏡…ごとし 底本延書には「あきらかなる鏡、 浄き影表裏に暢るがごとし」とある。
瞻覩 仰ぎみること。
尊者阿難、承↢仏聖旨↡、即従↠座起、偏袒右肩、長跪合掌而白↠仏言。今日世尊、諸根悦予、姿色清浄、光顔巍巍、如↣明浄鏡影暢↢表裏↡。威容顕曜超絶無量。未↢曽瞻都↡殊玅如↠今。
・ 五徳瑞現
▼*やや、 しかなり。 大聖だいしょう、 われ心こころに念言ねんごんすらく、 今日こんにち*世せ尊そん、 *奇き特どくの法ほうに住じゅうしたまへり。 今日こんにち*世せ雄おう、 *仏ぶつの所住しょじゅうに住じゅうしたまへり。 今日こんにち*世せ眼げん、 *導どう師しの行ぎょうに住じゅうしたまへり。 今日こんにち*世せ英よう、 *最勝さいしょうの道どうに住じゅうしたまへり。 今日こんにち*天尊てんそん、 *如来にょらいの徳とくを行ぎょうじたまへり。
ややしかなり 相手に恭順の意を示しつつ応諾する語。「はい、 そうです」と仏の聖旨しょうしに随順するという意。
唯然、大聖、我心念言、今日世尊住↢奇特法↡、今日世雄住↢仏所住↡、今日世眼住↢導師行↡、今日世英住↢最勝道↡、今日天尊行↢如来徳↡。
・ 仏仏相念
▼去こ来現らいげんの仏ぶつ、 仏ぶつと仏ぶつとあひ念ねんじたまふ。 いまの仏ぶつも諸仏しょぶつを念ねんじたまふことなきことを得えんや。 なんがゆゑぞ、 威い神じん光々こうこうたることいまし、 しかるや」 と。
去・来・現仏、仏仏相念。得↠無↣今仏念↢諸仏↡耶。何故威神光、光乃爾。
▼ここにおいて世せ尊そん、 阿あ難なんに告つげてのたまはく、 「いかんぞ阿あ難なん、 諸天しょてんのなんぢを教おしへて仏ぶつに来きたし問とはしむるか。 みづから慧え見けんをもつて威い顔げんを問とへるか」 と。
於↠是世尊、告↢阿難↡曰。云何阿難、諸天教↠汝来問↠仏耶、自以↢慧見↡、問↢威顔↡乎。
▼阿あ難なん、 仏ぶつにまうさく、 「諸天しょてんの来きたりてわれを教おしふるものあることなし。 みづから所見しょけんをもつてこの義ぎを問とひたてまつるのみ」 と。
阿難白↠仏。無↠有↢諸天来教↠我者↡。自以↢所見↡、問↢斯義↡耳。
▼仏ぶつのたまはく、 「善よいかな阿あ難なん、 問とへるところはなはだ快こころよし。 深ふかき智慧ちえ、 真妙しんみょうの弁才べんざいを発おこし、 衆しゅ生じょうを*愍念みんねんせんとしてこの*慧義えぎを問とへり。
慧義 智慧によってのみ知ることができる意義。 すなわち、 仏の五徳瑞現の理由。
仏言。善哉阿難、所↠問甚快、発↢智慧、真玅弁才↡、愍↢念衆生↡、問↢斯慧義↡。
◎序分 ○発起序 2 出世本懐
▼如来にょらい、 *無む蓋がいの大だい悲ひをもつて*三界さんがいを*矜哀こうあいしたまふ。 世よに出興しゅっこうするゆゑは、 *道教どうきょうを光闡こうせんして、 *群萌ぐんもうを拯すくひ恵めぐむに*真実しんじつの利りをもつてせんと欲おぼしてなり。
無蓋の大悲 いかなるものにもおおい隠されることのない無上の大慈悲心。
道教を光闡して 仏道の教えを広く説きのべて。
真実の利 真実の利り益やく。 阿弥陀仏の本願名みょう号ごうによって得る利益をいう。
如来以↢無葢大悲↡矜↢哀三界↡。所↣以出↢興於世↡、光↢闡道教↡、欲↧拯↢羣萌↡恵以↦真実之利↥。
▼無む量りょう億おく*劫こうにも値あひがたく見みたてまつりがたきこと、 なほ*霊瑞れいずい華けの、 時ときありて、 時ときにいまし出いづるがごとし、 いま問とへるところは、 *饒益にょうやくするところ多おおし。 一切いっさいの諸天しょてん・人民にんみんを開かい化けす。
饒益 他を利益すること。
無量億劫難↠値難↠見、猶↢霊瑞華時時乃出↡。今所↠問者多↠所↢饒益↡、開↢化一切諸天人民↡。
▼阿あ難なん、 まさに知しるべし、 如来にょらいの*正しょう覚がくは、 その智ち量はかりがたくして、 ˆ衆しゅ生じょうをˇ *導どう御ごするところ多おおし。 *慧え見けん無礙むげにして、 よく*遏あつ絶ぜつすることなし。 *一餐いちざんの力ちからをもつて、 よく寿命じゅみょうを住とどめたまふこと、 億百千劫おくひゃくせんごう無む数しゅ無む量りょうにして、 またこれよりも過すぎたまへり。 諸根しょこん悦えつ予よしてもつて*毀き損そんせず。 姿し色しき変へんぜず、 光顔こうげん異ことなることなし。 ゆゑはいかん。 如来にょらいは、 *定じょうと慧えと*究暢くちょうしたまへること極きわまりなし。 一切いっさいの法ほうにおいて自じ在ざいを得えたまへり。
慧見無碍 仏の智慧ちえが自在であること。
遏絶 さえぎりとどめること。
一餐 一度の食事。
定と慧 禅定ぜんじょう (三昧さんまい) と智慧ちえ。
阿難当↠知、如来正覚其智難↠量、多↠所↢導御↡。慧見無礙、無↢能遏絶↡。以↢一飡之力↡能住↢寿命↡億百千劫無数無量、復過↢於此↡。諸根悦予、不↢以毀損↡、姿色不↠変、光顔無↠異。所以者何。如来定慧究暢無↠極、於↢一切法↡而得↢自在↡。
阿あ難なん、 あきらかに聴きけ、 いまなんぢがために説とかん」 と。 対こたへてまうさく、 「やや、 しかなり。 *願楽がんぎょうして聞ききたてまつらんと欲おもふ」 と。
阿難諦聴、今為↠汝説。対曰。唯然、願楽欲↠聞。
◎正宗分 ○法蔵発願 1 発願因縁
・ 五十三仏
【4】 ▼仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 「*乃往ないおう過去かこ久く遠おん無む量りょう不可思議ふかしぎ*無む央数おうしゅ劫こうに、 *錠光じょうこう如来にょらい、 世よに興出こうしゅつして無む量りょうの衆しゅ生じょうを教化きょうけし*度ど脱だつして、 みな道どうを得えしめてすなはち滅めつ度どを取とりたまひき。
乃往 昔。 過去。
度脱 済さい度どに同じ。 迷いの世界からさとりの世界へ導き入れること。
仏告↢阿難↡。乃往過去久遠無量不可思議無央数劫、錠光如来、興↢出於世↡、教↢化度↣脱無量衆生↡、皆令↠得↠道、乃取↢滅度↡。
▼次つぎに如来にょらいましましき、 名なをば光遠こうおんといふ。 次つぎをば月光がっこうと名なづく。 次つぎをば栴檀香せんだんこうと名なづく。 次つぎをば善山王ぜんせんのうと名なづく。 次つぎをば須弥天冠しゅみてんがんと名なづく。 次つぎをば須弥等曜しゅみとうようと名なづく。 次つぎをば月色がっしきと名なづく。 次つぎをば正念しょうねんと名なづく。 次つぎをば離垢りくと名なづく。 次つぎをば無著むじゃくと名なづく。 次つぎをば龍天りゅうてんと名なづく。 次をば夜光やこうと名なづく。 次つぎをば安明頂あんみょうちょうと名なづく。 次つぎをば不動地ふどうじと名なづく。 次つぎをば瑠璃るり妙華みょうけと名なづく。 次つぎをば瑠璃るり金色こんじきと名なづく。 次つぎをば金蔵こんぞうと名なづく。 次つぎをば焔光えんこうと名なづく。 次つぎをば焔根えんこんと名なづく。 次つぎをば地動じどうと名なづく。 次つぎをば月像がつぞうと名なづく。 次つぎをば日音にっとんと名なづく。 次つぎをば解脱華げだつけと名なづく。 次つぎをば荘厳光明しょうごんこうみょうと名なづく。 次つぎをば海覚神通かいかくじんずうと名なづく。 次つぎをば水光すいこうと名なづく。 次つぎをば大香だいこうと名なづく。 次つぎをば離塵垢りじんくと名なづく。 次つぎをば捨厭意しゃえんにと名なづく。 次つぎをば宝焔ほうえんと名なづく。 次つぎをば妙頂みょうちょうと名なづく。 次つぎをば勇立ゆうりゅうと名なづく。 次つぎをば功徳持慧くどくじえと名なづく。 次つぎをば蔽日月光へいにちがっこうと名なづく。 次つぎをば日月にちがつ瑠璃るり光こうと名なづく。 次つぎをば無上むじょう瑠璃るり光こうと名なづく。 次つぎをば最上首さいじょうしゅと名なづく。 次つぎをば菩提華ぼだいけと名なづく。 次つぎをば月明がつみょうと名なづく。 次つぎをば日光にっこうと名なづく。 次つぎをば華色王けしきおうと名なづく。 次つぎをば水月光すいがっこうと名なづく。 次つぎをば除痴瞑じょちみょうと名なづく。 次つぎをば度蓋行どがいぎょうと名なづく。 次つぎをば浄信じょうしんと名なづく。 次つぎをば善宿ぜんしゅくと名なづく。 次つぎをば威い神じんと名なづく。 次つぎをば法慧ほうえと名なづく。 次つぎをば鸞音らんのんと名なづく。 次つぎをば無上むじょう師子音ししおんと名なづく。 次つぎをば龍音りゅうおんと名なづく。 次つぎをば処世しょせと名なづく。
次有↢如来↡、名曰↢光遠↡。次名↢月光↡、次名↢栴檀香↡、次名↢善山王↡、次名↢須弥天冠↡、次名↢須弥等曜↡、次名↢月色↡、次名↢正念↡、次名↢離垢↡、次名↢無著↡、次名↢龍天↡、次名↢夜光↡、次名↢安明頂↡、次名↢不動地↡、次名↢瑠璃玅華↡、次名↢瑠璃金色↡、次名↢金蔵↡、次名↢燄光↡、次名↢燄根↡、次名↢地動↡、次名↢月像↡、次名↢日音↡、次名↢解脱華↡、次名↢荘厳光明↡、次名↢海覚神通↡、次名↢水光↡、次名↢大香↡、次名↢離塵垢↡、次名↢捨厭意↡、次名↢宝燄↡、次名↢玅頂↡、次名↢勇立↡、次名↢功徳持慧↡、次名↢蔽日月光↡、次名↢日月瑠璃光↡、次名↢無上瑠璃光↡、次名↢最上首↡、次名↢菩提華↡、次名↢月明↡、次名↢日光↡、次名↢華色王↡、次名↢水月光↡、次名↢除痴瞑↡、次名↢度葢行↡、次名↢浄信↡、次名↢善宿↡、次名↢威神↡、次名↢法慧↡、次名↢鸞音↡、次名↢師子音↡、次名↢龍音↡、次名↢処世↡。
▼かくのごときの諸仏しょぶつ、 みなことごとくすでに過すぎたまへり。
如↠此諸仏、皆悉已過。
・ 所値師仏
【5】 ▼その時ときに、 次つぎに仏ぶつましましき。 *世せ自じ在ざい王おう*如来にょらい・応おう供ぐ・等正覚とうしょうがく・明行足みょうぎょうそく・善逝ぜんぜい・世せ間けん解げ・無上むじょう士じ・調御丈夫じょうごじょうぶ・天人てんにん師し・仏ぶつ・世せ尊そんと名なづけたてまつる。
爾時、次有↠仏。名↢世自在王如来・応供・等正覚・明行足・善逝・世間解・無上士・調御丈夫・天人師・仏・世尊↡。
◎正宗分 ○法蔵発願 2 讃仏偈
・ 法蔵発心
▼時ときに国王こくおうありき。 仏ぶつ(世自在王仏)の説法せっぽうを聞ききて、 心こころに*悦えつ予よを懐いだく。 すなはち*無上むじょう正真道しょうしんどうの意こころを発おこす。 国くにを棄すて王おうを捐すてて、 行ぎょうじて*沙門しゃもんとなる。 号ごうして*法蔵ほうぞうといふ。 *高才勇哲こうざいゆうてつにして、 世よと超異ちょういす。 ▼世せ自じ在ざい王おう如来にょらいの所みもとに詣もうでて仏足ぶっそくを稽首けいしゅし、 *右みぎに繞めぐること三帀さんぞうして、 長跪合掌じょうきがっしょうして、 *頌じゅをもつて讃ほめてまうさく、
右に繞ること三帀して 右回りに三周するという意。 仏を敬礼きょうらいする作法。
頌 梵語ガーター(gāthā)の漢訳。 偈ともいい、 韻文体の詩句を指す。
時有↢国王↡、聞↢仏説法↡、心懐↢悦予↡、尋発↢無上正真道意↡、棄↠国捐↠王、行作↢沙門↡、号曰↢法蔵↡。高才勇哲、与↠世超異。詣↢世自在王如来所↡、稽↢首仏足↡、右繞三帀、長跪合掌、以↠頌讃曰。
・ 讃仏
ª光顔こうげん巍々ぎぎとして、 威い神じん極きわまりなし。
光顔巍巍 威神無↠極
かくのごときの*焔明えんみょう、 ともに等ひとしきものなし。
焔明 光こう明みょうのこと。
如↠是燄明 無↢与等者↡
日にち・月がつ・*摩尼まに珠光しゅこうの焔耀えんようも、
日月・摩尼 珠光燄耀
みなことごとく隠蔽おんぺいせられて、 なほ*聚墨じゅもくのごとし。
聚墨 墨のかたまり。
皆悉隠蔽 猶若↢聚墨↡
如来にょらいの容顔ようげんは、 世よに超こえて倫たぐいなし。
如来容顔 超↠世無↠倫
正しょう覚がくの大音だいおん、 響ひびき十方じっぽうに流ながる。
正覚大音 響流↢十方↡
*戒かいと聞もんと精進しょうじんと三昧さんまいと智慧ちえとの、
戒と聞 持じ戒かい (戒を持つこと) と多た聞もん (よく法を聞くこと)。
戒・聞・精進・ 三昧・智慧
威い徳とくは、 侶ともがらなくして、 殊勝しゅしょうにして希有けうなり。
威徳無↠侶 殊勝希有
深ふかくあきらかに、 よく諸仏しょぶつの法海ほうかいを念ねんじて、
諦善念↢ 諸仏法海↡
深ふかきを窮きわめ奥おくを尽つくして、 その涯底がいたいを究きわむ。
竆↠尽↠奥 究↢其涯底↡
*無む明みょうと欲よくと怒いかりとは、 世せ尊そんに永ながくましまさず。
無明と欲と怒り 三毒の煩悩ぼんのう。 無明は真理に対する無知、 欲は貪欲とんよく、 怒は瞋しん恚にの意。
無明欲怒 世尊永無
*人雄にんのう獅子ししにして*神徳じんとく無む量りょうなり。
人雄獅子 仏を讃嘆する語。 人中の雄者で獅子のような方。
神徳 不可思議な功く徳どく。
人雄師子 神徳無量
*功く勲くん広大こうだいにして、 智慧ちえ深妙じんみょうなり。
功勲広大 智慧玅
光こう明みょうの威い相そうは、 *大千だいせんを震動しんどうす。
光明威相 震↢動大千↡
・ 法蔵志願
願ねがはくは、 われ仏ぶつとならんに、 *聖しょう法王ほうおうに斉ひとしく、
聖法王 ここでは世せ自じ在ざい王おう仏ぶつを指す。
願我作仏 斉↢聖法王↡
*生しょう死じを過度かどして、 解げ脱だつせざることなからしめん。
過↢度生死↡ 靡↠不↢解脱↡
布施ふせ・*調意じょうい・戒かい・忍にん・精進しょうじん、
調意 布施ふせ行を修めて惜おしみ貪むさぼる心を除き、 身心を調えること。
布施・調意・ 戒・忍・精進
かくのごときの三昧さんまい、 智慧ちえ上すぐれたりとせん。
如↠是三昧・ 智慧為↠上
われ誓ちかふ、 仏ぶつを得えたらんに、 あまねくこの願がんを行ぎょうじて、
吾誓得↠仏 暜行↢此願↡
一切いっさいの恐懼くく ˆの衆しゅ生じょうˇ に、 ために大安だいあんをなさん。
一切恐懼 為作↢大安↡
たとひ仏ぶつましまして、 百千億万ひゃくせんおくまんの、
仮使有↠仏 百千億万
無む量りょうの*大聖だいしょう、 数かず*恒沙ごうじゃのごとくならんに、
大聖 仏のこと。
無量大聖 数如↢恒沙↡
一切いっさいのこれらの諸仏しょぶつを供く養ようしたてまつらんよりは、
供↢養一切 斯等諸仏↡
道どうを求もとめて、 堅正けんしょうにして却しりぞかざらんにはしかじ。
不↠如求↠道 堅正不↠却
(仏身)
たとへば恒沙ごうじゃのごときの諸仏しょぶつの世せ界かい、
譬如↢恒沙↡ 諸仏世界
また計かぞふべからざる無む数しゅの刹せつ土どあらんに、
復不可計 無数刹土
光こう明みょうことごとく照てらして、 このもろもろの国くにに遍へんし、
光明悉照 徧↢此諸国↡
かくのごとく精進しょうじんにして、 威い神じん量はかりがたからん。
如↠是精進 威神難↠量
(仏土)
われ仏ぶつとならんに、 国こく土どをして第一だいいちならしめん。
令↧我作仏 国土第一
その衆しゅう奇妙きみょうにして、 道場どうじょう超絶ちょうぜつならん。
其衆奇玅 道場超絶
国くに*泥洹ないおんのごとくして、 しかも等ひとしく双ならぶものなからしめん。
国如↢泥洹↡ 而無↦等双↥
(十方来生)
われまさに哀愍あいみんして、 一切いっさいを度ど脱だつすべし。
我当↣哀愍 度↢脱一切↡
十方じっぽうより来生らいしょうせんもの、 心悦しんえつ清浄しょうじょうにして、
十方来生 心悦清浄
すでにわが国くにに到いたらば、 快け楽らく安穏あんのんならん。
已到↢我国↡ 快楽安穏
・ 請証
幸ねがはくは仏ぶつ(世自在王仏)、 *信明しんみょうしたまへ、 これわが*真証しんしょうなり。
信明 信は誠信、 明は証明。 まことにして偽りなきことを証明すること。
真証 真実の証明。
幸仏信明 是我真証
願がんを発おこして、 かしこにして所欲しょよくを*力精りきしょうせん。
力精 力を尽して努めはげむこと。
発↢願於彼↡ 力↢精所欲↡
十方じっぽうの世せ尊そん、 智慧ちえ無礙むげにまします。
十方世尊 智慧無礙
つねにこの尊そんをしてわが*心行しんぎょうを知しらしめん。
心行 願い。 志。
常令↣此尊 知↢我心行↡
・ 立誓
たとひ身みをもろもろの苦く毒どくのうちに止おくとも、
仮令身止↢ 諸苦毒中↡
わが行ぎょう、 精進しょうじんにして、 忍しのびてつひに悔くいじº」 と。
我行精進 忍終不↠悔
◎正宗分 ○法蔵発願 3 思惟摂取
・ 請教
【6】 仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 「法蔵ほうぞう比丘びく、 この頌じゅを説ときをはりて、 仏ぶつ(世自在王仏)にまうしてまうさく、〈やや、 しかなり。 世せ尊そん、 われ*無上むじょう正しょう覚がくの心しんを発おこせり。 願ねがはくは仏ぶつ、 わがために広ひろく経法きょうぼうを宣のべたまへ。 われまさに修行しゅぎょうして仏国ぶっこくを*摂取せっしゅし、 清浄しょうじょうに無む量りょうの妙土みょうどを*荘厳しょうごんすべし。 われをして世よにおいてすみやかに正しょう覚がくを成なりて、 もろもろの生しょう死じ勤ごん苦くの本もとを抜ぬかしめたまへº」 と。
摂取 選択せんじゃく摂取の義で、 えらびとること。 すなわち、 劣を捨て勝を取ること。
仏告↢阿難↡。法蔵比丘、説↢此頌↡已、而白↠仏言。唯然、世尊、我発↢無上正覚之心↡。願仏、為↠我広宣↢経法↡。我当↧修行摂↢取仏国↡清浄荘↦厳無量玅土↥。令↧我於↠世速成↢正覚↡、抜↦諸生死勤苦之本↥。
・ 汝自当知
仏ぶつ、 阿あ難なんに語かたりたまはく、 「時ときに*世饒王仏せにょうおうぶつ、 法蔵ほうぞう比丘びくに告つげたまはく、〈修行しゅぎょうせんところのごときの荘厳しょうごんの仏ぶつ土ど、 なんぢみづからまさに知しるべしº と。
仏語↢阿難↡。時世饒王仏、告↢法蔵比丘↡、如↠所↢修行↡荘厳仏土、汝自当↠知。
・ 重請
比丘びく、 仏ぶつにまうさく、〈この義ぎ、 弘ぐ深じんにしてわが*境界きょうがいにあらず。 やや、 願ねがはくは世せ尊そん、 広ひろくために*諸仏しょぶつ如来にょらいの浄じょう土どの行ぎょうを*敷ふ演えんしたまへ。 われこれを聞ききをはりて、 まさに説せつのごとく修行しゅぎょうして、 所願しょがんを成満じょうまんすべしº と。
境界 能力の範囲。
諸仏如来の浄土の行 諸仏がそれぞれの浄土を建立するための行。
敷演 広く説きのべること。
比丘白↠仏。斯義弘、非↢我境界↡。唯願世尊、広為敷↢演諸仏如来浄土之行↡。我聞↠此已、当↣如↠説修行成↢満所願↡。
・ 師教
その時ときに、 世せ自じ在ざい王おう仏ぶつ、 その高明こうみょうの志し願がんの深広じんこうなるを知しろしめして、 すなはち法蔵ほうぞう比丘びくのために、 しかも経きょうを説ときてのたまはく、〈たとへば大海だいかいを一人いちにん*升量しょうりょうせんに、 劫数こうしゅを経歴きょうりゃくせば、 なほ底そこを窮きわめてその妙宝みょうほうを得うべきがごとし。 人ひと、 至し心しんに精進しょうじんして道どうを求もとめて止やまざることあらば、 みなまさに*剋こっ果かすべし。 いづれの願がんをか得えざらんº と。 ▼ここにおいて世せ自じ在ざい王おう仏ぶつ、 すなはちために広ひろく二百にひゃく一十億いちじゅうおくの諸仏しょぶつの刹せつ土どの天てん・人にんの善悪ぜんあく、 国こく土どの粗妙そみょうを説ときて、 その心願しんがんに応おうじてことごとく現げんじてこれを与あたへたまふ。
升量 ますで量を計ること。
剋果 必ず成し遂げること。
爾時世自在王仏、知↢其高明志願広↡、即為↢法蔵比丘↡、而説↠経言。譬如↫大海一人升量、経↢歴劫数↡、尚可↪竆↠底得↩其玅宝↨。人有↢至↠心精進求↠道不↟止、会当↢剋果↡、何願不↠得。於↠是世自在王仏、即為広説↢二百一十億諸仏刹土天人之善悪、国土之麤玅↡、応↢其心願↡悉現与↠之。
・ 超発勝願
▼時ときにかの比丘びく、 仏ぶつの所説しょせつを聞ききて、 *厳浄ごんじょうの国こく土どみなことごとく*覩と見けんして▼*無上むじょう殊勝しゅしょうの願がんを超発ちょうほつせり。 その心しん寂静じゃくじょうにして志こころざし、 所着しょじゃくなし。 一切いっさいの世せ間けんによく及およぶものなけん。 ▼五ご劫こうを具ぐ足そくし、 *思し惟ゆいして荘厳しょうごん仏国ぶっこくの清浄しょうじょうの行ぎょうを摂取せっしゅす」 と。
厳浄 おごそかで清いこと。
無上殊勝の願 この上なくすぐれた本願。 →
補註17
時彼比丘、聞↢仏所説↡、厳浄国土、皆悉覩見、超↢発無上殊勝之願↡。其心寂静、志無↢所著↡。一切世間無↢能及者↡。具↢足五劫↡、思↢惟摂↣取荘厳仏国清浄之行↡。
・ 師仏寿命
▼阿あ難なん、 仏ぶつにまうさく、 「かの仏国ぶっこく土どの ˆ世自在王仏のˇ 寿量じゅりょういくばくぞや」